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2010年10月21日 (木)

デンマークとスウェーデンの「間」を知るために

ここ一、二ヶ月、体調がすぐれないときが多く、(はじめて買った)ベッドに横たわる時間が増えました。そんなときには、スウェーデンから送られてくる文献に目を通していました。(逆説的ですが、意外とそんな時間の過ごし方も良いと思いました。)そうした文献の一つに、このブログでは何度か紹介しているルンド大学歴史学研究所のHanne Sandersさんの"Nyfiken på Danmark-Klokare på Sverige"がありました。Hanneさんは、僕の最初のルンド留学以来、家族ぐるみでつきあって頂いている研究者で、デンマーク人ですが今はスウェーデンのルンド大学に職を持ち、ルンド大学歴史学研究所のもとでデンマーク研究センターを主宰されている方でもあります。大阪で気分が悪くなる度、昔懐かしいHanneさんの文章を読みながら…いや、活字を目で追いながら、頭のなかでは優しく語りかけてくれる彼女の声をイメージしながら、ルンドでの楽しかった日々を思い出し…ついつい弱音を吐きそうになる自分にとっては、一番よい処方箋だったように思います。


このNyfiken på Danmarkという本は、研究書というよりはしっかりとした文献目録がついているとはいえ、エッセイ集といったほうが良いでしょう。各章は、無料新聞として知られるMetro誌上に寄せられたデンマークとスウェーデンの歴史的・文化的相違に関する素朴な質問に、Hanneさんが答えることから始まります。例えば「なぜ聖ルシア(サンタ・ルチア)はスウェーデンで大切な聖人なの?」なんていう疑問。これにHanneさんは歴史的経緯を踏まえながら優しい語り口で答えます。そのやりとりが終わると、例えば、上の質問の後には「デンマークらしさとスウェーデンらしさー歴史的観点から見て」という一文が続きます。ほかにも「なぜデンマークでは、クリスチャン4世を歌ったデンマーク国歌が今ではほとんど歌われないの?」→「デンマーク人とスウェーデン人にとっての民主主義」とか、「ルンド大聖堂はデンマークにとってどんな意味があるの?」→「ウレスンド・リージョンの歴史」とか、続きます…が、そんな感じで、この本は、スウェーデンの歴史、デンマークの歴史を省みた際に浮かび上がってくるスウェーデンとデンマークの「間」が語られています。単にデンマークとスウェーデンの国民性(…それこそ、ルンド大学の歴史学者たちが糾弾の対象としている近代的幻想なわけですが…)の違いを列挙するのではなく、最後はデンマークとスウェーデンを包含するウレスンド・リージョンの歴史という話で閉じられるあたりが、21世紀に生きる「北欧」の歴史学者らしい。


それは「違い」というよりは、「間」と僕は言うべきだと思うのですが、今でこそ「北欧の一体性」のようなイメージが広く世界中で共有されるようになっているけれど、例え、言語面で似通っていても、宗教面で似通っていても、文化面で似通っていても…デンマークとスウェーデンが、過去一千年の歴史のなかで一つの国を構成しなかった(…できなかった…)ことは、厳然たる事実です。「一つの北欧」を言うのは誠に簡単なことですが、しかし、デンマークとスウェーデンの間に今も見え隠れする「間」を理解することなく、「一つの北欧」を言うのは暴論に近いものを感じています。そんなことから、阪大外国語学部のデンマーク語専攻とスウェーデン語専攻の学生には、コーヒーのCMをもじって「北欧、北欧と言う前に(デンマークとスウェーデンの)違いのわかる大人になれ!」とよく言って…しらけられいてるのですが、このHanneさんの本は、彼女のスウェーデン語も実に読みやすいので、そんな学生たちに真っ先に読んでもらいたい…あるいは「北欧」を理念先行ではなく、それを構成している諸地域の歴史や文化の実態に即して理解したいと思っている真摯な日本の方々に読んでもらいたいと思うものです。ほんと…癒されます。


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