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2020年3月

2020年3月31日 (火)

オンライン授業の形式と「北欧史概説a」の例

 「古谷さん、技術的な話はわかったけれど、具体的に授業をどうするの?」という相談をちらほら頂くようになりました。そこで、この記事では、おおよそ想定できるオンライン授業の形式を整理し、僕が阪大で担当している「北欧史概説a」(講義形式、受講者数見込み150人程)の例を以下に紹介しようと思います。

 (技術的な話について、このブログで紹介してきた例は僕が「自腹」であれこれ試してきたものですが、「非常勤講師のように公費で教育研究経費を配分されていない者にはできない」との批判を耳にしています。この批判はもっともなものと思いますので、これまでの記事のあり方に反省し、極力、多くの方が実践できる方法を紹介することに努めたいと思います。)

 オンライン授業については、Zoomによる動画あるいは音声の遠隔配信を使う形式が盛んに紹介されています。しかし、僕の所属する阪大外国語学部では、Zoomの技術的ノウハウを知る教員が少なく、受信側の学生たちのネットインフラが多様であり、長い動画配信や音声配信を行った場合データ量の過使用(いわゆる「パケ死」)が起きる可能性もあることから、周囲の話を聞いていると、実際にZoomを使うオンライン授業の形式を考える先生は少なく、ほとんどは阪大ではCLEと呼ばれるIT授業支援システムや、阪大ではKOANと呼ばれる通常は授業連絡や教務管理で使われる教学システムを使ってオンライン授業の形式を検討される先生方が多いことがわかってきました。

 以下に、私見となりますが、それら三つのオンライン授業形式の簡単な紹介とそのメリット、デメリットをまとめまてみたいと思います。

(1)IT授業支援システムを使う形式:CLEとは阪大で使われているBlackboardプラットフォームベースのIT授業支援システムです。おそらく皆さんの大学にも似たものがあるでしょう。これを使う場合には、IT授業支援システム上に講義関連の資料を掲載するとともに、IT授業支援システムに割り当てられている担当授業のページに課題を作成しておき、受講登録した学生にはその課題を解答させる形となります。出席は課題の解答時点で記録されることになります。この形式のメリットは、課題のやりとち、成績と出席の管理が自動化されていることです。

(2)教学システムを使う形式:皆さんの大学でも、通常は登録学生にメールや掲示板を使った授業連絡や成績管理で使われている教学システムがあるでしょう。これを使うオンライン授業の形式はもっとも保守的ですが、簡便です。これを使う場合、この授業に登録された学生宛に教学システム上の掲示板あるいはメールを使って講義資料と課題を配布し、課題への回答をメールで教員に送ってもらうという形式になります。ただし出席の管理については手動で行わねばなりません。

(3)噂のZoomを使う形式:上記の(1)と(2)の形式は講義資料を読ませながら、あらかじめ準備された課題に回答させることで成績と出席をとりますが、事実上それは「夏休みの宿題」と大差ありません。つまり、各回の講義における「論点の解説」ができないということが(1)と(2)の最大のデメリットと思われます。(もちろん、登録学生に配布される資料で「論点の解説」を読ませる形をとっていれば、問題ありませんが。)もし自らに多少のノウハウと学生側のネット環境がクリアされていれば、Zoomを使って動画ないし音声で遠隔配信のメリットは、オンタイムで「論点の解説」を行うことができる点にあります。

 Zoomを使う場合、学生たちのネットインフラを考えると通信データ量をおさえるためにカメラを切断して「音声配信」するのがベターだと思います。また配信中は、教員側のPCにあるPDFやパーポイント、ブラウザなどの「画像共有」もでき、使い勝手のよい手段だとは思います。(PCにタブレット端末をつなげれば、タブレット側で「画像共有」した資料に注釈などを適宜書き込むことができます。)

 プライベートアカウントではZoomの使用時間が40分に制限されていますが、大学から割り当てられているac.jp系のメールアカウントがあれば、経済産業省が紹介する下記Webページの「お申し込み方法A」から時間制限のないアカウント(一度の配信での参加者数は100人に限定)がつくれます。

(この点について、非常勤講師の先生方のうちac.jpのアカウントが配分されていない場合には、一度各自お勤めの大学にメールアドレスの配分あるいはZoom使用の申請を相談されると良いのではないかと思います。) 

https://www.learning-innovation.go.jp/covid_19/zoom/

 僕は、阪大から対面授業を避けオンライン授業を求められている期間に、「北欧史概説a」という授業ではCLEとZoomをミックスしたオンライン授業を考えています。サンプルとして、この記事の末尾に受講する学生向けに書いた説明をつけます。僕基本は講義資料をCLEにアップロードしておき、コメントシートをCLEに書き込ませることで、出席をとるという筋立てですが、各回の「論点解説」に限っては40分程度の遠隔配信を音声ベースで行うという形です。

 ただし、実際にやってみないとわからない部分は多々あります。現状で想定される問題は以下の通りです。

(1)受信する学生側の問題:Zoomを使う場合、実際にデータのトラフィック量がどの程度になり「混雑」するのか、それに伴う問題がどうなるのかは、僕も蓋を開けてみないとわかりません。上から目線で「Zoomを使うから」とだけ指示してしまい、良好なネット環境を得ようと学生たちに大学やスターバックスのような店などのWifi環境がある場所に移動させてしまうのでは、ウィルス感染のリスクを低下させようとする今回の措置について、本末転倒の結果になってしまいます。

(2)音声配信と画面共有の問題:トラフィック量を抑えようと音声配信に限定したとしても、受信者側の音声を切ってもらわないと参加人数分の雑談(独り言)や生活騒音が集音されてしまい、たいへんな雑音になってしまう問題があります。画像共有も確かに便利なのですが、参加者側が書き込む許可を取り消さないと「落書き」される可能性があることに注意を払わなければなりません。

 再び長文になり恐縮ですが、この記事が、オンライン授業の形式についての具体的なイメージを皆さんにつかんで頂ける参考例のひとつになれば幸いです。最後に、僕の「北欧史概説a」の試案を掲げます。(以下の試案でZoom配信の時間を40分に抑えているのは、アカウント問題に起因するというよりは、受信側の学生たちの使用データ容量の問題を考えてのことです。 受信する学生側のネット問題がクリアされるならより長時間の対応もできます。皆様、くれぐれもお気をつけください。

 

「2020年度 <北欧史概説a> 第1回~第3回授業計画」

【第1回】講義配信時間 4月14日(火)14時40分〜15時10分 課題締切:4月15 日(水)23時59分

0.シラバスで紹介した教科書『論点・西洋史学』を生協書籍部で購入してください。この本は4月13日以降店頭に並ぶ予定です。初回の授業までに買えなかったとしても、次回の授業までにこれを買って授業に臨んでください。
1.4時限目の時間(14時40分)になるまでに、CLEにアップロードされている第1回「はじめに〜歴史学の観点から地域をどう考えるか?」に関するパワーポイントファイルをダウンロードしてください。
2.14時40分から、担当教員が開設するZoomのミーティイングルーム(トピック名は「北欧史概説a」)で講義を配信します。ミーティングルームに参加するためのパスワードはKOANからのメールで伝えますので、各自手元にパワーポイントファイルを用意しながら、ミーティングルームに参加して遠隔配信される講義を受講してください。
3.第1回の講義における主たる論点は「北欧史を考察する視点と西洋史学研究の視点の異同」です。30分ほどのオンライン講義を聴いたうえで、この論点に関する意見や感想を400字程度の日本語でCLEの該当箇所に記述してください。
4.課題の締切は4月15日(水)23時59分です。期限を過ぎた場合は「欠席」扱いとなります。

【第2回】講義配信時間 4月21日(火)14時40分〜15時20分 課題締切:4月22 日(水)23時59分


1.4時限目の時間(14時40分)になるまでに、CLEにアップロードされている第2回「先史時代と歴史時代の狭間(1)〜歴史と記憶をどう考えるか?」に関するパワーポイントファイルをダウンロードしてください。
2.14時40分から、担当教員が開設するZoomのミーティイングルーム(トピック名は「北欧史概説a」)で講義を配信します。各自手元にパワーポイントファイルと教科書を用意しながら、遠隔配信される講義を受講してください。第2回の配信時間は40分を予定しています。最初の10分で第1回のコメントシートに対する講評を話し、残りの30分で第2回の論点を解説します。
3.第2回の講義における主たる論点は「北欧に生きた者にとって歴史と記憶とはどのようなものか?」です。40分ほどのオンライン講義での解説と教科書にある「歴史叙述起源論」や「歴史と記憶」の項目を参考に、この論点に関する意見や感想を400字程度の日本語でCLEの該当箇所に記述してください。
4.課題の締切は4月22日(水)23時59分です。期限を過ぎた場合は「欠席」扱いとなります。

【第3回】講義配信時間 4月28日(火)14時40分〜15時20分 課題締切:4月29 日(水)23時59分


1.4時限目の時間(14時40分)になるまでに、CLEにアップロードされている第3回「先史時代と歴史時代の狭間(2)〜古代をどう考えるか?」に関するパワーポイントファイルをダウンロードしてください。
2.14時40分から、担当教員が開設するZoomのミーティイングルーム(トピック名は「北欧史概説a」)で講義を配信します。各自手元にパワーポイントファイルと教科書を用意しながら、遠隔配信される講義を受講してください。第3回の配信は時間を40分を予定しています。最初の10分で第2回のコメントシートに対する講評を話し、残りの30分で第3回の論点を解説します。
3.第3回の講義における主たる論点は「北欧にとっての古代とはどのようなものか?」です。40分ほどのオンライン講義での解説と教科書にある「ケルト問題」や「「古代末期」論争」、「中世初期国家論」の項目を参考に、この論点に関する意見や感想を400字程度の日本語でCLEの該当箇所に記述してください。
4.課題の締切は4月29日(水)23時59分です。期限を過ぎた場合は「欠席」扱いとなります。

2020年3月26日 (木)

人文系研究者のためのテレワーク環境構築入門(補遺:西洋史研究者のためのスマートフォン活用入門)

はじめに

 この文は、Zoomを使った講義や会議など、いわゆるテレワーク環境の構築に迫られた或る東京の研究者から頂いた「古谷さん、Webカメラを買いに行ったのだけれども、町中のお店ではどこも在庫がなく困っているんだよ。どうにかならないか?」との相談を機会に急遽執筆しようと思ったものです。結論から言えば、「スマートフォンを活用してテレワーク環境を構築する」ということがこの文の主旨です。かつて僕はスマートフォン黎明期の2012年に、その活用方法を紹介した「西洋史研究者のためのスマートフォン活用入門」という文章を『Clio』第26号(2012年)に公開しました。今あらためてその文章を読むと、その64-65頁にある「画像データの出力を通じた情報公開」の箇所では「書画カメラとしての活用」を紹介していました。この文ではその内容を補うという意味も込めて、つまり「スマートフォン活用入門」の補遺としてテレワーク環境の構築について情報を整理しようと思います。

 現今のCOVID-19を巡る様々な対策のうち、この4月からZoomを使ったオンライン授業が多くの教育機関で検討されています。またZoomを使った会議や研究会なども、これからは多く開かれていくことでしょう。これらの対策は国内だけでなく海外でも検討され、すでに実践されています。従って、世界的に未曾有のデータ・トラフィックの増加という事態が想定される訳ですが、この小文は遺憾ながら「Zoomを円滑に使用できる通信環境は確保されている」ことを前提に執筆されています。Zoomを円滑に使用するためには、一説では(余裕をみて)「ダウンロードで50-80Mbps、アップロードで30-50Mbps程の速度」があれば問題ないとも言われています。

(追記(2020年3月28日):Zoom社の公式情報では、グループビデオで推奨される速度について、1080p HDレベルで使用する場合、受信者側はダウンロード・アップロードともに2.5Mbps、送信者側は3.0Mbpsとされています。上記の文章で筆者が参考にした情報は、民間でZoomの使用法を講義しているZoomアカデミージャパンが公開している情報です。この情報の最終更新日は2018年6月30日です。Zoom社が技術的観点あるいはマーケティング的観点から推奨する速度と、Zoomアカデミージャパンが体感的観点から推奨する速度との間には「開き」があるものとは思いますが、Zoomアカデミージャパンが情報更新をしてからこれまでの間に必要速度に関するZoomの技術改善が図られていることは多いに予想されるため、上記の情報を参考とするにはいささか古いものだったかと反省しています。なお、この追記は筆者のTwitter発言に寄せられたご指摘への回答でもあります。ご指摘ありがとうございました。)

 ここで「遺憾ながら」と書く理由は、Zoomを使う人たちの通信回線の品質がその程度に確保されていると言い切れない現状がありながら、この文を書かざるを得ないためです。(現に、僕が今書いている豊中市の自宅における通信速度は、13〜14時の時間帯でダウンロードが35Mbps、アップロードが28Mbpsしか出ていません。)

 Zoomの使用方法については、大阪大学サイバーメディアセンターに属している岩居弘樹先生が公開されている「Zoomを使った遠隔授業について」のページがとてもわかりやすく参考になりますその使用方法は岩居先生のページをはじめ、それぞれの大学でも講習会やマニュアル公開がなされているでしょうから、それぞれの機会を活かして情報を得ていただくのが一番よいと思います。現今の問題は、先に紹介した僕の友人の相談にもあるように、Webカメラの在庫が払底している現状にあって、Zoomを使用するまでに至る機材環境の構築をいかに果たすべきか…しかも人文系研究者の観点からもわかりやすく説明することにあると思っています素人ながら、この文を公開する目的は、そうした問題意識に基づきます。

 

1.スマートフォンはWebカメラを代替する

 本題に入りましょう。ラップトップPCや一体型デスクトップPCなどをお使いの場合には、大抵のPCにカメラが内蔵されており、Zoomではそれを使えば問題ありません。テレワークのすべての局面で動画配信が必要ではないと思いますが、オンライン上で行う会議ぐらいの用途であれば、それで十分でしょう。

 ただし、それは「映像や音声の品質に妥協できるならば」という条件がつきます。例えば、語学実習系の授業をオンライン配信することを想定した場合、日本語にはない外国語の母音や子音の微妙な発音の違いを伝達するためには、教員の口の形や舌や歯の位置関係などをクリアな画像で伝えるとともに、その微妙な発声の違いをネットの向こう側にいる学生に伝えなければなりません。PCにビルトインされているカメラやマイクの品質は外付けできるカメラやマイクの品質に劣る場合が多く、本来、クリアな動画と音声を伝えるためには、カメラ、マイク、照明(加えて、それらをそれぞれに支えられる三脚やスタンドなど)が必要となると思います。

 環境構築に時間と資金があるならば、(1)発話者の微妙な動作を捉えられる高解像度撮影可能なWebカメラ、(2)発話者の音声を拾うことに長けた単一指向性のコンデンサマイク、(3)発話者の姿や撮影対象を詳細に撮影するためのLEDライトを揃えることが理想的でしょう。しかし、テレワークの推奨が声高に叫ばれて以来、Webカメラの在庫が払底しているにもかかわらず、会議や授業などにオンラインでの対応を求められている現今の緊急事態においては、これらを揃えることが現実的な方策だとは思えません。

 再び遺憾ながら、例えば語学実習系の授業にはあまり参考にはなりませんが、各種の会議や講義系・演習系の授業など、音声や静止画の共有を中心にZoomを使うものの、ときに低品質な動画を配信したとしても実害が少ない局面を想定したうえで、今現在カメラ、マイク、照明を揃えることができない方にひとつの提案を示してみたいと思います。その骨子は「手持ちの機材を活用する」点にあります。ここで言う「手持ちの機材」にはいくつかの選択肢があります。例えば、動画撮影可能なデジタルカメラをPCに接続してWebカメラやマイクの代わりに使用する方法もあります。しかし多くのデジタルカメラの場合、内蔵されているマイクの品質に問題があり、十全な授業配信の環境を構築するには別途外付けマイクを揃えることが必要になるかの思われます。

 前置きが長くなりましたが、Webカメラを代替できる「手持ちの機材」として、スマートフォンは選択肢のひとつになり得ます。カメラ、マイク、照明を個別に揃えたほうがより高品質な動画配信を含むあらゆる局面に対応できる訳ですが、会議や講義系・演習系の授業などの用途であれば、窮余の策として、カメラ、マイク、ライトの機能が内蔵されたスマートフォンが代替機材となり得ます。(追記(2020年4月13日)様々な学生たちの反応を見ていると、マイクを代替するものとしては、スマホ購入時に同梱されているマイク付きイヤホン(例えばiPhoneならばEarPodsが付属してきますよね)をヘッドセットの代用として使うのが、もっても手軽で確実なようです。最近はマイクの在庫も市場から消えつつあるので、もしマイクがない方々はスマホに付属していたマイク付きイヤホンで代用してみてください。)

 

2.テレワーク環境でスマートフォンとPCの連携が求められる理由

 スマートフォンによるテレワーク環境の構築ですが、もちろんAndroidでも、iOSでも、スマートフォン自体に直接Zoomなどのアプリをインストールして動画と音声を送受信することが最も簡単な方法になります。しかし、スマートフォン上のZoomアプリでは画面の制約もあり、事実上「ビデオチャット」を代替するものでしかありません。みなさん。ここで、この文は僕の友人からの「Webカメラの代わりになるものはないか?」という相談から出発していることを思い出してください。僕の友人は、なぜWebカメラを求めているのでしょうか?

 Webカメラは、PCでのZoom使用を前提とした機材です。Zoomを使って会議や授業を遠隔配信する際、PCを使うメリットのひとつは、広いモニターに複数の参加者の顔と声を確認しながら話を進められるという点にあります。もちろんZoom配信では必ず動画が必要という訳ではありませんから、会議や授業の形態によっては送信者側からの静止画像と音声だけを共有させるだけで十分という場合もあるでしょう。この文では動画を配信する形態での使用を前提に話を進めますが、PCのモニター画面ならばより多くの参加者の顔と声を一度に確認しながら会議や授業を進めることができるはずです。(とはいえ、一画面で同時に表示できる顔の数には限界がありますが。)僕の友人がWebカメラを求めた理由はそこにあります。

 例えば、ウルトラスーパーハイパーな高解像度のPCモニターを使っていて、多人数の参加者を一画面で表示できるとしましょう。(僕の環境を例にあげると、モニターをいわゆる4K(3840px×2160px)の解像度まで引き上げることができるのですが、高い解像度になればなるほど、一画面で分割表示できる画面は大きくなるものの、文字が詳細になってしまい虫眼鏡を使わないと判別不能になってしまいます。通常なら、いわゆるフルHD(1920px×1080px)くらいの解像度が実用的ではないかと思います。)高解像度モニターで多人数を同時に表示できると言っても、Zoomのデメリットのひとつを知っておくべきです。一画面に同時に表示できる参加者の数は限定される一方、多人数の音声が混線して雑音が酷くなるという問題です。(雑音は参加者の「雑談」を拾うというだけでなく、生活騒音やハウリングなど、様々な音声が拾われてしまうことから生じます。音声の問題は、参加者側で音声機能をオフ設定することで回避できますが。)

 会議や授業に多人数が参加するほど、そうした問題が出てくることも推測されます。遠隔配信のデータ・トラフィックの増加に伴うデータ転送の遅延を含め、これらの問題がはたしてどうなるのかは、筆者も蓋を開けてみないとどうなるかはわかりません。現状のZoomの仕様では、もし企業向けのアカウントが提供されるならば500人まで行けるというのですが、500人でやったらカオスだろうなぁ…実際に体験された方がいらっしゃったら教えてください。筆者のZoom体験など、たかだか5〜10名程度のWeb会議しかなく、多人数の講義でそれが実用的だと言えるのかは不透明なままこの文を書いています。申し訳ありません。

 でも「悲しいけど、これ「戦争」なのよね(…COVID-19のパンデミックに伴う…)。腹を括ってやらなきゃならん。

 

3.スマートフォンによるテレワーク環境の構築プロセス

 以上の理由から、PCでZoomを使用することを前提に、スマートフォンをカメラ・マイク・照明の代替手段として活用する方法を以下に整理してみましょう。先にプロセスだけをまとめておくならば、(1)スマートフォンにWebカメラアプリを導入する→(2)スマートフォンをケーブルあるいは無線でPCにつなげる→(3)スマートフォンをWebカメラとしてZoomで使うという流れになります。

 (1)スマートフォンへのWebカメラアプリの導入:Androidでも、iOSでも、それぞれのアプリストアで「Webカメラ」を入力して検索し、スマートフォン側にWebカメラとして使用するためのアプリを導入してください。お使いのPCのOSがWindowsでスマートフォンのOSがiOSならばiVcam、同じくAndroidならDroidCamが定番だと思います。これに対して、お使いのPCのOSがMacの場合には、スマートフォンのOSがiOSでもAndroidでもEpocCamが定番だと思います。ここで注意すべき点が一つあります。この後に説明することですが、PC側のOSに導入できるソフトウェア(一般的にはスマートフォンをPCにWebカメラとして認識させるためのドライバソフトあるいはクライアントソフトと言います)の違いに応じて、スマートフォン側のアプリを選択せねばならない点です。例えば、使い勝手のよいiVcamというアプリは、残念ながらWindows版しかPC側のソフトを提供されておらず、Macでは使えません。この点に鑑みれば、現時点でMacで使えるアプリはEpocCamの一択と言えます。(EpocCamは無料版と有料版がありますが、無料版の場合、Webカメラとして使える解像度が680×480という低解像度に限定されており、Macをお使いの方は、事実上、有料版のEpocCam HDを選択せざるをえません。)

 (2)スマートフォンとPCとの接続:この文では努めて簡単な方法を紹介していますが、最も注意を要するプロセスがこのステップです。まずPC側にそれぞれのアプリに対応したドライバソフトあるいはクライアントソフトを導入します。簡単に説明すれば、iVcamの場合には開発元のE2ESoftのホームページから、DroidCamの場合にはDev47Appsのホームページから、それぞれWindowsに対応したクライアントソフトをダウンロードしてWindowsにインストールします。EpocCamの場合にも開発元のKINONIのホームページからドライバソフトをダウンロードしてMacにインストールします。ここまでのプロセスはそれほど難しいものではありません。注意を要するのは、実際にスマートフォンとPCを接続させる局面です。

 どのアプリも基本的にはUSBケーブルを使った有線接続と無線LAN環境下での無線接続に対応しています。(iVcamやDroidCamの場合には、Windows側のクライアントソフトで有線・無線の接続を選択します。EpocCamの場合にはiOS側のアプリで選択します。)個人的な経験から言って、ここが一番難しい。無線接続は一見便利に見えますがデメリットがいくつかあります。まず接続するPCとスマートフォンが同じ無線LAN環境(同じWiFiネットワーク)に接続されていることが前提となります。例えば、無線LAN環境がない部屋では、無線接続ができません。また無線接続の場合、転送できる動画データに遅延が起きる場合が多々あります。このようなデメリットを考えると、より確実にPCとスマートフォンを接続させるためには、USBケーブルを使った有線接続を選択するべきでしょう。有線にせよ、無線にせよ、クライアントソフトあるいはドライバソフトをPC側に導入した後には、PCを一度再起動させることも強くお勧めします。なぜならば、PC側にスマートフォンを「新たなWebカメラ」として認識させる必要があるためです。クライアントソフトあるいはドライバソフトを導入した後で一度再起動し、USBケーブルを使って両者を接続させれば、ほぼ確実にスマートフォンがWebカメラとして認識される筈と思います。

 (3)スマートフォンをZoomで用いる:PC側でスマートフォンがWebカメラとして認識されれば、話の上ではZoomでも、Skypeでも、それぞれのテレワーク環境で使うカメラとしてiVcamやDroidCam、EpocCamを指定すれば、テレワークのためのWebカメラとしてスマートフォンを利用できます。Zoomを例にあげれば、Zoomのアカウントにログイン、自分が会議や授業を行う場合には「新規ミーティング」を開き、画面の左下に位置する「ビデオの開始/停止」の項目から使用するiVcamやDroidCam、EpocCamを選択すれば、スマートフォンのカメラ画像がWebカメラの画像として使えるようになります。(他人が主宰する会議や授業に参加する場合には「参加」を選択した後に、ビデオを選択するだけです。)

 

おわりに

 以上の作業でスマートフォンをWebカメラとして代替させることができます。筆者はMacをメインPCとして使っていますので、この文の最後に、EpocCam HDを例とした使用感を紹介しましょう。EpocCam HDはiPhoneやAndroid端末をフルHD(1920×1080)の高解像カメラとして使うことができるアプリです。フルHDは現在の市販されている高級Webカメラと同じ解像度となります。

 明瞭な動画を配信するためには解像度が高いことに加えて、適切なフレームレートとビットレートの設定が必要だと言われています。フレームレートとは「動画の滑らかさ」に関わる項目で、1秒間に埋め込こむことのできる静止画像(フレーム)の数(fps=frame per second)で単位が示されます。例えば、テレビ放送は1秒間に30枚の静止画像が切り替わることで「動いている」ように映像を見せています。これが30fps。このfps値が大きくなれば滑らかな動画になりますが、人間の視覚でその違いを認識できるのは60fpsくらいまでだと言われています。明瞭な動画を配信するためには、このフレームレート値に応じた最適なビットレート値を設定することが大切です。ビットレートとは、1秒間に転送できるデータ容量のことで、bps(bit per second)という単位で示されます。動画は、一枚一枚の静止画を断続的に切り替えることで動いているように見せています。話の上では、ビットレートを大きくできれば、静止画一枚一枚の情報量が詳細になり、結果的に明瞭な動画に結びつくと言えます。しかしそもそもカメラの解像度がワンセグ(360px × 180px/240px)やSD(720px × 480px)のような低い解像度の場合、一画面で表示できる画像の情報量は狭いままなので、ビットレートの値を高くしても無駄が生じるということになります。

 明瞭な動画配信には、解像度、フレームレート、ビットレートの適切な関係を考えることが大事になります。とはいえ、人文系研究者にとってそれら3項目間の適切な関係を見いだすのは、いささかややこしい話になります。個人的な経験に照らして話をまとめれば、(1)まずカメラの解像度をなるべく高い解像度に選択する(つまり現状ではフルHD(1920px × 1080px)がベスト)→(2)授業や会議の動画は映画ではないのでフレームレートは30fpsで十分→(3)解像度がフルHDでフレームレートが30fpsの場合、適切なビットレートの値は最低で12Mbpsくらいと言われています。

 最後にほんの少し難しいことを書きましたが、EpocCam HDは解像度、フレームレート、ビットレートの設定を簡単に切り替えられる点に使い勝手の良さを感じています。今日は、自宅にいる子供たちと各部屋に分かれてZoomを試してみましたが、筆者のiPhoneXSの場合、フルHD、30fps、20Mbpsくらいで講義系・演習系の授業で使える画質が得られるかなと思いました。(スマートフォンをWebカメラ代わりに使うメリットのひとつは照明機能が使えることですが、明瞭な動画にするためには、スマートフォンのフラッシュを常時点灯させることで、LEDライトとして使うことは必須に思います。ライトがないと、顔が暗くて「おどろおどろしい」感じを相手に与えることになる…かもしれません。)

 ただし、どんなに解像度、フレームレート、ビットレート、そして照明の関係に配慮したとしても、Zoomを使った映像配信では肉眼で見られるような明瞭な画像にはなりません。どうしてもぼやけるところが出てくるということです。この点に鑑みれば、微妙な口や舌の動きを確認させる必要のある語学実習系の授業にはどうしても不向きで、文献資料や図像資料を静止画像として共有させながら音声配信を基に授業を進められる講義系・演習系の授業に限ってようやく実用的なのではないかと思います。

 「文献資料や図像資料を基にした講義系・演習系の授業」と書きましたが、そうした授業がオンライン配信されるとなると「公衆配信」扱いとなり、オンライン上にアップロードされる文献資料や図像資料の著作権に関する問題が派生するといった話は別のところできちんと議論されるべきかと思います。文章中、幾度か「遺憾ながら」と書いてしまいました。Zoomを使った遠隔授業には、著作権のような法的な問題、ネットインフラのような技術的な問題、教員・学生の双方のネットリテラシーの問題などが残されたまま、なし崩し的な見切り「発進」を迫られている現状を誠に「遺憾」に思います。(この文が少しでも皆様のお役に立てれば幸いです。)

 

 

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