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2010年1月

2010年1月30日 (土)

北欧史概説の学期末試験

阪大で北欧史概説を受講されているみなさん。来週金曜日の3時間目に予定している今学期末試験の課題をここにアップロードします。しっかりと勉強して試験に臨んで下さい。


2009年後期学期末試験をダウンロード


2010年1月29日 (金)

デジタル化時代の歴史地図

かつて山川出版社から公刊されている『世界史地図ソフト』のことを話題にしたことがある。あれは「詳説世界史B」にある歴史地図をそのまま図像ファイル化して網羅したCD-ROMであり、いわばもとよりあったアナログな地図をPC上での編集が可能な図像データへと変換したものに過ぎなかった。とはいえ、それでもPCを使って授業資料を作成する者にとっては有用性の高い画期的なソフトだった。

今日、僕の手元にスウェーデンのGleerups社が昨年公刊したDigitala historiska kartorが届いた。現物を一切見たことがないままで発注することには躊躇したが、実際に手元に届いたものの中味を見て、その出来のよさに驚かされた。この驚き、「久々に買い物で嗅覚が効いた!」という感じで心地よい。

スウェーデン語でDigitala historiska kartorという場合、(1)古地図をデジタルデータ化したものと、(2)山川の『世界史地図ソフト』のようにGymnasiumレベルの歴史の授業で使われる授業資料としての歴史地図をデジタルデータ化したものとに別れる。ここで紹介するものは(2)のものだ。版権の問題もあろうからブログ上でこの地図を公開することを控えるけれども、ホモ・サピエンスの生活圏拡大から、ヨーロッパ統合の進展(EUだけでなくEFTAも扱われているところがやはり北欧産だ!)やユーゴ紛争(デイトン合意後のC.ビルトの活躍をみればやはりスウェーデン産だ!)あたりまで、60強の地図データがパワーポイントのファイルで作成されている。

歴史地図がパワーポイントで作成されているというところがこのCD-ROMのミソ。パワーポイントであればこそスライド&アニメーション処理でもって、同一地図の上に複数の地理情報を重ね、それを動かすことで地図に見られる歴史事象の「動態」的変遷を視覚化して伝えることができる。例えば、"Homo sapiens spridning"と題されたファイルを見ると、例のアフリカ大陸の大地溝帯あたりくらいから始まって1万年ほど前に南アメリカ大陸へと至るホモ・サピエンスの生活圏拡張の様子が、8枚にわたるパワーポイントのスライドで段階をおって示されている。

北欧史関連で嬉しかったのは、バイキング活動の様子と近世スウェーデンのバルト海世界における広域支配圏の変遷の様子を示したスライドの出来だ。とりわけ前者は、ノルウェー・デンマーク・スウェーデンそれぞれを故地としたバイキング活動の地理的展開が示されており、これほど理解しやすいバイキング活動の地図を僕は見たことがない。

おそらく我が国でも志の高い高校・予備校の地歴科の先生方によっては、個人的にパワーポイントを使って上記のような歴史事象の地理的変遷に関する「動態的」理解を目的とした授業資料を作成されていらっしゃるかも知れない。しかし、こうしたファイルを作成するには相応の負担と実力が必要となるから、日本全国の先生と学生にあまねく行き渡っているものではないだろう。教育においてそれを講ずる側、受ける側、それぞれに格差がうまれる可能性はなるべく減らされねばならないと思うとき、もしこのような授業資料が一般頒布され、日本全国で世界史を教える先生と世界史を学ぶ生徒のみんなに行き渡ったら、どんなに有意義なことだろうかと僕は考える。

さらに僕は、先日発表されたiPadのような比較的安価なタブレット・デヴァイスを電子ノートや電子教科書として機能させるような教育手法の革新が到来する日をも夢見つつ、そうしたものに載せるべき教育効果の高いコンテンツとして、このスウェーデン語によるDigitala historiska kartorを眺めている。

2010年1月14日 (木)

北欧語学習者必携ツールとしてのiPhone

___2 かつてこのブログで「デンマーク語の夜明け」とか題して、iPhone上で動作する辞書アプリケーションとしてPolitikenのデンマーク語・英語辞書を紹介したことがあったと思う。それは所収語彙数32500語程度で、意味を調べるならばそれなりに使えるアプリだった。しかし文法事項が記載されることはなく、それは単語帳のようなものだった。けれどそもそもデンマーク語の電子辞書などなかったものだから、そうした状況において、それはデンマーク語学習に「夜明け」を告げる存在だった。

これはあくまでもiPhoneないしはiPod touchで動作するアプリケーションの話だが、昨年末iTunesのApp Storeに登録されたGyldendalのデンマーク語・英語辞書がすごい。所収語彙数の違いに応じて大中小(それぞれ3900円1200円600円)があるのだが(…3900円の大辞典では175000語を所収している…)、これには名詞の性・数や動詞の変化などについても情報が記載されているし、例文の記載は少ないけれど熟語表現も掲載されている。さらにこのGyldendalは、ネットワークに接続されていないでも、オフライン検索ができる。

iPhoneの辞書アプリケーションの多くは、検索インターフェースのみをアプリとして提供し、検索する際には逐次サーバに蓄積された辞書データ本体にネットワーク接続して情報を得るものが一般的だ。そうしたオンライン検索型辞書アプリケーションの代表が、スウェーデンの言語・民俗研究所が移民向けに公開しているオンライン辞書LexinをiPhone上から検索するLexikonだ。Lexikonについては、ネットワーク検索の母体になっているLexinの辞書としての出来具合が実に秀逸なので、文法事項はもとより、熟語表現、例文紹介なども的確で、スウェーデン語学習者にとってこれ以上のツールはないと僕は思う。しかしLexikonで検索するには、携帯電話回線にせよ、無線LAN回線にせよ、常にネットワークに接続されている必要があり、例えば飛行機のなかなどネットワークから遮断された環境では検索できない点が難点である。

(ちなみにLexikonは、英語のほかに、アルバニア語、アラビア語、ボスニア語、クロアチア語、クルド語、フィンランド語、ギリシア語、ロシア語、セルビア語(ラテン表記・キリル表記)、ソマリ語、スペイン語、トルコ語とスウェーデン語を検索できる。この言語の種類を見ると、おおよそスウェーデンの移民行政において、どういった言語圏からの移民が多く受け入れられているのかを判断することができよう。)

(日本語、英語、フランス語、イタリア語などについては辞書データ本体をiPhone内に蓄積して、オフラインでも検索できる秀逸な電子辞書ソフトは存在する。この発言の冒頭に掲げた写真は、僕が仕事関係でよく使っているアプリケーションを集めたiPhoneのスクリーンショット画面。辞書関係ではLexikon、Gyldendalときて英和辞書はウィズダム、国語辞書は大辞林。ウィズダムや大辞林など、物書堂が開発している辞書アプリは、その検索インターフェースがすばらしい。そしてiDicは、学部生の頃からコツコツと買い集めてきたEPWING形式の辞書データを検索するアプリケーション。iDicにはデンマーク語、スウェーデン語をはじめノルウェー語、フィンランド語、オランダ語、ドイツ語、フランス語、スペイン語の辞書、英語についてはリーダーズやランダムハウス、国語については広辞苑、百科事典については平凡社・小学館・ブリタニカ・ウィキペディアなどを仕込ませている。これは20年近い収集の成果。貧しかった学生時代に貯金して買っておいた資産が今になって生きている。ラテン語は、ネット上で公開されているLewis and Shortを基にしたLexidiumという辞書を取り急ぎ使っている。)

日本ではスタンドアローンで使用可能な電子辞書と言われる検索ツールが異様な進化を遂げており、言語学習者にとっての神器とされている。IT分野にあって日本は「ガラパゴス」化している(…世界の主たる潮流から隔絶されているがゆえに、いくつかの機器に関しては異様なまでの独自的進化がみられる)と言われるが、電子辞書市場もまたその類の産物と言えるだろう。例えば、スウェーデンやデンマークにあって、日本における電子辞書の類を僕は見かけることはない。だいぶ以前、スウェーデンの友人に「辞書はどうしているの?」と聞いたときには、「LexinやSAOBなど、ネットワークで検索できる辞書サイトで確認しているよ。」との答えが返ってきた。彼らにとっては、ネットワークに常時接続された環境は普通のものだった。

しかし日本は長らくそうではなかった。電子辞書同様に「ガラパゴス」的進化を遂げた携帯電話が日本語という特殊な言語環境を前提とした市場で発展したために、この市場で受容の少ないスウェーデン語やデンマーク語のような特殊文字を使う言語の検索は「文字化け」の問題で使いものにならず、従ってネットワークに接続された辞書検索は一般的にならなかった。日本では「オフライン検索ができなければ電子辞書ではない。」といった意識は相当に根強く、それゆえ今でも「英語やドイツ語、フランス語、スペイン語、イタリア語、ロシア語、中国語のようなデンマーク語やスウェーデン語の電子辞書がない」という不満が学生たちの間からよく漏れ聞こえてくる。(もちろんネットワークへ接続する投資さえ惜しまなければこうしたことは一切問題にはならないが、その場合は通信料が問題となる。)

「オフライン検索ができなければ電子辞書ではない。」という不満への対処策は、これまでにも一つだけあった。今となってはかなり古い規格となってしまったが、EPWING形式による辞書データをPCやPDAにコピーして検索するという方法だ。かつては三修社からこの形式による十二国語辞書(旧版)が発売されており、僕は長らくここに所収されていたデンマーク語やスウェーデン語の辞書データを様々な機器にコピーして使用してきた。しかしこの方法をひろく学生たちに薦めることは今ではできない。なぜならばEPWING形式による十二国語辞書は、その後辞書データの形式を変えてしまい…そしてそもそも今ではこれ自体が絶版になってしまって、入手することは困難だからだ。

こうした状況に鑑みれば、オフライン検索のできるしかるべき文法事項が記載された辞書アプリケーションとしてGyldendalの登場したことが、いかにすごいことなのかを理解していただけると思う。スウェーデン語に関しては、残念ながらオフライン検索のできるしかるべき文法事項が網羅された辞書はない。それゆえ常にネット環境を維持してLexikonを使うか、かつて三修社の十二国語辞書に所収されていたEsselteの辞書を何とか購入して、自ら購入したデータをiPhoneにコピーして使うしか方法はない。(スウェーデン語について、オフライン検索できる電子辞書が発売される可能性はないとは言い切れない。Norstedtの辞書データはオンラインで検索可能なように公開されており、世界的なiPhoneの市場規模に目をつけたソフトウェア開発会社があれば、その辞書データを利用してGyldendalのようなものは作り出せると思えるからだ。)

いずれにせよGyldendalの辞書が登場したことで僕たちはオフライン検索できるデンマーク語の電子辞書を手にした。これで「デンマーク語は電子辞書がないから勉強しにくい」という言い訳は通用しなくなったとも言える。(だから学生のみんなは、もっと勉強なさい!)これまで僕は外国語学部でも北欧語の教育に携わる関係上公平を期すために、iPhoneやiPod touchのような特定のデヴァイスの使用を他人に薦めることを避けてきた。しかし唯一の選択肢としてGyldendalの辞書が登場したこれを機会に、少なくともデンマーク語を学習する人に対しては、iPhoneやiPod touchは勉強のための必携ツールであると薦めることになるだろう。(もしスウェーデン語も勉強したいと言うならば、Lexikonを常時使えるように携帯電話回線をもったiPhoneこそが必携ツールということになる。 ちなみにノルウェー語ならば、iPhoneでオフライン検索できる辞書としてCollins のノルウェー語辞書が1200円で売られている。)

2010年1月13日 (水)

西洋史学(特殊講義)+試験問題

学期末試験の問題をアップしました!遅れてすみません!

京都大学文学部のみなさんで、月曜4限・9講で西洋史学(特殊講義)を受講される方、はじめまして。大阪大学の古谷です。2学期の短い期間ですがよろしくお願いします。この講義に関する情報は、この発言を適宜補足・修正することでアップデートしていきます。講義日程は以下のようにします。そのほかの講義概要については、PDFをダウンロードして参照ください。なお、講義ファイルの閲覧用パスワードは授業中にみなさんと決めた通りですので、予習・復習に活用してください。

講義概要をダウンロード

講義日程 10月19日 近世スウェーデンを検証する意義〜スコーネ論の講義ファイルをダウンロード

10月26日 バルト海世界とスウェーデン・イメージ〜グスタヴ2世アドルフ論の講義ファイルをダウンロード

11月2日 バルト海世界の国際戦争とスウェーデン国家〜(1)スウェーデン軍事国家論をダウンロード

11月9日(ドイツ・アウグスブルク出張のため休講)

11月16日 バルト海世界の国際戦争とスウェーデン国家〜(2)バルト海帝国論をダウンロード

11月30日 11月16日の続きでスウェーデン軍事国家論とバルト海帝国論を総括

12月7日スウェーデンに生きた者の自己理解〜(1)スウェーデン・ナショーン論をダウンロード

12月14日 (集中講義期間中につき休講)

12月21日 スウェーデンに生きた者の自己理解〜(2)スウェーデン・フォルク論をダウンロード

1月6日 バルト海世界とスウェーデン民族の創造〜ゴート族起源論と時空間認識をダウンロード

1月18日 学期末試験をダウンロード

2010年1月 8日 (金)

北欧史概説

金曜3時限に北欧史概説の授業に受講されている阪大生のみなさん!こちらに今年度の北欧史概説で用いる最後の講義ファイルをアップロードします。今年の授業は22日からになります。よろしくお願いします。

次週以降の講義ファイルをダウンロード

2010年1月 4日 (月)

プロアクティブな実践行為

僕の年頭所感に溢れる積極的な雰囲気は「プロアクティブ」という形容詞で一言にまとめられる。自発的・主体的という意味だけではなく、先を見据えた行動をとるという意味で「前向き」であるということだ。先を見据えた行動の方向性は今までの自分を取り巻く環境に対する客観的な省察から見いだされるものだから、そうした意味では「プロアクティブ」な行動は過去に対する「レトロスペクティブ」な認識を踏まえてはじめて成就すると言える。(前言の年頭所感も、そうしたことを踏まえて書いてみたつもりだ。)

例えば今、僕の手元にはイーモバイルのPocket WiFi D25HWというデータ通信端末がある。外出先でのネット環境を確保するために僕は1年半ほど前からイーモバイルのD11LCという端末を使い続けてきたが、このPocket WiFiはD11LCの使用をめぐる省察に基づいて新たに導入した端末である。確かにこの1年半ほど僕の国内における生活圏でD11LCはネット環境を確保する最終手段として重宝した。(とりわけ新幹線やバス・モノレールのなかでの通信手段として、イーモバイルは安価ながら高速・安定したネット環境を提供してくれるので、僕は傑出した選択肢だと思う。)しかしD11LCはUSBカードであるためにUSB端子の付属するラップトップPCでしか使えず、また1年半ほど前のモデルであるために理論上データ受信速度は3.6Mbpsに限られていた。実際の受信速度は1Mbpsも出ていなかっただろう…それでも便利だった。

これに対してPocket WiFi は無線接続のルータ機能を搭載したデータ通信端末である。ネットに接続させたい複数のデバイスを無線で接続できるという点がこの機種の先進的な特徴である。例えば僕が出張するとき、僕はMacBook AirとiPhoneを携帯する。ようやく一昨年に見いだすことのできたこれら道具の組み合わせは、この先しばらく変わることはないだろう。ただしこのネット社会にあってネットワークに接続されていないスタンドアローンな状態では、それらの道具の利便性は低減してしまう。これまで出先でネット接続する際にはMacBook AirのUSB端子にD11LCを鞄のなかから探しだして逐次接続させていたが、これが意外と面倒であったし、限られた通信速度にも不満があった。iPhoneは3G回線をもった携帯電話であるから、どこでもネットに接続できているようにも見えるが、僕の本務先である阪大箕面キャンパスにおいては、あろうことかiPhoneのキャリアであるソフトバンクの回線が弱い。ネットワークに繋がらなければ、iPhoneなど単なるシリコン音楽プレーヤに毛が生えたものにすぎず、僕はそんなものを必要としていない。箕面キャンパスでは最近ようやく一部の場所で阪大の無線LANネットワークが整備されつつあるが、それがキャンパス全域を覆うものとはなっていない。とりわけ僕の授業が行われている建物では皆無だ。

こうした時にイーモバイルの回線は、ネット接続を確保する最終手段となる。Pocket WiFiの最も便利な点は、鞄やポケットのなかにこの小さなルータ付き通信端末を潜ませておけば、パスワードなどの接続設定を済ませたデバイスを5台まで無線で常時接続できることにある。MacBook Airであろうが、iPhoneであろうが…はたまたiPod touchや旧式のPDAであろうが、無線LAN機能を搭載したデバイスならば、イーモバイルの回線が存在する場所ならば常時ネットワークに接続可能というわけだ。僕の書斎には、かつて一世を風靡したSigmarionやZaurusといったPDAが複数死蔵されている。数年前僕は、いずれ普及するであろう無線LANに基づくネットワーク・プラットフォームに対応することを夢見て、それらPDAの各々に無線LAN機能をおごってやっていた。しかし無線LANのエリアは早々には普及しなかった。おそらく今の日本という国にあって生活圏の大部分を覆うネットワーク・プラットフォームは携帯電話網しかない。数年前、イーモバイルはパケット・データ通信使用に対して明朗で安価な料金体系を設定した。そうすることで常時接続可能なネットワーク・プラットフォームが、ようやく僕らの前に提供された訳だ。しかしパケット通信のためのハードウェアが主にUSB接続タイプに限られていたため、数年前のPDAに対する投資は無駄なままだった。それがPocket WiFiの登場によってようやく生きる可能性を得たのである。

自宅でPocket WiFiを試用している段階では、コンスタントに2.5〜3.0Mbpsほどのデータ受信速度をたたき出している。従来のD11LCの倍以上である。そして何よりほぼスイッチを入れると即座に複数のデバイス(…現状ではMacBook AirとiPhone、iPod touchしか試していない…)がワイヤレスでネットに接続される簡便さに、僕は大きな満足を得ている。近いうちにイーモバイルはデータ受信速度の上限を理論値上21Mbps(…Pocket WiFiをはじめ、現時点でのイーモバイルの主力データ端末のデータ受信速度の理論上限値は7.2Mbpsである…)とする新しい規格へ移行するであろうし、日本や中国、台湾のメーカが作るラップトップPCなどは別の無線通信規格であるWiMaxを内蔵するものが多くなるだろう。Appleの作るラップトップPCやスマートフォンがWiMaxを搭載するならば話は別だが、少なくともPocket WiFiの契約が続くこれから二年間は、今あるMacBook AirとiPhoneの組み合わせで仕事を続けることになるだろうから、それならば現行のPocket WiFiで十分と僕は判断した。Pocket WiFiへ機種変更は、これから二年先までの状況を見越したプロアクティブな行動だったと言える。

な〜んて…正月早々Pocket WiFiへの物欲に負けた自分の購買行動を正当化するために、「プロアクティブ」というもっともらしい言葉を冒頭に掲げて、長々と文章を書いてみた。文章を書くというのは実にオモシロイ。単なる物欲ネタも、言葉を選べばもっともらしい論調で、したり顔で語ることができるのだから。というわけで新年早々の物欲ネタではあるが、今回の機種変更にかかった投資額を回収するために、仕事に精進せねばならないというのが現実である。

プロアクティブな年頭所感

あけましておめでとうございます。東に目を遣れば日韓併合から100年にあたり、西に目を配ればこの9月の総選挙でスウェーデン史上初の女性首班(モーナ・サリーン女史)が誕生するのかが注目される2010年を、僕は大雪の金沢で迎えました。最近はTwitterのような新しい表現手段もあり、2000年代初頭から普及しはじめたBlogという媒体も古くなりつつあると感じています。(教材の配布なども、最近は各大学のオンライン教務システムでできるようにもなってきました。)

十年一昔とよく言いますが、昨年末モノ好きな僕にとってとても面白い記事を読みました。「この10年を定義づけた10のガジェット」という記事です。そこで紹介されているモノは、懐かしいモノばかりです。10年前に僕は東大大学院を休学して、ルンド大学歴史学部へ留学しました。(昨秋久しぶりに本郷に訪れたときに、本郷で生活していた期間よりも大阪で生活している期間が長くなったことに気がついたきには愕然としました。)この記事の筆頭に紹介されているキャノンのデジカメは初代IXY digitalで、隆盛を極めているコンパクト・デジカメの流れを決定づけたカメラです。10年前、妻と一緒にルンドへ留学したときにカメラ好きの妻はこのデジカメを使っていましたし、ルンドへ遊びに来てくれた東大西洋史以来の友人Yくんもそれを持参してました。IXYを持参しながら、3人でスコーネをドライブした思い出は忘れられません。翌01年春に僕は大阪外大に着任しましたが、そこにいらした東大西洋史の大先輩であるHさんが、この記事で2番目に紹介されているPowerBook G4(Titanium)を導入されており、それをうらやましく思いながらHさんのお手伝いをさせてもらったことを懐かしく思い出します。PowerBook G4(Titanium)のプロダクト・デザインのコンセプトは先進的で、AppleのハードウェアがIntelプロセッサ基盤へ移行した後も現行のMacBook Proへ至るまでそのデザイン・コンセプトに大きな変更はありません。この記事の3番目に紹介されているWindows XPは今でも大学各所で運用されているOSであり、現在のネット社会におけるパーソナルな領域を確立するに多大な貢献をなした基幹ソフトです。パーソナル・コンピューティングが一般的になって以来、これほど長く使われ続けているOSはないのではないでしょうか?ルンド大学に留学していたとき、歴史学研究所のシステム・アドミニストレータ的存在だった友人Rと、「ダイスケ、Windows XPのXPっていうのは、どういう意味か知っているか?Windows Expensiveだぜ。」とMac愛好者同士、冗談を言い合っていたことも懐かしい思い出です。

こう思うと、僕の生活をめぐるプラットフォームは10年前に定義づけられていて、今でもそのプラットフォームの上で僕は生かされているように見えます。昨年末に事業仕分けの対象になった大学関連予算をはじめ運営をめぐって様々な問題が山積する大学についても、考えてみれば10年以上前からこうなることが定義づけられていたプラットフォームだったと言えなくもありません。しかし2000年の僕と2010年の僕とでは、そうした大学というプラットフォームで生かされた結果、仕事の内容に激しい変化を経験して結果的に物事の考え方や感じ方が変わりました。確かに人はプラットフォームの上で生かされているのですが、そのなかで成長とでも言うべき変化を経験します。その変化は所与のプラットフォームに順応しようとする場合もあれば、適応障害を起こしてしまう場合もあるでしょう。そして、そうした変化をめぐる経験から次の時代を切り開く新たなプラットフォームを生み出す変化が出てくる場合もあるでしょう。僕たちの生きている社会は、人の変化を梃子にするからこそ静態的ではなく、動態的でありうるのです。だからこそ、十年一昔に定義づけられたプラットフォーム上で自分は受動的に生かされていると「後向き」に思うのではなく、自分自身の変化を明らかな証拠としつつ能動的に生きているのだと「前向き」に思いたい。

それでは、プロアクティブな新年を!

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