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2013年5月

2013年5月14日 (火)

日本西洋史学会第63回大会小シンポジウム「近世ヨーロッパにおける礫岩国家 ―複合する政体、集塊する地域― 」を振り返る

日本西洋史学会第63回大会の小シンポジウム3「近世ヨーロッパにおける礫岩国家 ―複合する政体、集塊する地域― 」にご参集頂きましてありがとうございました。200部用意したレジュメがすべてなくなったことから察して、とても多くの方に議論に接して頂けたのだと思います。一昨日の晩、日頃よきご指導を頂いてる先輩研究者の方からお疲れにも関わらず、「「東欧」や「北欧」のモノグラフが、ブリテンやスペインの事例と等価に並び、有機的に結びつけられていた」点を評価頂いた私信を頂いたとき、はじめてほっと胸をなで下ろしました。問題提起をして頂いた近藤和彦先生のブログにすでに紹介されていますが、ここでは反省点をも織り交ぜながら、この小シンポジウムを振り返る発言をしたいと思います。(太文字が修正部分です。)

個人的に、「礫岩国家」という分析概念は、スウェーデンのような近世ヨーロッパの周縁部を対象とした研究から出てきたものですけれども、近世ヨーロッパの国家編成の特徴を的確に示しているとはいえ、それを言うだけのものではなく、様々な時代・様々な地域の政治秩序を比較する上での分析枠として有効だと思っています。阪大で生活しておりますと日々「グローバルヒストリーをいかに実現するのか」を考える機会を得ますが、先日の大シンポでの林志弦先生のご講話にもありましたけれど、「グローバルヒストリーの構築」というものは、広い意味で「歴史を世界化、脱中心化、脱地方化」することだと僕も思うのですが、それに至るいくつかの具体的な方策として、抽象度の高い比較研究のための分析枠を設定してみるのも一つの方法としてありうるのではないか(…比較史へ林先生は懐疑的だったかもしれないけれど…)、たとえば、そうした分析枠を設定したうえで、言語化された「概念」の交換から文化的相互作用を見出すこともできるのではないか(…結局、歴史というのは言語化された情報を解釈することから生み出されているものに過ぎないのだから…)と思っています。

この「礫岩国家」という分析概念が、はたしてそのような比較研究の枠組みとなりうるか、この点を鍛え上げるために、時間的な広がりを問うということでは、中世(…古代ローマも必要かもしれない…)から現代に至る複合政体のダイナミズムを問う共同研究(科研基盤(B))を、今回のシンポジウムの母体となった「近世ヨーロッパ周縁世界の複合的国家編成の比較研究」科研の発展版として、再び研究代表者となりこの春から始めたところです。また空間的な広がりを問うということでは、この秋に日本、明清、サファビー朝あたりの研究者と萌芽研究に挑戦しようとしています。礫岩国家の「言い出しっぺ」の一人としては、様々な根拠を得ながら、この概念をより抽象度の高いものへと高める必要があると思っています。

「ドイツ史研究が盛り上がらないと、北欧史研究なんて単なるお国自慢で終わってしまうよ。」と僕はいつも学生たちに言ってますが、あのシンポジウムに参加されたフロアの皆様には、このシンポジウムがもともとは「近世ヨーロッパの周縁世界」の事例を結び合わせながら、政体をめぐるさまざまな理念のヨーロッパ世界内における相互作用の関係から、そうした理念の元ネタを言語化して用意した「中央」を相対化しようとしていたことを、はっきりと明示すべきだったかも知れません。このシンポジウムの母体になった科研の申請書を書いていたとき、たとえば人文主義的言説などの中央から周縁への横領/翻案の過程など、周縁から中央を見直すことを考えていました。ヨーロッパの「東と西」を問うというやり方では、近代以降の歴史的展開を前倒ししてしまう可能性もありますからの、個人的には東西南北といった方位概念で抽象される近代以降のヨーロッパ概念を相対化するうえでも、古代や中世との接続を意識し、こうしたローマ由来の思想的伝統をもつ中央と周縁(…それは同心円的配置とイメージできるかも知れない…)の概念交換を論じるべきでないか…という発想がありました。

例えば、昨年、「礫岩国家」科研はコペンハーゲン大学のゴナ・リン先生を招きましたが、僕としては、以上のような点から、神聖ローマ帝国とデンマーク・ノルウェー・アイスランドをまたぐオレンボー君主体制はよい事例だと考えていました。ハンガリー(この場合には神聖ローマとオスマンの狭間)、ポーランドなどはやはり普遍的政体に関する語彙を伝統的に用意してきた中央と、それをその時々のコンテクストで独自に読み替える周縁との概念交換をみるには最適な事例と思えまます。ボヘミアもそうした位置付けにおかれるでしょう。そう思えばこそ、神聖ローマ帝国史研究からの渋谷聡さんからのコメントでは、抽象的な分析枠としての「礫岩国家」という部分を共有しつつも、中世以来の来歴と思想史上の位置に由来した偏差という点で、デンマーク・スウェーデン・ポーランド・ハンガリーなどの周縁に与えた「普遍的君主理念に裏付けられた礫岩状態」の先輩として神聖ローマ帝国のあり方は違うと説明されていたのだと思います。もしそうしたコメントが議論を刺激していなかったとしたら、個別報告を用意した僕らとしても、より明確に「中央」との関係を明示すべきでした。

企画責任者(あるいは司会者)としては、質疑応答の時点で、このあたりのこと…つまり「なぜ個別報告がイギリス・スペイン・スウェーデン・ハンガリーという地域が選択されていて、ドイツ・フランス・イタリアが選択されていないのか?」という質問が寄せられるのではないかと事前に予想していました。確信犯的にこの質問を待っていたところはあるのですが、ドイツに関してコメントのほかに、フランスあたりとの比較で質問や批判を期待していましたので、この観点から質問がなかったのは、もしかすると、イギリスとスペインが、この時期のヨーロッパ世界において少なくとも秩序理念の言語化という点で「周縁」にあると日本の研究者にはまだ意識されていないためなのかも知れません…いえいえ、やはり全体としてこの「周縁」からみた議論だということをより積極的に司会者のほうから投げ掛けるべきだった。質疑応答にあと10分の時間的猶予があれば、司会者からこの問題を提起できたかも知れませんが、いささか逆説的ながら、「無言」という状況のなかに、僕たちの礫岩国家が今の学界に対して、あらためて何をより明示すべきなのか、このブログの発言で整理したような問題を明確見出したことは事実であり、今後の課題だと強く意識しています。

それから、もう一つ(…ツィッター上の議論に答えるために…)今回のシンポジウムで披瀝した「礫岩国家」論とハラルド・グスタフソンのConglomerate State論との違いについても、ここで整理しておきましょう。ハラルドの1998年のConglomerate State論に、従来のComposite State論との差異が明示されている訳ではありません。またConglomerateという語を用いた定義が明確に述べられている訳でもありません。近藤和彦先生から、地質学用語に言うConglomerateの「礫岩」という訳語が提案された時、僕自身、ハラルドに直接「地質学的なイメージは適切か?」ということで確認をとったことから、この「礫岩国家」という概念の検討は本格化したことを記憶しています。(ハラルド、ありがとう!)

ハラルドの提示した概念について具体的な検証作業が行われているのは、実際にはスウェーデン、スウェーデン語で記述された学術書を読みこなせるデンマークやフィンランドあたりに限られています。ヨーロッパではまだ、今回のシンポジウムのように、ヨーロッパ諸国の事例を「礫岩国家」という分析枠でもって比較研究されていないというわけです。これは、ひとえに「方法論的ナショナリズム」というべき状況をいまだに抜け出ていない(…スウェーデン語でしか情報を発信しない、スウェーデン語で発信された情報を受け入れられない…あるいは受け入れられたとしても各国の学会のもつ問題関心の傾向から外れてしまう…)ヨーロッパ各国の歴史学界のもつディスアドバンテージに由来しているわけですが、僕たちのシンポジウムは、ヨーロッパ各国のモノグラフを日本語という共通語で比較検討できる状況を逆手にとり、ヨーロッパの学界に先駆けて比較研究を行ったものです。この点からこの日本の学界における成果を英訳し、海外に発信することに対する期待は、実はハラルドやゴナ先生からも寄せられています。

僕たちのシンポジウムは、ヨーロッパ周縁をつなぎ合わせることから逆にヨーロッパの政体がもつ普遍的特徴を照射するという方法を提示しましたが、これは、「礫岩国家」科研が3年にわたって積み重ねてきた個別研究の議論を集約した成果です。ハラルドらの議論がいまだ北欧の文脈を抜け出ていない一方で、僕たちはヨーロッパ東西南北の事例を比較することで、「礫岩国家」という分析枠を用いて各地域の国家編成を観察する場合の比較基準(例えば普遍君主のあり方、地域集塊のあり方など)まで、合意を形成できている。こうした点から抽象化された分析枠として、僕たちは日本語で堂々と「礫岩国家」を披瀝させて頂きました。僕らの「礫岩国家」論は、ハラルドのConglomerate State論から触発されたものの、ヨーロッパ東西南北の事例をもって具体的根拠を集積し、比較研究のための独自の論点を整理しているという点で、違いがあるという訳です。

「これから」というところで会を閉じざるを得なかったことが残念でしたが、そもそも今回のシンポジウムは、学界に問題提起をすることが最大の目的でしたから、たとえ時間があったとしてもあの場で一つの妥結点を見いだせるような性格のシンポジウムではなかったでしょう。今後「これから」の議論が、様々な場で様々な分野の方々になされていくのを見たときに、はじめて達成感を得ることができるのでしょう。あの場で発言できなかった(あるいはあえて発言されなかった)皆様とは、今後様々な機会で忌憚なくご意見を頂戴できれば幸いに思います。このようなところを意識しながら、まずは可能性が濃厚になりつつある活字化への取り組みに邁進していきたいものです。

(最後に、小っ恥ずかしくも、ごく個人的な発言を許してもらえれば、グスタフソンの論文に出会ったのが1998年、近藤先生のゼミで後藤はる美さんなどを前にしてConglomerate State論をはじめて報告したのが1999年、グスタフソンの下へ留学したのが2000年、ConglomerateとCompositeの差異について根拠をもって検討しながら、近藤先生たちからご助言を頂きつつその概念化(言語化)に延々と悩み続けた2000年代。生年月日がまるで一緒の中澤達哉さんと意気投合したのが2005年。(そういえば、このなかで大阪外国語大学と大阪大学が一緒になって「礫岩状態」を形成するなんていう事態を実体験もした。)このシンポジウムを開催した今年が41歳なので、ある意味、個人的には30代の研究の総括をしたとも言えるものでした。これから40代に何を目指すべきなのか、はっきりとさせてもらえた機会でもありました。あらためまして、このシンポジウムの機会を与えて下さり、ありがとうございました!

(もう一つ!Windows8は即応性に欠けるため、プレゼンをしながらの咄嗟の動作にコンマ数秒の対応ができず、使いにくかったです。Windows3.1に倣って今年中にローンチされるだろうWindows8.1が出されるまで、やはりMacへと回帰します。)

2013年5月10日 (金)

日本西洋史学会第63回大会小シンポジウム「近世ヨーロッパにおける礫岩国家 ―複合する政体、集塊する地域― 」

週末に「近世ヨーロッパにおける礫岩国家 ―複合する政体、集塊する地域― 」 と題したシンポジウムを今週末に京都大学で開催される日本西洋史学会第63回大会で行います。

僕が代表者となって2010〜12年度に推進してきた科研・基盤(B)「近世ヨーロッパ周縁世界における複合的国家編成の比較研究」の中締めとなります。(この科研で見出された問題群を発展させ、再び代表者として2013年度からは「歴史的ヨーロッパにおける複合政体のダイナミズムに関する国際比較研究」を進めています。)

Conglomerate Stateの議論が日本で礫岩国家論として独自に展開している…と、スウェーデンのハラルドが知ったら驚くだろうなぁ…。すでに参加登録者の数は結構多いと伺っておりますが、どうぞよろしくお願いします。

【日時】2013年5月12日(日)13:30〜17:00
【場所】百周年時計台記念館 2 階 国際交流ホール I
【次第】
「近世ヨーロッパにおける礫岩国家 ―複合する政体、集塊する地域― 」
問題提起:近藤和彦(立正大学教授)「問題提起 ―礫岩国家と普遍君主―」
報告1:古谷大輔(大阪大学准教授)「礫岩国家スウェーデンと多様な地域集塊の論理―スコーネ地方の併合にみる「バルト海帝国」の形成プロセス―」
報告2:後藤はる美(東洋大学講師)「「君主のいない共和国」と礫岩国家―17 世紀イングランド・スコットランドの法の合同論をめぐって―」
報告3:中澤達哉(福井大学准教授)
「ハプスブルク帝国の礫岩国家編成と集塊理論―非常事態への対応:服属地域ハンガリー王国からの正統化―」
報告4:中本 香(大阪大学准教授)「王朝の交代と礫岩国家スペインの変質―「新組織王令」にみるブルボン朝スペインの統治理念と実態―」
コメント:内村俊太(上智大学助教)「近世スペインにおける歴史意識研究の立場から見た礫岩国家研究」
コメント:渋谷 聡(島根大学教授)「近世神聖ローマ帝国研究の立場から見た複合国家研究」

2013年5月 4日 (土)

第2回 大阪大学未来トーク

第2回 大阪大学未来トークを宣伝いたします。まだ席に余裕があるようですので、ご関心のある方はぜひご参加ください。

第2回 大阪大学未来トーク
【日 時】5月13日(月)17:00~18:30(受付開始16:00)
【場 所】 大阪大学会館(豊中キャンパス)
【講演者】Lars Vargo(ラーシュ ヴァリエ)スウェーデン大使
【演 題】 「スウェーデンと国際化」
【使用言語】日本語
《ラーシュ ヴァリエ氏 略歴》
http://www.swedenabroad.com/SelectImageX/5300/fwd_Curriculumvitaejap.pdf
参加の事前登録は以下のURLからで、本日が締切になっています。
http://www.osaka-u.ac.jp/ja/news/event/2013/04/20130315_01

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