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2020年3月31日 (火)

オンライン授業の形式と「北欧史概説a」の例

 「古谷さん、技術的な話はわかったけれど、具体的に授業をどうするの?」という相談をちらほら頂くようになりました。そこで、この記事では、おおよそ想定できるオンライン授業の形式を整理し、僕が阪大で担当している「北欧史概説a」(講義形式、受講者数見込み150人程)の例を以下に紹介しようと思います。

 (技術的な話について、このブログで紹介してきた例は僕が「自腹」であれこれ試してきたものですが、「非常勤講師のように公費で教育研究経費を配分されていない者にはできない」との批判を耳にしています。この批判はもっともなものと思いますので、これまでの記事のあり方に反省し、極力、多くの方が実践できる方法を紹介することに努めたいと思います。)

 オンライン授業については、Zoomによる動画あるいは音声の遠隔配信を使う形式が盛んに紹介されています。しかし、僕の所属する阪大外国語学部では、Zoomの技術的ノウハウを知る教員が少なく、受信側の学生たちのネットインフラが多様であり、長い動画配信や音声配信を行った場合データ量の過使用(いわゆる「パケ死」)が起きる可能性もあることから、周囲の話を聞いていると、実際にZoomを使うオンライン授業の形式を考える先生は少なく、ほとんどは阪大ではCLEと呼ばれるIT授業支援システムや、阪大ではKOANと呼ばれる通常は授業連絡や教務管理で使われる教学システムを使ってオンライン授業の形式を検討される先生方が多いことがわかってきました。

 以下に、私見となりますが、それら三つのオンライン授業形式の簡単な紹介とそのメリット、デメリットをまとめまてみたいと思います。

(1)IT授業支援システムを使う形式:CLEとは阪大で使われているBlackboardプラットフォームベースのIT授業支援システムです。おそらく皆さんの大学にも似たものがあるでしょう。これを使う場合には、IT授業支援システム上に講義関連の資料を掲載するとともに、IT授業支援システムに割り当てられている担当授業のページに課題を作成しておき、受講登録した学生にはその課題を解答させる形となります。出席は課題の解答時点で記録されることになります。この形式のメリットは、課題のやりとち、成績と出席の管理が自動化されていることです。

(2)教学システムを使う形式:皆さんの大学でも、通常は登録学生にメールや掲示板を使った授業連絡や成績管理で使われている教学システムがあるでしょう。これを使うオンライン授業の形式はもっとも保守的ですが、簡便です。これを使う場合、この授業に登録された学生宛に教学システム上の掲示板あるいはメールを使って講義資料と課題を配布し、課題への回答をメールで教員に送ってもらうという形式になります。ただし出席の管理については手動で行わねばなりません。

(3)噂のZoomを使う形式:上記の(1)と(2)の形式は講義資料を読ませながら、あらかじめ準備された課題に回答させることで成績と出席をとりますが、事実上それは「夏休みの宿題」と大差ありません。つまり、各回の講義における「論点の解説」ができないということが(1)と(2)の最大のデメリットと思われます。(もちろん、登録学生に配布される資料で「論点の解説」を読ませる形をとっていれば、問題ありませんが。)もし自らに多少のノウハウと学生側のネット環境がクリアされていれば、Zoomを使って動画ないし音声で遠隔配信のメリットは、オンタイムで「論点の解説」を行うことができる点にあります。

 Zoomを使う場合、学生たちのネットインフラを考えると通信データ量をおさえるためにカメラを切断して「音声配信」するのがベターだと思います。また配信中は、教員側のPCにあるPDFやパーポイント、ブラウザなどの「画像共有」もでき、使い勝手のよい手段だとは思います。(PCにタブレット端末をつなげれば、タブレット側で「画像共有」した資料に注釈などを適宜書き込むことができます。)

 プライベートアカウントではZoomの使用時間が40分に制限されていますが、大学から割り当てられているac.jp系のメールアカウントがあれば、経済産業省が紹介する下記Webページの「お申し込み方法A」から時間制限のないアカウント(一度の配信での参加者数は100人に限定)がつくれます。

(この点について、非常勤講師の先生方のうちac.jpのアカウントが配分されていない場合には、一度各自お勤めの大学にメールアドレスの配分あるいはZoom使用の申請を相談されると良いのではないかと思います。) 

https://www.learning-innovation.go.jp/covid_19/zoom/

 僕は、阪大から対面授業を避けオンライン授業を求められている期間に、「北欧史概説a」という授業ではCLEとZoomをミックスしたオンライン授業を考えています。サンプルとして、この記事の末尾に受講する学生向けに書いた説明をつけます。僕基本は講義資料をCLEにアップロードしておき、コメントシートをCLEに書き込ませることで、出席をとるという筋立てですが、各回の「論点解説」に限っては40分程度の遠隔配信を音声ベースで行うという形です。

 ただし、実際にやってみないとわからない部分は多々あります。現状で想定される問題は以下の通りです。

(1)受信する学生側の問題:Zoomを使う場合、実際にデータのトラフィック量がどの程度になり「混雑」するのか、それに伴う問題がどうなるのかは、僕も蓋を開けてみないとわかりません。上から目線で「Zoomを使うから」とだけ指示してしまい、良好なネット環境を得ようと学生たちに大学やスターバックスのような店などのWifi環境がある場所に移動させてしまうのでは、ウィルス感染のリスクを低下させようとする今回の措置について、本末転倒の結果になってしまいます。

(2)音声配信と画面共有の問題:トラフィック量を抑えようと音声配信に限定したとしても、受信者側の音声を切ってもらわないと参加人数分の雑談(独り言)や生活騒音が集音されてしまい、たいへんな雑音になってしまう問題があります。画像共有も確かに便利なのですが、参加者側が書き込む許可を取り消さないと「落書き」される可能性があることに注意を払わなければなりません。

 再び長文になり恐縮ですが、この記事が、オンライン授業の形式についての具体的なイメージを皆さんにつかんで頂ける参考例のひとつになれば幸いです。最後に、僕の「北欧史概説a」の試案を掲げます。(以下の試案でZoom配信の時間を40分に抑えているのは、アカウント問題に起因するというよりは、受信側の学生たちの使用データ容量の問題を考えてのことです。 受信する学生側のネット問題がクリアされるならより長時間の対応もできます。皆様、くれぐれもお気をつけください。

 

「2020年度 <北欧史概説a> 第1回~第3回授業計画」

【第1回】講義配信時間 4月14日(火)14時40分〜15時10分 課題締切:4月15 日(水)23時59分

0.シラバスで紹介した教科書『論点・西洋史学』を生協書籍部で購入してください。この本は4月13日以降店頭に並ぶ予定です。初回の授業までに買えなかったとしても、次回の授業までにこれを買って授業に臨んでください。
1.4時限目の時間(14時40分)になるまでに、CLEにアップロードされている第1回「はじめに〜歴史学の観点から地域をどう考えるか?」に関するパワーポイントファイルをダウンロードしてください。
2.14時40分から、担当教員が開設するZoomのミーティイングルーム(トピック名は「北欧史概説a」)で講義を配信します。ミーティングルームに参加するためのパスワードはKOANからのメールで伝えますので、各自手元にパワーポイントファイルを用意しながら、ミーティングルームに参加して遠隔配信される講義を受講してください。
3.第1回の講義における主たる論点は「北欧史を考察する視点と西洋史学研究の視点の異同」です。30分ほどのオンライン講義を聴いたうえで、この論点に関する意見や感想を400字程度の日本語でCLEの該当箇所に記述してください。
4.課題の締切は4月15日(水)23時59分です。期限を過ぎた場合は「欠席」扱いとなります。

【第2回】講義配信時間 4月21日(火)14時40分〜15時20分 課題締切:4月22 日(水)23時59分


1.4時限目の時間(14時40分)になるまでに、CLEにアップロードされている第2回「先史時代と歴史時代の狭間(1)〜歴史と記憶をどう考えるか?」に関するパワーポイントファイルをダウンロードしてください。
2.14時40分から、担当教員が開設するZoomのミーティイングルーム(トピック名は「北欧史概説a」)で講義を配信します。各自手元にパワーポイントファイルと教科書を用意しながら、遠隔配信される講義を受講してください。第2回の配信時間は40分を予定しています。最初の10分で第1回のコメントシートに対する講評を話し、残りの30分で第2回の論点を解説します。
3.第2回の講義における主たる論点は「北欧に生きた者にとって歴史と記憶とはどのようなものか?」です。40分ほどのオンライン講義での解説と教科書にある「歴史叙述起源論」や「歴史と記憶」の項目を参考に、この論点に関する意見や感想を400字程度の日本語でCLEの該当箇所に記述してください。
4.課題の締切は4月22日(水)23時59分です。期限を過ぎた場合は「欠席」扱いとなります。

【第3回】講義配信時間 4月28日(火)14時40分〜15時20分 課題締切:4月29 日(水)23時59分


1.4時限目の時間(14時40分)になるまでに、CLEにアップロードされている第3回「先史時代と歴史時代の狭間(2)〜古代をどう考えるか?」に関するパワーポイントファイルをダウンロードしてください。
2.14時40分から、担当教員が開設するZoomのミーティイングルーム(トピック名は「北欧史概説a」)で講義を配信します。各自手元にパワーポイントファイルと教科書を用意しながら、遠隔配信される講義を受講してください。第3回の配信は時間を40分を予定しています。最初の10分で第2回のコメントシートに対する講評を話し、残りの30分で第3回の論点を解説します。
3.第3回の講義における主たる論点は「北欧にとっての古代とはどのようなものか?」です。40分ほどのオンライン講義での解説と教科書にある「ケルト問題」や「「古代末期」論争」、「中世初期国家論」の項目を参考に、この論点に関する意見や感想を400字程度の日本語でCLEの該当箇所に記述してください。
4.課題の締切は4月29日(水)23時59分です。期限を過ぎた場合は「欠席」扱いとなります。

2020年3月27日 (金)

必要機材の実例写真(補遺:人文系研究者のためのテレワーク環境構築入門)

 今日もそろそろ終業して良い時間だと思いますので、筆者が使用している機材をアッセンブルした実例写真を挙げ、3回に渡って投稿した「手持ちのスマートフォンを転用したテレワーク環境構築」の記事を締めたいと思います。(大切なことだと思うので書いておきますが、この記事の写真でお見せする機材はすべて「自腹」で買い揃えたものです。)

(追記(2020年3月28日):この文では以下に様々な機材が紹介されますが、「外付けのマイクもライトも要らない。とにかくWebカメラの代わりが必要なのだ!」という場合には、100均ショップでよく売られているスマートフォン用のスタンドや三脚だけ購入すれば十分です。スマートフォンをスタンドや三脚に載せたあとは、人文系研究者のためのテレワーク環境構築入門で紹介したプロセスに従い、手持ちのUSBケーブルでスマートフォンとPCを接続させれば、スマートフォンをWebカメラとして使えます。そう…この場合、必要経費は100円です。「100円で買えるものに、この古谷という男はいくらのお金をかけているんだ?」…そうした突っ込みは大歓迎です。このCOVID-19の騒動が収まり、お互いに元気な姿で皆様とお目にかかる日が訪れた際に、ぜひよろしくお願いします。

実例写真(1)

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 写真(1)は、「必要機材の具体例」で紹介した(4)スマートフォン、マイク、ライトをアッセンブルする機材:Ulanzi MT-08(伸縮支柱・自由雲台付き折りたたみ三脚)+Ulanzi PT-3(シューブラケット)+Ulanzi スマートフォンホルダーアクセサリーシュー付き(マウンター)を組み上げたものでです。この組み合わせのメリットは安価に機材を買い揃えることができ、軽量で可搬性に優れている点にあります。デメリットは三脚支柱の伸縮長が短く、軽量であるために安定性に欠ける点です。様々な建物や部屋へ移動しての遠隔配信や、海外に出張した際の図書館や文書館での資料撮影などに最適な組み合わせであると自負しています。

実例写真(2)

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 写真(2)は、同じくManfrotto テーブルトップ三脚キット(伸縮支柱・自由雲台・折りたたみ三脚)+Manfrotto スマートフォン用三脚アダプター MCPIXI(マウンター)+Ulanzi PT-3(シューブラケット)を組み上げたものです。この組み合わせの場合、三脚・支柱・雲台がスチール製であるため、(1)の組み合わせと比べて重量があり、撮影時の安定度に優れています。支柱の伸縮長もUlanziのものと比べて長く確保されていますので、カメラ位置をより適切な高さに調整することが可能です。ただし、収納サイズがそれほどコンパクトとならず、重量もそれなりにあるため、可搬性という点では(1)の組み合わせには及びません。

実例写真(3)

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 写真(3)は、「必要機材の具体例」では紹介していませんが、昨年まで海外出張時に持参していた機材です。これは、KING メタルグリップ三脚 AMG-S + KING 自由雲台 ボールヘッドS ABH-S II + FeiyuTech 伸縮ポール V3Ulanzi スマートフォンホルダー ST-03 を組み合わせたものです。KINGのミニ三脚と自由雲台は安価ながら剛性が高く、個人的にはお勧めです。これに伸縮する支柱を加えることで、剛性と安定性を確保させながら可搬性も両立させ得る機材を実現できるのですが、如何せん、アッセンブルさせた機材全体の重量が上記の(1)の組み合わせと比べると遙かに重くなり、カバンのなかでも嵩張ります。今後の海外や国内の出張に持参する撮影機材の座は(1)に譲られると思います。

 実のところ、最初の「人文系研究者のためのテレワーク環境構築入門」では、「USBケーブルを使った有線によるスマートフォンとPCの連携」を推奨したのですが、この点だけ情報を補足します。

 「必要機材の具体例」で紹介した機材を組み上げると、上記の3枚の写真からわかるように、iPhoneのLightning端子はマイク接続で占有されてしまうため、PCと有線では接続できなくなります。もし外部マイクが必要ないというならば、空いているLightning端子にケーブルを差し、PCと有線接続することができますが、外部マイクが必要な場合、iPhoneでは無線接続しか方法はないということになります。スマートフォンがAndroid端末の場合、もしイヤホンジャックのある端末ならばiPhoneのようなことはなく、イヤホンジャックにマイク接続のケーブルを差し込み、USB-C(あるいはMicro USB)端子にUSBケーブルをつないで、PCと有線で接続することができます。イヤホンジャックがないAndroid端末の場合には、上記のiPhoneと同じように、外部マイクが必要なければPCと有線接続することができ、外部マイクが必要な場合には無線接続しか方法はないということになります。

 以上、主として、テレワーク環境を求められているにもかかわらずWebカメラを購入できないでいらっしゃる方を対象に、3つの記事に分けて「手持ちのスマートフォンをWebカメラに転用しながらテレワーク環境を構築する方法」を説明してきました。ここで紹介した機材を活用する方法のメリットは、以下の2点に整理できると思います。第一に、自宅や研究室、教室など、会議や授業などのテレワークが求められるどの場所にも、軽快に持ち運べるセットであること。第二に、国の内外を問わず、出張の際には資料撮影のための機材に転用できること。(もちろん資料撮影の場合には、今回紹介した機材のうちマイク(ならびにマイク接続のためのケーブル)を省いて、よりコンパクトに機材にをまとめられますが、雲台を90度傾けただけでは三脚が倒れてしまうので、別途書見台を用意するなど工夫が必要になります。資料撮影に関しては別の機会があれば、あらためて整理しましょう。)現今のCOVID-19を巡る事態は深刻ですが、テレワーク環境のために揃えた機材が本来の研究活動にも転用できると思えば、ポストCOVID-19の日々に向けた先行投資だとも言えようかと思います。一連の投稿が、僅かながら皆様の参考になれば幸いです。

必要機材の具体例(補遺 :人文系研究者のためのテレワーク環境構築入門)

 昨日「古谷さん、Webカメラの代替手段を教えてよ。」と相談してくれた東京在住の友人が、手持ちのスマートフォンを活用したテレワーク環境の構築に関する文章を読んでくれた後、間髪入れず、「古谷さんが実際にどんな機材を使っているのかも知りたい。」とのLINEをくれました。当然の反応だと思います。忙しい時間を惜しんであれだけの長い文章を読んでくれたとしても、現今の緊急事態に即応するためには具体例を示したほうが友人にとっては有益でしょうから。そこで、この文では小難しい説明を極力省き、四の五の言わず、具体的な商品名を挙げながら、ひとつの例として僕の使っている機材を紹介したいと思います。(それぞれの機材のリンク先はAmazonで統一していますが、アフィリエイトなどは設定しておりません。)

(追記(2020年3月28日):この文では以下に様々な機材が紹介されますが、「外付けのマイクもライトも要らない。とにかくWebカメラの代わりが必要なのだ!」という場合には、100均ショップでよく売られているスマートフォン用のスタンドや三脚だけ購入すれば十分です。スマートフォンをスタンドや三脚に載せたあとは、人文系研究者のためのテレワーク環境構築入門で紹介したプロセスに従い、手持ちのUSBケーブルでスマートフォンとPCを接続させれば、スマートフォンをWebカメラとして使えます。そう…この場合、必要経費は100円です。「100円で買えるものに、この古谷という男はいくらのお金をかけているんだ?」…そうした突っ込みは大歓迎です。このCOVID-19の騒動が収まり、お互いに元気な姿で皆様とお目にかかる日が訪れた際に、ぜひよろしくお願いします。

 僕の研究室におけるメインPCはMac miniで、それを27インチのモニターに接続させています。自宅ではMacBookをクラムシェルモードで使い、27インチのモニターに接続させています。つまり僕は研究室にも、自宅にもWebカメラをもっていません。(正直に告白して、僕も僕の友人と同じくWebカメラを「買いっぱぐれた」口です。最後に紹介しますが、定評のあるLogicoolのWebカメラなど、どこを探しても在庫切れになっています。)これとは別に、これまで出張先での資料撮影を主目的に「可搬性の高い撮影機材」を揃えてきました。この機材が、現今のテレワーク環境構築の要請(というか圧力)に応じた「遠隔配信用の機材」へ転用される結果となっています。(以下に説明するマイクだけは資料撮影用に揃えたものではありませんが。)逆に言えば、ここで紹介する機材は、これからCOVID-19の感染拡大が収束するまでのしばらくの間は「遠隔配信」のために使われますが、平常に戻った暁には本来の目的である「資料撮影」で使用できるということになります。

(1)スマートフォン:Apple iPhone XS

 正直、スマートフォンは何でも良いと思っています。最近のスマートフォンのカメラ性能の進化は劇的で、これまでも出先でのスキャナー、コピー、書画カメラを代替する機材として活用してきました。ただし、iPhone XSなど、2年ほど前までのスマートフォンは広角撮影が弱い(ひとつの画像に収まる範囲が狭い)という欠点があります。(昨年以来発売されているスマートフォンは広角撮影にも対応した機種がほとんどとなりました。)どうしても広角撮影が必要になる場合には、外付けの広角レンズを使います。3000円程度の安価なものから10000円以上の高価なものまで、いろいろと試してきましたが、安価なレンズは画像周縁部の歪みが大きくなる傾向があり、僕はbitplayのプレミアHDワイドレンズに落ち着きました。歪みの少ない広角レンズはどうしても高価になるので、本当に必要だと思うのでなければ揃える必要はありません。(どうしても必要だが安価なレンズが欲しいという場合には3500円程度で買えるUlanziの広角レンズをお勧めしますが、周縁部の歪みと減光の問題を抱えているということをご理解ください。)

(2)マイク:Rode VideoMicro

 モノラルですが小型軽量のコンデンサマイクとして評価の高い製品です。(こちらも最近はどこでも在庫切れのようですが、本来ならば7000円程度で売られているものです。安価に入手したければ、3000円程度で売られているUlanziのVM-Q1でも十分だと思います。)コンデンサマイクをスマートフォンに接続させる場合、注意すべきポイントは、スマートフォン側のマイク・イヤホン端子が3極なのか、4極なのかを見極めることです。判別方法は簡単で、例えば、皆さんがお使いのイヤホンにある接続端子が2本の線で分割されていれば3極(3分割)、3本であれば4極(4分割)です。iPhoneの場合、最近の機種はイヤホンジャックが廃止され、マイクやイヤホンを接続させる端子はLightningとなっており、そうしたイヤホンジャックの「見た目」で極数を判別できませんが、一言、4極です。Rodeのコンデンサマイクの場合、iPhoneと接続させる4極対応のケーブルは同梱されていませんので、マイクのほかに①3極と4極を変換させるケーブル(TRS-TRRSケーブル)、②4極プラグをLightning端子に変換させるケーブルが必要となります。(上記のUlanzi VM-Q1の場合、安価ですが3極ケーブル、3極4極変換ケーブルが同梱されており、別途購入すれば良いのは4極Lightning変換ケーブルだけどなります。)

(3)ライト:Manfrotto LUMI 550 lux

 静止画と動画の違いを問わず、撮影対象を明瞭に表現するためにはライティングが必要となります。スマートフォンの場合、外部接続端子は(2)のマイクに占有されてしまうため、バッテリー駆動可能なLEDライトを選ぶ必要があります。商品の価格差は光量の差で決まっており、明るいライトになれば高価となります。僕は可搬性を第一に考え、Manfrottoの光量550luxのライトを使っています。(こちらは各種フィルターも同梱されています。安価にそろえたければ、2500円程度で売られているUlanziの49LEDビデオライトでも良いと思います。)

4)(1)〜(3)をアッセンブルする機材:①Ulanzi MT-08(伸縮支柱・自由雲台付き折りたたみ三脚)+Ulanzi PT-3(シューブラケット)+Ulanzi スマートフォンホルダーアクセサリーシュー付き(マウンター)、あるいはManfrotto テーブルトップ三脚キット(伸縮支柱・自由雲台・折りたたみ三脚)+Manfrotto スマートフォン用三脚アダプター MCPIXI(マウンター)+Ulanzi PT-3(シューブラケット)

 スマートフォン、マイク、ライトをひとつに集めて固定使用できる機材が必要となります。具体的には、三脚・支柱・雲台・マウンターの4点です。三脚は、出先での使用を念頭に可搬性を考えると折り畳み収納の可能なモデルが良く、ManfrottoならばPIXIシリーズが高い評価を得ています。PIXIシリーズは三脚の脚部に自由雲台が直付けされていますが、資料撮影の場合には撮影対象となる資料との距離、動画配信の場合には発話者である自分の目線のある高さを考えた場合、脚部と雲台との間の「距離」を変えられない点にデメリットがあります。脚部とカメラとなるスマートフォンとの間には「距離」を稼ぐ支柱が必要なのです。(上記のシューブラケットは、スマートフォンの脇にマイクを取り付けるための部品になります。)

 これまで僕は、三脚・支柱・雲台はそれぞれ分割使用できるものを選び、様々なメーカーの商品を組み合わせながら試行錯誤を繰り返してきました。その結果、現時点で推奨できる組み合わせが上記の①と②になります。カメラ好きの方ならばニヤニヤとされながらこの文を読んでいると思うのですが、僕も昔からデザイン性の高いイタリアのManfrotto製品を揃える傾向があり、その名残が②のセットです。しかしながら最近は中国のUlanziの商品が安価でありながら使い勝手が良いので、①の組み合わせにも行き着いています。「距離」を稼ぐための支柱は、撮影対象との距離を測るため伸縮可能なものがよいと思います。加えて、個人的には、スマートフォンを取り付けるマウンターの選択も重要だと思っています。スマートフォンを雲台に取り付けるマウンターは100円ショップで売られているものもありますが、(2)のマイクや(3)のライトを取り付けられるホットシューの用意されているものでないといけません。その場合のお勧めが上記になります。

 この文を整理しましょう。現今の緊急事態では手持ちのスマートフォンを活用してテレワーク環境を構築し、平時に復旧した暁にはそれらを資料撮影に転用するためには、取り急ぎ上記の機材があれば十分です。(明瞭な画像の撮影と音声の収録は必要ないというならば、マイクとライトを省いて、スマートフォンと三脚・支柱・マウンターだけでも良いと思います。)現今の問題は、Webカメラなど、テレワーク環境に必要な機材の在庫が払底している点にありますが、今日27日の時点でAmazonを見る限り、上記で紹介したUlanziの商品ならば在庫は確保されています。(加えて、Ulanziの商品はいずれも安価である!上記で紹介したUlanziの商品をすべて揃えたとしても1万円程度の出費です。)

 後ほど時間ができましたら、実際に上記で紹介した機材をアッセンブルした写真を撮影してこの場で公開しましょう。これらの機材が揃えばVlogを撮影することも可能になりますし、Youtuberへ転身することも夢ではありません(笑)。これらの情報が、僅かながら皆様のお役に立てれば幸いです。

 

 追記:もし「スマートフォンなどを使わずに、大学や政府が準備資金を潤沢に用意するから、完璧なZoom授業のための環境を作ってくれ!」というならば、遠隔配信用途に限定された機材として、僕ならば以下の機材を発注すると思います。(それらを揃えたとしても後々資料撮影に転用できないので、僕は買い揃えませんが、参考までに記しておきます。)

 Zoomを使った遠隔配信を完璧に実現するためには、(1)発話者の微妙な動作を捉えられる高解像度撮影可能なWebカメラ、(2)発話者の音声を拾うことに長けた単一指向性のコンデンサマイク、(3)発話者の姿や撮影対象を詳細に撮影するためのLEDライトを揃える必要があると思っています。

 (1)カメラ:動画配信用のカメラは、撮影対象の奥行きまで表現しようとするならば、パナソニックのGH5など、動画撮影とPC接続の可能な交換レンズ式のデジタル一眼カメラが選ばれることもありますが、遠隔授業目的で揃える機材としては非常に高価になってしまいます。ですから通常はWebカメラが用いられることでしょう。

 Webカメラの選定は、おおよそカメラの解像度、フレームレートの最大値を比較すればよいと思います。昨日の文章にも書いたように、解像度はフルHD、フレームレートの最大値は30fpsのカメラを選べば、現時点のZoomの仕様には十分に対応できると思います。Webカメラは画角が広く、最短撮影距離の短いLogicool製品の評価が高いですね。とりわけ60fpsまでフレームレートを上げられるC922nの人気がありますが高価なので、僕ならばLogicoolのC615nあたりを購入するでしょう。

(2)マイク:PCへUSB接続できる指向性コンデンサマイクについては、マランツやソニーの製品に対する評価が高いです。マランツやソニーのマイクもピンキリですが、マイクを取り付けるブームアームスタンドがセットされているという点で、僕ならばマランツのPod Pack 1あたりを購入するでしょう。ほぼ同価格帯になりますが、音声収録時の雑音を除去するポップガードまでセットされたソニーのECM-PCV80Uも候補のひとつです。安価に済ませようと思えば、Amazon限定の商品になりますが、卓上スタンドなどもセットされたマランツのM4Uなども候補にあげられると思います。

(3)ライト:可能な限り明瞭な動画配信を目指すならば、照明を軽視してはいけません。スタジオ撮影用の照明は三脚込みで考えるととても高価なものになるのですが、Amazonで比較的安価に購入できるものとしては、中国のNeewerの評価が高いです。もし僕ならば自然光に近い5500K(ケルビン)を発するモデルを選ぶと思います。

2020年3月26日 (木)

人文系研究者のためのテレワーク環境構築入門(補遺:西洋史研究者のためのスマートフォン活用入門)

はじめに

 この文は、Zoomを使った講義や会議など、いわゆるテレワーク環境の構築に迫られた或る東京の研究者から頂いた「古谷さん、Webカメラを買いに行ったのだけれども、町中のお店ではどこも在庫がなく困っているんだよ。どうにかならないか?」との相談を機会に急遽執筆しようと思ったものです。結論から言えば、「スマートフォンを活用してテレワーク環境を構築する」ということがこの文の主旨です。かつて僕はスマートフォン黎明期の2012年に、その活用方法を紹介した「西洋史研究者のためのスマートフォン活用入門」という文章を『Clio』第26号(2012年)に公開しました。今あらためてその文章を読むと、その64-65頁にある「画像データの出力を通じた情報公開」の箇所では「書画カメラとしての活用」を紹介していました。この文ではその内容を補うという意味も込めて、つまり「スマートフォン活用入門」の補遺としてテレワーク環境の構築について情報を整理しようと思います。

 現今のCOVID-19を巡る様々な対策のうち、この4月からZoomを使ったオンライン授業が多くの教育機関で検討されています。またZoomを使った会議や研究会なども、これからは多く開かれていくことでしょう。これらの対策は国内だけでなく海外でも検討され、すでに実践されています。従って、世界的に未曾有のデータ・トラフィックの増加という事態が想定される訳ですが、この小文は遺憾ながら「Zoomを円滑に使用できる通信環境は確保されている」ことを前提に執筆されています。Zoomを円滑に使用するためには、一説では(余裕をみて)「ダウンロードで50-80Mbps、アップロードで30-50Mbps程の速度」があれば問題ないとも言われています。

(追記(2020年3月28日):Zoom社の公式情報では、グループビデオで推奨される速度について、1080p HDレベルで使用する場合、受信者側はダウンロード・アップロードともに2.5Mbps、送信者側は3.0Mbpsとされています。上記の文章で筆者が参考にした情報は、民間でZoomの使用法を講義しているZoomアカデミージャパンが公開している情報です。この情報の最終更新日は2018年6月30日です。Zoom社が技術的観点あるいはマーケティング的観点から推奨する速度と、Zoomアカデミージャパンが体感的観点から推奨する速度との間には「開き」があるものとは思いますが、Zoomアカデミージャパンが情報更新をしてからこれまでの間に必要速度に関するZoomの技術改善が図られていることは多いに予想されるため、上記の情報を参考とするにはいささか古いものだったかと反省しています。なお、この追記は筆者のTwitter発言に寄せられたご指摘への回答でもあります。ご指摘ありがとうございました。)

 ここで「遺憾ながら」と書く理由は、Zoomを使う人たちの通信回線の品質がその程度に確保されていると言い切れない現状がありながら、この文を書かざるを得ないためです。(現に、僕が今書いている豊中市の自宅における通信速度は、13〜14時の時間帯でダウンロードが35Mbps、アップロードが28Mbpsしか出ていません。)

 Zoomの使用方法については、大阪大学サイバーメディアセンターに属している岩居弘樹先生が公開されている「Zoomを使った遠隔授業について」のページがとてもわかりやすく参考になりますその使用方法は岩居先生のページをはじめ、それぞれの大学でも講習会やマニュアル公開がなされているでしょうから、それぞれの機会を活かして情報を得ていただくのが一番よいと思います。現今の問題は、先に紹介した僕の友人の相談にもあるように、Webカメラの在庫が払底している現状にあって、Zoomを使用するまでに至る機材環境の構築をいかに果たすべきか…しかも人文系研究者の観点からもわかりやすく説明することにあると思っています素人ながら、この文を公開する目的は、そうした問題意識に基づきます。

 

1.スマートフォンはカメラ・マイク・ライトを代替する

 本題に入りましょう。ラップトップPCや一体型デスクトップPCなどをお使いの場合には、大抵のPCにカメラが内蔵されており、Zoomではそれを使えば問題ありません。テレワークのすべての局面で動画配信が必要ではないと思いますが、オンライン上で行う会議ぐらいの用途であれば、それで十分でしょう。

 ただし、それは「映像や音声の品質に妥協できるならば」という条件がつきます。例えば、語学実習系の授業をオンライン配信することを想定した場合、日本語にはない外国語の母音や子音の微妙な発音の違いを伝達するためには、教員の口の形や舌や歯の位置関係などをクリアな画像で伝えるとともに、その微妙な発声の違いをネットの向こう側にいる学生に伝えなければなりません。PCにビルトインされているカメラやマイクの品質は外付けできるカメラやマイクの品質に劣る場合が多く、本来、クリアな動画と音声を伝えるためには、カメラ、マイク、照明(加えて、それらをそれぞれに支えられる三脚やスタンドなど)が必要となると思います。

 環境構築に時間と資金があるならば、(1)発話者の微妙な動作を捉えられる高解像度撮影可能なWebカメラ、(2)発話者の音声を拾うことに長けた単一指向性のコンデンサマイク、(3)発話者の姿や撮影対象を詳細に撮影するためのLEDライトを揃えることが理想的でしょう。しかし、テレワークの推奨が声高に叫ばれて以来、Webカメラの在庫が払底しているにもかかわらず、会議や授業などにオンラインでの対応を求められている現今の緊急事態においては、これらを揃えることが現実的な方策だとは思えません。

 再び遺憾ながら、例えば語学実習系の授業にはあまり参考にはなりませんが、各種の会議や講義系・演習系の授業など、音声や静止画の共有を中心にZoomを使うものの、ときに低品質な動画を配信したとしても実害が少ない局面を想定したうえで、今現在カメラ、マイク、照明を揃えることができない方にひとつの提案を示してみたいと思います。その骨子は「手持ちの機材を活用する」点にあります。ここで言う「手持ちの機材」にはいくつかの選択肢があります。例えば、動画撮影可能なデジタルカメラをPCに接続してWebカメラやマイクの代わりに使用する方法もあります。しかし多くのデジタルカメラの場合、内蔵されているマイクの品質に問題があり、十全な授業配信の環境を構築するには別途外付けマイクを揃えることが必要になるかの思われます。

 前置きが長くなりましたが、カメラ、マイク、照明の3点を代替できる「手持ちの機材」として、スマートフォンは選択肢のひとつになり得ます「必要機材の具体例(補遺 :人文系研究者のためのテレワーク環境構築入門)」の追記で記したように、カメラ、マイク、照明を個別に揃えたほうがより高品質な動画配信を含むあらゆる局面に対応できる訳ですが、会議や講義系・演習系の授業などの用途であれば、窮余の策として、カメラ、マイク、ライトの機能が内蔵されたスマートフォンが代替機材となり得ます。

 

2.テレワーク環境でスマートフォンとPCの連携が求められる理由

 スマートフォンによるテレワーク環境の構築ですが、もちろんAndroidでも、iOSでも、スマートフォン自体に直接Zoomなどのアプリをインストールして動画と音声を送受信することが最も簡単な方法になります。しかし、スマートフォン上のZoomアプリでは画面の制約もあり、事実上「ビデオチャット」を代替するものでしかありません。みなさん。ここで、この文は僕の友人からの「Webカメラの代わりになるものはないか?」という相談から出発していることを思い出してください。僕の友人は、なぜWebカメラを求めているのでしょうか?

 Webカメラは、PCでのZoom使用を前提とした機材です。Zoomを使って会議や授業を遠隔配信する際、PCを使うメリットのひとつは、広いモニターに複数の参加者の顔と声を確認しながら話を進められるという点にあります。もちろんZoom配信では必ず動画が必要という訳ではありませんから、会議や授業の形態によっては送信者側からの静止画像と音声だけを共有させるだけで十分という場合もあるでしょう。この文では動画を配信する形態での使用を前提に話を進めますが、PCのモニター画面ならばより多くの参加者の顔と声を一度に確認しながら会議や授業を進めることができるはずです。(とはいえ、一画面で同時に表示できる顔の数には限界がありますが。)僕の友人がWebカメラを求めた理由はそこにあります。

 例えば、ウルトラスーパーハイパーな高解像度のPCモニターを使っていて、多人数の参加者を一画面で表示できるとしましょう。(僕の環境を例にあげると、モニターをいわゆる4K(3840px×2160px)の解像度まで引き上げることができるのですが、高い解像度になればなるほど、一画面で分割表示できる画面は大きくなるものの、文字が詳細になってしまい虫眼鏡を使わないと判別不能になってしまいます。通常なら、いわゆるフルHD(1920px×1080px)くらいの解像度が実用的ではないかと思います。)高解像度モニターで多人数を同時に表示できると言っても、Zoomのデメリットのひとつを知っておくべきです。一画面に同時に表示できる参加者の数は限定される一方、多人数の音声が混線して雑音が酷くなるという問題です。(雑音は参加者の「雑談」を拾うというだけでなく、生活騒音やハウリングなど、様々な音声が拾われてしまうことから生じます。音声の問題は、参加者側で音声機能をオフ設定することで回避できますが。)

 会議や授業に多人数が参加するほど、そうした問題が出てくることも推測されます。遠隔配信のデータ・トラフィックの増加に伴うデータ転送の遅延を含め、これらの問題がはたしてどうなるのかは、筆者も蓋を開けてみないとどうなるかはわかりません。現状のZoomの仕様では、もし企業向けのアカウントが提供されるならば500人まで行けるというのですが、500人でやったらカオスだろうなぁ…実際に体験された方がいらっしゃったら教えてください。筆者のZoom体験など、たかだか5〜10名程度のWeb会議しかなく、多人数の講義でそれが実用的だと言えるのかは不透明なままこの文を書いています。申し訳ありません。

 でも「悲しいけど、これ「戦争」なのよね(…COVID-19のパンデミックに伴う…)。腹を括ってやらなきゃならん。

 

3.スマートフォンによるテレワーク環境の構築プロセス

 以上の理由から、PCでZoomを使用することを前提に、スマートフォンをカメラ・マイク・照明の代替手段として活用する方法を以下に整理してみましょう。先にプロセスだけをまとめておくならば、(1)スマートフォンにWebカメラアプリを導入する→(2)スマートフォンをケーブルあるいは無線でPCにつなげる→(3)スマートフォンをWebカメラとしてZoomで使うという流れになります。

 (1)スマートフォンへのWebカメラアプリの導入:Androidでも、iOSでも、それぞれのアプリストアで「Webカメラ」を入力して検索し、スマートフォン側にWebカメラとして使用するためのアプリを導入してください。お使いのPCのOSがWindowsでスマートフォンのOSがiOSならばiVcam、同じくAndroidならDroidCamが定番だと思います。これに対して、お使いのPCのOSがMacの場合には、スマートフォンのOSがiOSでもAndroidでもEpocCamが定番だと思います。ここで注意すべき点が一つあります。この後に説明することですが、PC側のOSに導入できるソフトウェア(一般的にはスマートフォンをPCにWebカメラとして認識させるためのドライバソフトあるいはクライアントソフトと言います)の違いに応じて、スマートフォン側のアプリを選択せねばならない点です。例えば、使い勝手のよいiVcamというアプリは、残念ながらWindows版しかPC側のソフトを提供されておらず、Macでは使えません。この点に鑑みれば、現時点でMacで使えるアプリはEpocCamの一択と言えます。(EpocCamは無料版と有料版がありますが、無料版の場合、Webカメラとして使える解像度が680×480という低解像度に限定されており、Macをお使いの方は、事実上、有料版のEpocCam HDを選択せざるをえません。)

 (2)スマートフォンとPCとの接続:この文では努めて簡単な方法を紹介していますが、最も注意を要するプロセスがこのステップです。まずPC側にそれぞれのアプリに対応したドライバソフトあるいはクライアントソフトを導入します。簡単に説明すれば、iVcamの場合には開発元のE2ESoftのホームページから、DroidCamの場合にはDev47Appsのホームページから、それぞれWindowsに対応したクライアントソフトをダウンロードしてWindowsにインストールします。EpocCamの場合にも開発元のKINONIのホームページからドライバソフトをダウンロードしてMacにインストールします。ここまでのプロセスはそれほど難しいものではありません。注意を要するのは、実際にスマートフォンとPCを接続させる局面です。

 どのアプリも基本的にはUSBケーブルを使った有線接続と無線LAN環境下での無線接続に対応しています。(iVcamやDroidCamの場合には、Windows側のクライアントソフトで有線・無線の接続を選択します。EpocCamの場合にはiOS側のアプリで選択します。)個人的な経験から言って、ここが一番難しい。無線接続は一見便利に見えますがデメリットがいくつかあります。まず接続するPCとスマートフォンが同じ無線LAN環境(同じWiFiネットワーク)に接続されていることが前提となります。例えば、無線LAN環境がない部屋では、無線接続ができません。また無線接続の場合、転送できる動画データに遅延が起きる場合が多々あります。このようなデメリットを考えると、より確実にPCとスマートフォンを接続させるためには、USBケーブルを使った有線接続を選択するべきでしょう。有線にせよ、無線にせよ、クライアントソフトあるいはドライバソフトをPC側に導入した後には、PCを一度再起動させることも強くお勧めします。なぜならば、PC側にスマートフォンを「新たなWebカメラ」として認識させる必要があるためです。クライアントソフトあるいはドライバソフトを導入した後で一度再起動し、USBケーブルを使って両者を接続させれば、ほぼ確実にスマートフォンがWebカメラとして認識される筈と思います。

 (3)スマートフォンをZoomで用いる:PC側でスマートフォンがWebカメラとして認識されれば、話の上ではZoomでも、Skypeでも、それぞれのテレワーク環境で使うカメラとしてiVcamやDroidCam、EpocCamを指定すれば、テレワークのためのWebカメラとしてスマートフォンを利用できます。Zoomを例にあげれば、Zoomのアカウントにログイン、自分が会議や授業を行う場合には「新規ミーティング」を開き、画面の左下に位置する「ビデオの開始/停止」の項目から使用するiVcamやDroidCam、EpocCamを選択すれば、スマートフォンのカメラ画像がWebカメラの画像として使えるようになります。(他人が主宰する会議や授業に参加する場合には「参加」を選択した後に、ビデオを選択するだけです。)

 

おわりに

 以上の作業でスマートフォンをWebカメラとして代替させることができます。筆者はMacをメインPCとして使っていますので、この文の最後に、EpocCam HDを例とした使用感を紹介しましょう。EpocCam HDはiPhoneやAndroid端末をフルHD(1920×1080)の高解像カメラとして使うことができるアプリです。フルHDは現在の市販されている高級Webカメラと同じ解像度となります。

 明瞭な動画を配信するためには解像度が高いことに加えて、適切なフレームレートとビットレートの設定が必要だと言われています。フレームレートとは「動画の滑らかさ」に関わる項目で、1秒間に埋め込こむことのできる静止画像(フレーム)の数(fps=frame per second)で単位が示されます。例えば、テレビ放送は1秒間に30枚の静止画像が切り替わることで「動いている」ように映像を見せています。これが30fps。このfps値が大きくなれば滑らかな動画になりますが、人間の視覚でその違いを認識できるのは60fpsくらいまでだと言われています。明瞭な動画を配信するためには、このフレームレート値に応じた最適なビットレート値を設定することが大切です。ビットレートとは、1秒間に転送できるデータ容量のことで、bps(bit per second)という単位で示されます。動画は、一枚一枚の静止画を断続的に切り替えることで動いているように見せています。話の上では、ビットレートを大きくできれば、静止画一枚一枚の情報量が詳細になり、結果的に明瞭な動画に結びつくと言えます。しかしそもそもカメラの解像度がワンセグ(360px × 180px/240px)やSD(720px × 480px)のような低い解像度の場合、一画面で表示できる画像の情報量は狭いままなので、ビットレートの値を高くしても無駄が生じるということになります。

 明瞭な動画配信には、解像度、フレームレート、ビットレートの適切な関係を考えることが大事になります。とはいえ、人文系研究者にとってそれら3項目間の適切な関係を見いだすのは、いささかややこしい話になります。個人的な経験に照らして話をまとめれば、(1)まずカメラの解像度をなるべく高い解像度に選択する(つまり現状ではフルHD(1920px × 1080px)がベスト)→(2)授業や会議の動画は映画ではないのでフレームレートは30fpsで十分→(3)解像度がフルHDでフレームレートが30fpsの場合、適切なビットレートの値は最低で12Mbpsくらいと言われています。

 最後にほんの少し難しいことを書きましたが、EpocCam HDは解像度、フレームレート、ビットレートの設定を簡単に切り替えられる点に使い勝手の良さを感じています。今日は、自宅にいる子供たちと各部屋に分かれてZoomを試してみましたが、筆者のiPhoneXSの場合、フルHD、30fps、20Mbpsくらいで講義系・演習系の授業で使える画質が得られるかなと思いました。(スマートフォンをWebカメラ代わりに使うメリットのひとつは照明機能が使えることですが、明瞭な動画にするためには、スマートフォンのフラッシュを常時点灯させることで、LEDライトとして使うことは必須に思います。ライトがないと、顔が暗くて「おどろおどろしい」感じを相手に与えることになる…かもしれません。)

 ただし、どんなに解像度、フレームレート、ビットレート、そして照明の関係に配慮したとしても、Zoomを使った映像配信では肉眼で見られるような明瞭な画像にはなりません。どうしてもぼやけるところが出てくるということです。この点に鑑みれば、微妙な口や舌の動きを確認させる必要のある語学実習系の授業にはどうしても不向きで、文献資料や図像資料を静止画像として共有させながら音声配信を基に授業を進められる講義系・演習系の授業に限ってようやく実用的なのではないかと思います。

 「文献資料や図像資料を基にした講義系・演習系の授業」と書きましたが、そうした授業がオンライン配信されるとなると「公衆配信」扱いとなり、オンライン上にアップロードされる文献資料や図像資料の著作権に関する問題が派生するといった話は別のところできちんと議論されるべきかと思います。文章中、幾度か「遺憾ながら」と書いてしまいました。Zoomを使った遠隔授業には、著作権のような法的な問題、ネットインフラのような技術的な問題、教員・学生の双方のネットリテラシーの問題などが残されたまま、なし崩し的な見切り「発進」を迫られている現状を誠に「遺憾」に思います。(この文が少しでも皆様のお役に立てれば幸いです。)

 

 

2013年12月31日 (火)

今年もお世話になりました:2013年の私的ベストバイ

皆さん、今年もお世話になりました。今年は前半に研究専従期間を頂いて、日本西洋史学会での「礫岩国家」論をご披露する機会に恵まれるとともに、久方ぶりにルンド大学歴史学部に客員研究員として滞在、旧交を温めつつ、懸案の『リネーの帝国』の実現にむけて一歩を踏み出すことができました。(現地では20世紀前半に『日本史』を執筆したウップサーラ大学歴史学教授のH.イァーネを主軸において国民主義的な歴史叙述が一般的だった時代にグローバルな歴史観はどのようにありえたのか共同研究を進めようという話も出てきました。)帰国してみれば通常ノルマの約2倍で働く日々が待っていたのですが、それでも「礫岩国家」論の論集実現にむけて動き始めましたし、『リネーの帝国』絡みでもそれを銘打った論文を二本書き上げました。そして、なにより韓国の歴史学者の方々との交流は、「なぜ日本で北欧の歴史を研究するのか?」という素朴な疑問から出発して、「「礫岩国家」や「リネーの帝国」といった主題をアジアで語るには、どのような観点が戦略的に必要なのか?」まで僕自身の活動を足下のアジアから刺激してくれる経験となりました。

忙しいことは今に始まった訳ではなく、自由な時間がほとんどないことはこの業界で働いている以上どうしようもないことです。という訳で、趣味の買物や道具集めにゆっくりと時間を費やすこともできない。だから今年の買い物は、ネット上でパッと見たら直感に頼ってサッと購入する…というスタイルがますます深刻の度を増し…あぁ、だいぶ「失敗」したなぁ…。(僕の散在は、アベノミクスとやらに幾ばくかは貢献したのだろうか…?)とりわけスウェーデン滞在を理由にiPad mini用にと買い漁ったスタイラスペンの類は「全敗」でしたね。(これについてはスタイラスペンがいけないのか、iPad miniがいけないのか、はたまたそのアプリがいけないのか…はわかりません。手元に残ったスタイラスペン…どうしよう?)「買ってよかったなぁ。」と思う道具とは、使っていてそれが日頃の生活に知らず知らずのうちに溶け込んでいくものだと僕は思っています。使うときにあらためてエイやっと何か意識的にならざるをえないものは、思考の流れを途絶させるものであり、ストレスを生み出しがちです。(僕はウルトラスーパーハイパー短気なのです。阪大の教員になってから、その傾向は強まった感があります。とにかく、ちゃっちゃかと生きたい…否、生きざるを得ない。)と言うわけで、今年一年の皆さんのご厚情に感謝しつつ、こちらに(今年僕が世話になった)私的ベストバイを三つ掲げますので、年越し蕎麦でもすすりながら読んで頂けたら幸いです。よい年をお迎え下さい。

第一位 キャリーバーの高さを自由に調節できるストッパー付きハードキャリー(33L)

「フライング・プロフェッサー」とか揶揄されながらノマドな出張生活が続く身としては、身体にストレスのかからないキャリーバッグは必需品。加えて、金銭的にも懐にやさしいものがベストなわけです。二泊三日〜三泊四日の短期出張用に買い求めたバッグが、この無印良品のキャリーバッグです。特筆すべきは、キャリーバーの高さを自由に調節できる点。通常のバー調整は二段階、三段階でスライド式のものが多いと思いますが、これはストッパーを離したところで高さが調整できる。楽だなぁ。さらにカートのロック機構がバッグ裏面についていて、キャリーバッグが電車やバスのなかでころころと動き回らないところもよい。キャリーバーの収納部がバッグ内面にでている点は玉に瑕ですが、このサイズでは仕方の無いところでしょう。TSAロックにも対応しているので、短気の海外出張ならこれでOK。多少の傷をもろともせずガンガン使い倒せる「気分」にさせてくれる格安の値段設定もよい。

第二位 ギャツビー ヘアジャム タイトニュアンス

整髪料としては、忙しい朝の時間帯に寝癖も一気に直せちゃうUNOのフォグバーを愛用してきましたが、これに替わる一品として僕が注目したのが、今年登場したGATSBYのヘアジャムです。この種の手に塗るタイプの整髪剤は、手にネットリと残る感じが個人的にスキになれなかったのですが、これはベタつかずに髪の毛にスッと馴染む感じが絶妙です。フォグバーの場合、ちょっとした形をつくるには力が弱い…というか、僕のウルトラストロング直毛には弱い感じがあって、部分的に形をつくる場合には結局べとつく感じが嫌なのにワックスも併用せざるを得なかった。これはこれひとつで、一気にちゃっちゃかとそれなりに形がつくれる感じがストレスフリーでよい。なにせ、ちゃっちゃかと生きることを迫られていますから。



第三位 富士通 ScanSnap SV600

この秋にMacOS X用のドライバが発表されたのを待って、研究室に導入しました。巷で話題の非破壊式スキャナです。厚みのある本などをスキャンする際にブックプレッサーは必須ですが、スキャンの必要な箇所だけサッとスキャンできるのは実に便利。これまで歴代のScanSnapを愛用してきましたが、僕は本を裁断するのが忍びないので、結局A4紙にコピーしてからスキャンしていました。これはA4紙が無駄になるし、なによりコピーをとるプロセス自体が無駄。最新のScanSnap iX500がスマートフォンやタブレットとの連携も考えてWifi環境で使えるのに比べると、未だにUSB接続させた「母艦」となるPCをかませなければならないのは、こうした類の製品として初発であること考えると仕方が無いところかと思います。初発という点では、スキャンした本の画像を補正するソフトウェアのできが今一歩…というところもあるかも知れません。(それでもブックプレッサーを使えば、スウェーデン語や英語といった欧文文献の場合、現行の画像補正ソフトで、OCRも十分な精度で文字を拾ってくれる程度の十分なスキャンができます。)SV600の「絹布の上を這うような」スーッと流れるスキャニングプロセスは、雑事にかまけて「汚れちまった」勉強心を再び純粋無垢なそれへ「洗い流してくれる」ような気にもしてくれます。



(次点としては、GoogleのNexus7あたりが入るかも知れません。旧iPad miniよりは遙かに見やすい発色のよい液晶、手に馴染む7インチクラスタブレットのサイズ感、MicroSIMカードを替えれば世界中のどこでも使える安心感(…僕はLTEモデルを国内ではBIGLOBE LTE 3Gの月980円のエントリープラン で運用しています…)となかなか良いものですが、如何せん僕たちの要求する「ハードな知的作業」に耐えうるアプリの数が少なく、SlimPort経由で画像を出力してプレゼンテーションに使えるところまで至っていない点で、なかなかiPad miniをリプレースできないままです。(Android 4.4でのPowerPointプレゼンを実践されていらっしゃる方がいらしたら、ぜひご教示ください!)なので次点扱いですが、プライベートでの使用なら、値段も安くて僕は良いと思います。)


2013年11月14日 (木)

漂流するポストAppleの模索

まさか、このようなタイトルの発言をこのブログに書くことになろうとは、数年前なら想像さえできなかった。数年前ならば、ひとつの流れとして知的作業を途切れさせることなく、それを支援してくれる道具は間違いなくApple社の提供してくれる一群の商品だった。


そうした感覚にぼんやりと違和感を覚えるようになったのは、iPhone5とiPad miniが出た頃だった。ブラック&スレートなiPhone5は弱々しい塗装はさることながら、筐体後背面の段差があるつくりは気泡なく保護フィルムを貼ることもかなわない。筐体デザインの断片化が知的作業の断片化を生み出すとまで、議論を飛躍することはできない。けれど、iPhone5をはじめて見たときに、完全なエコシステムの構築に万全を期してきたAppleのコンセプトに、ちょっとした「ヒビ」が入ったような感覚を得たものだ。iPad miniもそう。iPad miniは市場での7インチクラスAndroidタブレットの隆盛に後押しされ形で登場した感じがする。売れたとは思うけれど、iPad2クラスの処理能力のままretinaディスプレイを搭載できず、とりあえず小さな筐体ででっち上げられたようなものなので、中途半端さは拭えない。講義の際、処理能力の低い初代のiPad miniではスライドの切り替えに時間を要することがしばしばあり、何度「ごめん、ちょっと待って下さいね」と詫びたことか。(スマートが売りだったApple社の製品が「鈍くささ」を醸し出すようになった。)MacOS X Mavericksやそれに伴うiWorkのアップデートに至っては無償化という点が大きく宣伝されたけれども、新たに創造力をかきたてられるような機能の「提案」があったでもなく、逆に多言語間キーアサインの不一致などに不具合や、iWorkでの一部機能の後退などもあり、明らかに知的作業の「流れ」を断絶させる方向に僕を導いた。(iPhone5Sは使っていないのでわからないが、A7プロセッサの64bit化が大きく処理能力を向上させたらしいけれど、それに伴ってOSの挙動が不安定になっては本末転倒というものだろう。)


一言で言えば、最近のApple社の製品に、僕は「焦りに基づく取り急ぎ感」を見ているのだ。かつてのApple社のラインナップは、自社の目指すエコシステムに位置づけられ、とても明確だった。シンプルなラインナップは、ひとつひとつの製品の品質をじっくりと確認する余裕も与えただろう。一方でiTunesあるいはiCloudを核としたエコシステムがそれなりに機能するようになり、他方でその模倣が他社から提供されることになった結果だろうか、ここ数年、シンプルなラインナップの構成は完全に崩れた。タブレット端末はiPadとiPad mini、スマートフォンはiPhone5SとiPhone5Cといったように。僕は企業経営や市場戦略の専門家ではないから素人の戯言としてここに記すけれども、消費者はあるひとつの用途を求めてひとつの端末を購入するわけでから(・・・マニアでも無い限り、タブレット端末やスマートフォンを複数購入するなどということは普通はしないだろう・・・)、同じ会社で似たような機能をもつ端末を複数ラインナップにあげるということは、市場のパイをせばめることになるのではないか(・・・みんながみんなApple社のものばかりを買うことはないだろうから・・・)と思う。ラインナップを増やすということは、それだけそれぞれの商品の品質管理の負担が増えるということだから、ひとつひとつの製品に丹念に時間をかけられたシンプルな時代とは異なり、当然品質管理の面でも手が回らず、問題が起きやすいということになる。簡単に言えば、欲を出しすぎると足下が掬われるということだ。それは企業にとってもっとも大切にせねばならない信用を失わせる結果となる。先に紹介したiPad miniやMavericksの話は、こんなところを背景にして出てきた問題んだのではないかと感じている。


取り急ぎ僕にとって大切な問題は、Apple社の製品が僕の知的作業を「鈍くさい」方向に導きつつある今、次のオルタナティヴを選び出すという点である。僕はAppleマニアだったからApple社の製品を愛用してきた訳ではない。Apple社の製品がエコシステムの上に絶妙に配置された結果、知的作業の流れを最もスムーズに支えてくれたからこそ愛用してきたのである。つまり僕の仕事の作業上、一貫した知的な流れをストレスなく補ってくれるものであれば何でも構わない。こういう観点に立って、僕は今年に入ってからいくつかの道具を試してきた。僕の仕事の根幹は文章執筆だから基本となる道具はPCである。これについてはMetro UIを搭載したWindows8の動くノートパソコンをしばらく使ってみた。僕はWindows8自体は軽快で安定していてよいと思う。ただしWindows上で動くスウェーデン語やデンマーク語の辞書もないものだから、Windowsのよさはただ一点高度なビジネス文書の編集ができるMicrosoft Officeが使えるということだけに限られる。CroverTrailの搭載された商品だったことがいけなかったのだと思うけれども、とにかく処理速度が遅く、まともにPowerPointなどが動かない。それと、ある作業を行おうとするときに経由しなければならないプロセスの多さ。これらは無用な時間のロスとストレスしか生みださない。Windowsの使用をあきらめ、PCに関しては不具合を承知にMacしか選択肢はないのだと思っている。


問題はスマートフォンやタブレットなどの携帯端末だ。この夏のスウェーデン滞在の際には、Windows8の運用に併せてWindows Phone8の実力を測ろうとNokiaの端末を持参した。Nokiaのハードウェアのできも、OSとしてのWindows Phone8のできもよかった。けれど、スマートフォンなどというものは、MicrosoftやNokiaがいくら頑張ってみても、ユーザ側から見れば結局のところ導入されるアプリの質によってその善し悪しが決まってしまうものに思う。Windows Phoneに関してはアプリの数が圧倒的に少ない。いや、正確に言えばアプリの数自体は多いのだけれども玉石混淆・・・というよりはっきり言って石が多い。iOSやAndroidで提供されているような質が維持されておらず、現時点での継続的運用は不可能と判断した。そして現在、僕はAndroid端末をいくつか試験的に運用している。5インチクラスのスマートフォンであるNexus5と7インチクラスのタブレットデヴァイスであるNexus7である。これらの運用当初、「Androidもヴァージョン4に至って、アプリの充実度もiOSにおいついたのかな」くらいに思っていたのであるが、個々のアプリの質の点で僕はAndroidはiOSに劣っていると言わざるを得ない。とりわけビジネス文書編集用のオフィス系のアプリ。iOSではiWorkのサブセット版が提供されており、それだけでもそれなりの編集作業ができる。これに匹敵する編集能力をもったオフィス系のアプリは、Androidではいまだ存在しないだろう。それともうひとつ。Android端末の決定的な短所は、画像出力機能の貧弱さである。Nexus7の場合、SlimPortという外部出力端子があってHDMI接続が可能らしいのだが、そもそもこのSlimPortに対応したHDMI変換アダプタが市場に出回っていない。もしそれが手に入ったとしても所詮HDMIへの出力となってしまう。いまだ巷に多く出回っているVGAとの接続には、不安と工夫が伴うことになる。


現時点で、Android端末は趣味的な使用に関しては多いに僕を満足してくれるものだけれども、知的な作業を支援する道具としては不満を感じざるを得ない。この点では明らかにiOS端末が上を行くものであるけれど、日本におけるiOS端末には決定的な問題があって継続的な使用を再考せねばならないとも思っている。SIMロックという問題である。海外での知的交流が日常的な業務となっている身としては、SIMロックの問題は回避できない重要な問題である。これはApple社の問題というよりも、日本の通信キャリア側の問題であることは承知している。グローバルな基準で開発され実力をもった製品が、日本国内における市場戦略からSIMロックを施され、その実力をグローバルに発揮てきない現状がそこにはある。そうなると勢い、僕の関心はSIMフリー端末へと向かわざるを得ない。GoogleのNexusについていまだ知的作業を支援する道具として欠点を感じつつも、僕が試験的に運用をはじめた理由は、この一点にのみ帰せられる。これまでもSIMフリー端末は、Androidのヴァージョン2クラスやWindows Phoneでも使用してきたが、世界的に時代はLTEのような第4世代の高速大容量データ転送へむかっているから、Nexus5とNexus7というSIMフリー端末を選んだ次第である。


いささか漂流気味ではあるが、はたして僕のポストAppleの模索はどこへと向かうのか。折を見て、このブログでも報告していきたいと思う。


2012年5月23日 (水)

ラップトップPCと決別する日〜MacとiPadとの統合環境の構築について

「僕たちはいつまでパソコンという道具を使い続けるのだろうか?」、「ナレッジワーカにとって、過去四半世紀にわたり絶対的に必要とされてきた道具も、いずれは時代の流れのなかで陶太されていくのではないか?」そうした茫漠とした思いを胸に秘めながら、東大西洋史研究室のクリオの会が刊行している『クリオ』26号に「西洋史研究者のためのスマートフォン活用入門〜ポスト・パーソナルコンピュータ時代の知的生産術」を執筆した。もちろん僕らのライティング環境において、その中核に位置する道具は今後もしばらくはパソコンのままだろう。実際に上記の拙稿もパソコンで執筆しているし。ただ、それを補完する外出時の道具として長年重宝してきたラップトップPCとは、そろそろ決別の日が近づいているのかも知れない。

外出先でのモーバイル環境において、ラップトップPCを代替するデヴァイスとして、iPadに代表されるタブレットデバイスの隆盛が著しい。(上記の拙稿で紹介した方法も、スマートフォンとタブレットデヴァイスに搭載されている基本OSはかわらないので、基本的にはタブレットデヴァイスに応用できる。)タブレットデヴァイスがラップトップPCを完全に代替するにあたって、それは実のところ、タブレットデヴァイスの入力方法が長文入力に適していないとか、ナレッジワーカに必要なアプリケーションが少ないとか…そのようなことが根本的にネックになるとは僕は思っていない。文字入力についてはBluetoothで無線接続させるキーボードでその機能を補完すればよいし(…僕はふだん書斎でも研究室でもAppleのWireless Keyboardを使っているのでIncaseのOrigami Workstationを使ったり、定評のあるリュードの折り畳みキーボードを使ったりしている…)、脚注などを挿入してしかるべき論文の体裁を整えるアプリケーションも今は数は少ないが、iPadならばすでにPagesがあるように、今後は増えていくことだろう。

両者が完全に代替されるにあたって最大の条件となるのは、ライティング環境の中核にあるパソコンとタブレットデヴァイスとの間の連携に壁がなくなり、完全に統合されたデスクトップ環境が実現されることにある…と僕は踏んでいる。現状で両者の連携は、iPadの場合、iTunesのようなアプリケーションを仲介させる必要があるが、それで両者をつなぎ合わせても両者の情報が同期されるだけ。こうしたアプリケーションを媒介させることなく、それぞれに表示された文字列などの情報を、相互にコピー&ペーストなどの操作を経てやり取りすることは難しい。(以下に紹介するPastebotのようなクリップボード拡張アプリを用いれば、iPadからMacへの文字列のコピーは可能だけれど。)

Screen_2

まずは、このスクリーンショット画像をご覧頂きたい。これは、僕が自宅でのライテング環境で中核に置いて使用しているMacの画像である。この画像から確認頂けるように、ようやくMac OSのデスクトップ上にiOSの作業環境を表示させ、Macで使っているキーボードをiPadにも共有させることで、Mac OSとiOSの作業環境を…シームレスとまではいかないが、交互に入れ替えて行うことができるようになった。この画像の右側に写っているアプリケーションは、iOS版のNorstedts engelska ordbok proである。日本における北欧語使用者にとって、北欧語の電子辞書は長年の夢であったものの、iOSやAndroid OSで動作する…情報に信頼のおけるしかるべき辞書アプリが販売されるようになったため、その夢は現実のものとなった。しかし驚くべきことに、MacOS Xの環境においてスタンドアローンで使用できる北欧語の辞書アプリケーションは、(…かつてのMacOS 9までのクラシック環境ならば存在したが…)存在していない。それゆえ勢い次の夢は、パソコンとiPadのようなタブレットデヴァイスを連携させ、両者の間に障壁のない統合されたデスクトップ環境を築くことにあった。これができれば、例えばiOSにしか用意されていない辞書アプリの文字列情報も、ライティング環境の中核にあるパソコン側で編集することができ、パソコンで執筆している文章の内容に活かすことができるからだ。

そうしたパソコンとタブレットデヴァイスとの間の壁が、今ようやく崩れようとしつつある。このスクリーンショットにみられるMacのデスクトップ上に表示されたiPadのデスクトップは、Reflectionというミラーリング・アプリケーションによって実現されている。MacとiPadが同じネットワーク下に接続されていれば、Mac側でこのアプリを起ちあげ、iPad側でAirPlayの機能を用いれば、iPadの環境をMacのデスクトップ上に再現できる。iPadで入力された情報がMacのデスクトップに反映されるのに一瞬のもたつきはあるが、個人的には十分な反応速度だ。もとより僕は自宅のライティング環境においてiPadにはキーボードを繋いで電子辞書専用のデヴァイスとして用いてきたが、この画像の右下に見えるType2Phoneというアプリケーションを使えば、MacにBluetoothで無線接続しているキーボードをiPadと共有できる。つまり従来、僕の書斎の机上には二つのキーボードが並んでいたのだが、これを一つにまとめることができるようになったのだ。(言語の切り替えについても、切り替えのショートカット設定をMacOSとType2Phoneで別々に設定すれば、それぞれMacの言語環境とiPadの言語環境を別々に切り替えることさえ、ひとつのキーボードでできてしまう。)

この画像の中央にあるアプリは、『Mac Fan』2012年6月号の「スペシャリストのMac」でも簡単に紹介されていたテキストエディタBywordである。このBywordにコピーした文字列は、(…試しに、Type2Phoneで言語環境をスウェーデン語に切り替え、iPadにあるNorstedtにスウェーデン語のårを入力して検索してみたが…)右側のReflectionでミラーリングしているiPad上のNorstedtの辞書にある文字情報をコピーして貼り込んだものである。これまでもPastebotのようなiOSのクリップボード拡張アプリを使えば、iPadからMacへ文字列のコピーは可能だったけれど、統合されたデスクトップ画面上でそれを行うことはできなかった。(逆に、MacからiPadへはDropCopyのようなアプリを使えば可能である。)そうしたことを思えば、ReflectionとType2Phoneの併用は統合されたデスクトップ環境の実現を格段に進化させたと言える。(ただし、まだMacとiPadの統合されたデスクトップ環境は完全なものではない。例えば、ポインティングデヴァイスの共有はないので、Mac側のマウスやタッチパッドでReflection上にミラー表示させたiPad側の文字列範囲を指定することはできない。)

僕たち人文系研究者のような不断に長文の執筆を求められるナレッジワーカにとって、パソコンがライテング環境の中核に位置づけられるのは今後もしばらくは変わらないと思う。このブログの発言は、書斎や研究室にあるパソコンを補完し、主にモーバイル環境で使用する道具についてのことだ。パソコンとタブレットデヴァイスとの間の壁が徐々に取り払われ、両者のデスクトップ環境が完全に統合された暁に、そうした補完用途で用いるラップトップPCとの決別の日が僕のもとには訪れるのだろう…と、Reflectionを導入して統合されたMacとiPadのデスクトップ画面を見ながら感じている。

(決別の日以降、はたしてラップトップPCが廃れるのかというとおそらくそのようなことはない。ラップトップPCは書斎や研究室などのライティング環境の中核に置かれることになろう。バッテリを搭載して単体で搬出できるラップトップPCは、通常の時は液晶モニタやプリンタなどの出力装置やキーボードやマウスなどの入力装置と接続させることで、書斎や研究室でのライティング環境を支え、必要な時には自宅内やキャンパス内で短距離移動して用いるような道具となろう。Thunderbolt DisplayとMacBook Airを組み合わせたライティング環境のように…Thunderbolt接続のような高速汎用データ伝送規格があれば、そのような環境は容易に実現できるのだから。)

2011年3月30日 (水)

海外でのスマートフォン使用のすすめ(修正版)

短期間ですがフィンランド・エストニアへ出張していました。(いろいろと公務がありますので、3月末という時期しか今年度は出張時期を選択できませんでした。)今回の出張で僕は何を考えていたのかは別の発言に整理するとして、僕の経験のなかで皆さんにも役立つ情報をこの発言では整理します。

それは海外でのスマートフォン使用についての情報です。これまでも携帯電話の国際ローミングサービスなどありましたが、高い通信費が懸念され、またデータ通信を行えないなど難点がありました。これに対してプリペイドSIMカードが使えるスマートフォンならば、通信費を気にすることなく携帯電話として使え、また単体としてデータ通信ができることはもちろんテザリング機能があるものならばモバイルルータとして外出先でのラップトップPCによるネット接続も可能にします。

今回、僕はイー・モバイルで売られているPocket Wifi Sをフィンランド・エストニアに持ち込みました。Pocket Wifi Sについては、従来からイー・モバイルのデータ通信端末を使っていたため、国内ではそのSIMカードを継続して使う(つまり電話としての通話機能は使わない)ということで、端末を一括購入(19800円ほど)しモバイルルータとして使っています。端末本体の価格が2万円を切るスマートフォンは現時点でPocket Wifi Sくらいしかありません。(ただしバッテリの持ちが悪いとか、処理速度が遅いとか、画面解像度がQVGAなのでAndroid用のアプリがすべて使えるわけではないとか…格安端末ならではの問題はあります。)

僕は、普段iPhoneを愛用しています。もしiPhoneで海外のプリペイドSIMカードが使え、テザリング機能が解放されていれば、Pocket Wifi Sを買う必要は全くないのですが、国内でSoftbankが売っているiPhoneはSIMがロックされ、テザリング機能も閉じられています。それゆえ、海外でSIMカードも使え(いわゆるSIMフリー…ただしイー・モバイルは公式にはこれを認めていません)、テザリング機能をもった端末(…国内ではほとんど使わないのだから、できれば格安で…)が必要で、Pocket Wifi Sはそうした僕の必要性に最も適う端末でした。

今回ははじめての海外運用ということでしたが、結果から言えば、出張中最も役立つ道具となりました。まずフィンランドのヴァンター空港に降り立ち(…すれ違いで帰国だった津田塾大学のIさんとビールを一杯ひっかけた後に…)R-KioskiでSaunalahti.fiの7ユーロもしないプリペイドSIMを買いました。ヘルシンキの町中へ向かうバスのなかで、早速Pocket Wifi Sの裏蓋を開け、E-mobileのSIMカードと交換します。電源を投入するとSaunalahti.fiの場合、まずPINコードの入力を聞いてきますので、ここで初期設定値である1234を入力するとロックが解除されます。その後、Android携帯の場合には、自動的に18258というSaunalahti.fiの番号へSMSが送られ、言語設定がなされます。このときEnglishを選択します。電話の機能だけならば、これでおしまい。あとはプリペイドSIMに含まれた料金分の通話ができます。

データ通信を試みる場合には、設定→無線とネットワーク→モバイルネットワークでAPNの設定が必要になります。新しくアクセスポイントを作成し、Saunalahti.fiの場合には、APNでINTERNET(USERやパスワードはなし)、MMSの設定として、APNでmms(USERやパスワードはなし)、URL:http://mms.elisa.fi の入力だけで、スマートフォン単体でのメール送受信やアプリを介したデータ通信ができます。(Saunalahti.fiのHPにもAndroid端末向けのAPN設定情報があるのですが、僕の場合それではダメで上記の設定だけでいけました。)Pocket Wifi Sの場合には、テザリング機能のON/OFFは最初からデスクトップ画面にその機能と連動したウィジェットがあるので、データ通信設定がうまくいっていれば、このウィジェットからテザリングをONするだけで、無線のモバイルルータとしてラップトップPCのネット接続も使えるようになります。(ヘルシンキとトゥルクの間のVRの車内で僕はMacBook Airをこの手を使ってネットに接続していました。)

プリペイドSIMカードに含まれた料金分だけに限ってデータ通信ができるということは、様々なメリットがあります。もちろんテザリング機能を使ってラップトップPCをネット接続できる点は便利ですが、それ以上にPocket Wifi Sにある様々なアプリを使って、速やかにこちらが欲しい情報を得られることの効果は絶大です。例えば、今回の場合、WorldMateというアプリにすべての旅程を登録しておきました。飛行機の時間やホテルの場所などを逐一このアプリは教えてくれます。Googleのマップと連動したTripAdvisorなどのアプリがあれば、地元の施設情報なども確実におさえられますし、道に迷うことは一切ありません。Androidにデフォルトで入っている時計というアプリはアラームだけでなく、その時間の地元の天気状況についても知らせてくれます。個人的に一番役だったのはGoogle翻訳のアプリ。今回の出張でも僕はいつもと同じように毎日地元のスーパーで買い物をして自炊していましたが、エストニア語やフィンランド語はわからないので、そうしたときにちょっとした商品にある単語を調べる際にこのアプリが役立ちました。(Google翻訳について文章の翻訳は全く使い物になりませんが、緊急時に単語帳代わりにはまぁ使えるかなといった感じです。)

こうしたことは、データ通信ができるからこと得られるメリットです。テザリング機能を含めて考えてみると、5年前には「海外でもデータ通信が使えれば便利になるだろうに…。」と夢に思い描いていたことが、ようやくSIMロックフリーでテザリング機能を備えたスマートフォンの登場で実現したといった感じです。僕は国内ではiPhoneを愛用しているので(…iPhoneを手放せない理由は北欧語の辞書アプリが充実しているためです…)、スマートフォンを2台所有することになってしまいましたが、もし海外と日本とを往復する機会の多い方で、これからスマートフォンを購入する予定がある人には、SIMロックフリーでテザリング機能をもった端末(…格安なPocket Wifi Sでも良いのですが、もし端末一括購入に資金的余裕(40000円ほど)があるならば、バッテリの持ちがよくや処理速度のはやいイー・モバイルのHTC Ariaなどその後、HTC Ariaは携帯回線の旧規格であるGSMには850/900/1800/1900MHzの各帯域で対応しているため問題なく海外でも使えるのですが、HSPA/W-CDMAという高速データ通信を可能にするような規格にはイー・モバイル独自の1.7GHzしか対応しておらず、無線モバイルルータとして海外で高速通信を行うことはできなさそう…であることがわかってきました。Pocket Wifi Sの場合には、HSPA/W-CDMAについては1.7GHzと2.1GHzに対応していて海外での3G通信にも対応する可能性が大きいです。ということで低機能でもPocket Wifi Sで決めうちでしょうか)を1台所有しておくと、海外での活動をより充実したものにできる…と、今回の僕の経験から確信しました。

2010年10月23日 (土)

新い住み処とiPadに関する発言の補足

次の新しい発言をする前に、先日の二つの発言をつなぐ補足を。iPadを仕事に使う際、PCに慣れた方がもっとも戸惑う点は、「USBメモリなどを使わずにPCとのファイルのやりとりをどうするのか?」という点でしょう。僕の場合、Dropbox、iDiskといったオンラインストレージを媒介させてファイルのやりとりをするようにしています。PCで作成したファイルはとにかく一切合切なんでもかんでもオンラインストレージに放り込んでおき、ネットワーク環境下にあるiPadから必要なファイルを取り出す…といった感じです。というわけですので、iPadの性能も、魅力も、それはネットワークに接続されていればこそのものであると言える。僕が愛用しているiPadは3G回線のないWiFiだけのものです。取り急ぎ、自宅と研究室には無線LAN環境を構築、出張も無線LAN環境の確保されている新幹線を多用します。(東京出張は、必ず無線LANのできるN700系のコンセントがある窓側の席。エクスプレス予約会員になれば、運賃も安いです。)町中で無線LAN環境のないところでのネット接続は、緊急避難的にイー・モバイルのPocket WiFiを使います。そうすることで、ほぼどこでもiPadはネットワークに接続されたかたちでその力を発揮できます。


そんなiPadを使っている僕が、バブル全盛期の頃に建てられた中古マンションを購入したとき、最初に頭のなかをよぎった不安は、「とりわけ頑丈な鉄筋コンクリート造りの建物のなかで、いかにして家庭内ネットワークを築くか?」ということでした。昭和末期の建物は、地震の到来を予想してつくられていても、21世紀のネットワーク時代の到来までは予期してつくられていなかったわけですから。しかしその不安も杞憂に終わりました。新たに引っ越した部屋は、建物の3階・4階を貫くメゾネット構造なのですけれども、光ケーブル回線は4階にしか来ていません。そこで昔から使い続け(…リコールとなった…)AppleのTimeCapsuleを有線でモデムにつないで、あとはAirMac Express ベースステーション with AirTunesを、TimeCapsuleから発信される無線の中継局として2つ立てました。1つは設置場所に試行錯誤を重ねて3階にある僕の書斎の直上にあたる4階の場所に立て、もう1つは液晶テレビとそのテレビにつなげているMac miniのネットワーク接続用にテレビ付近に立てました。AirMac Expressはコンセントに直づけできるので、中継局として適切な場所に簡単に移動させることができます。(海外出張の際にも、滞在先の部屋を無線化する目的で僕は必ずAirMac Eapressを持参します。)ですから、ちょっと古い建物で無線LAN環境を構築することをお考えの方があれば、移動も簡単、値段もお手頃なAirMac Expressを試されてみてはいかがでしょうか。


2010年10月22日 (金)

Back to the Macの前に

先日Back to the Macと題されたAppleの新製品発表会がありましたが、その趣旨がiPhone→iPadの技術を再びMacにフィードバックさせるというものならば、このブログでも新しいMacについて語る前にiPhoneやiPadの話をしておくべきでしょう。この夏にブログの更新をサボっていた間、僕の身近にあって重宝した道具は、ほかならぬiPhoneとiPadです。iPhoneは3Gを二年近く使い続けていましたが、バッテリの持続時間が短くなってきたことと、最近のiOS4に対応したアプリケーションの快適な処理に限界を感じるようになってきたので、この夏にiPhone4へ機種変更しました。(だいぶ待たされましたが。)iPadは今年6月には入手して、授業や出張など、仕事にどれだけ使えるのかトライアルを続けてきました。その結果、この10月現在、授業や講演、出張といった外での仕事のほとんどを、iPhoneとiPadの二つを連携させることでこなすようになっています。

iPhone4のメリットは個人的にその処理速度のはやさにあります。最近はAndroidをOSとして搭載したスマートフォンが数多く発売されていますが、スウェーデン語辞書(Norstedts engelska ordbok pro)、デンマーク語辞書(Gyldendals røde engelsk ordbog)、ノルウェー語辞書(Kunnskapsforlagets engelsk blå ordbok)と、現代北欧を代表する三カ国語の辞書も、それぞれしかるべき出版社のものがアプリケーションとしてiOS版で出揃ったので、北欧語で仕事をしている者としてはiOSを搭載したデヴァイス以外の選択肢は考えられません。問題はあって、Norstedts engelska ordbok proなどは現状でマルチタスクを実現したiOS4でしか稼働せず、iPadに搭載されているiOS3.2やiPhone 3Gなどに搭載されているiOS3レベルでは動きません。GyldendalやKunnskapsforlagetも、iPhone 3Gで動くは動くのだけれども快適な検索にはほど遅さ。それがiPhone4ならば、実に快適にインクリメント検索をこなしてくれています。片手の操作で北欧三カ国語をサッと検索できるというのは、今から10年ほど前では考えられなかった夢のような話です。(他にも、スキャナとして使えるカメラとか、これぞ「ナレッジワーカの十徳ナイフ」といった感じです。)

ただしiPhoneだけではどうしようもない部分もあります。例えば、論文の閲覧です。こればかりはiPhoneの小さな液晶ではどうにもなりません。ここで重宝するのがiPad。iPadはタブレットデヴァイスとしては大きすぎるとよく言われますけれど、PDFで論文を読んだり、Pagesで書類を書いたり、Keynoteでプレゼンをする身にはこのサイズがちょうどよい。この夏、体調が悪かったときに、ソファーやベッドで横たわりながらよく使っていたのは、ほかならぬiPadでした。iPadはiPhoneと比べると処理速度は圧倒的に速く、MacBook Airと比べるとバッテリ駆動時間が圧倒的に長い。出先でのちょっとした仕事をこなすなら仮想キーボードで十分に文章も打てますし、薄いので嵩張らないから、もし長文を書いたり注釈をつけたりという煩雑な作業が必要のない出張ならiPadだけで十分です。授業や講演の際のプレゼンも、処理速度がはやく、バッテリ駆動時間が長いiPadに移行しました。(iPadのKeynoteには、画面を指で長押しすると赤い点がでてくるポインタ機能も付いています。)ただし問題もある。OSが現時点ではマルチタスクのできないiOS3.2ということ、画面分割して複数のアプリケーションを同時に使えないということです。例えば、辞書を閲覧しながら、PDFの論文を読んだり、Pagesで文章を書くことはできません。この点、僕が感じているiPadの一番不便なところです。

そこで相互補完的にiPadとiPhoneを連携して使うことにしています。文書の閲覧や執筆にはiPadを使い、Webや辞書などレファランス目的でiPhoneを使う…といったようにです。例えば、講読の授業のときなど、この10月以降、僕はときに左手でiPadとiPhoneの二つを持ちながら、右手でそれを操作しています。このような芸当がなぜできるのかといえば、iPadにApple純正のケースをかぶせているため。純正ケースは安っぽい…という評価がありますが、汚れてくれば水洗いもできてしまう優れもの。おそらくスタンド機能をもったケースとしては最薄、最軽量なのですが、それがポイント。このケースをつけるとiPadの液晶画面の四辺に縁がとれますが、この縁にiPhoneをひっかけ、左手だけでiPadとiPhoneを二台もちする。そうするとiPad上にテキストを見ながら(…ほとんどのテキストはPDFであり、PDFにメモやアンダラインを書き込めるソフトを使えば、授業の内容も適宜メモできます…)、テキストに出てくる言葉などは、iPhone上の辞書やSafariで検索する…という芸当が可能になります。軽いので二つ持ちしても、それほど負担ではありません。(iPadとiPhoneの連携は、擬似的に画面分割とマルチタスクにするというだけでなく、iPhoneとiPadをBluetoothでつなげ、iPhoneのカメラで撮影した写真をiPadと共有することなども便利です。)

iOS4で実現されたマルチタスクですが、結局のところiPadやiPhoneは画面分割できないので、逐次アプリケーションを閉じて開く操作を繰り返さなければなりません。これはいわば、川のような思索と執筆の流れを分断させてしまうということであり、ナレッジワーカの道具としては深刻な問題とも言えます。そのような問題を抱えていますが、今のところiPadとiPhoneを二台もって両者を相互補完的に扱いながら、そうした問題を乗り越えようとしています。iPadはトイレの中やベッドの上でも気軽に使えるデヴァイスですから、おそらく一日の生活のなかで最も接している時間の長い道具。一頃ネットブックが流行りましたが、もしネットブックを買うぐらいのお金があるならば、処理速度もバッテリ時間も長いiPadのほうがお薦めだと思っています。(…とは言っても、僕の周りではまだ誰も買ったりしていませんけどね。仮想キーボードはクセがあるので、もしキーボードが絶対必要という人にのみネットブックやラップトップをお薦めします。)話にまったくのオチがありませんが、今日のところは、これでおしまいにします。そろそろ次は引越で新調した家電関連のネタでいってみようかな。

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