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2009年10月22日 (木)

rikeとvälde〜複合国家論のおもしろさ

気分転換に知的欲求のおもむくままの文章を。近世ヨーロッパにおける複合国家論のおもしろさは、単に様々な政体が一人の国王の統治のもとにモザイク状に寄り集まったという点を指摘することにあるのではなく、国家主権が及ぶ範囲をして領域と考える近代以降の整合的な国家概念ではとらえられない、近世に独特な様々な国家(秩序)概念が複合するところにあると思っている。某所で「ドイツ語におけるReichの語源がres publicaにつながる」と聞いてから「そうかなぁ?」と気になって(あらためて)近世スウェーデンにおけるrikeについて頭のなかを整理していた。近世スウェーデンの国家表象の概念としてスウェーデン住民たちによって自発的に用いられた事例を紐解くと、まれに本来のres publicaの意味から離れて伝統的なスウェーデン国制にはみられない政治体制を言うときに"ipse status seu respublica"といったような言い方が見られるものの、例えば"Sveriges republik"といった言い方は管見の限りお目にかかったことはない。(近世スウェーデンにおいて"res publica"は、Gemeinwohlやcommonwealthと同じようにgemna bästaとされていた。)実際に彼らが生きていた国家を呼称する際には、例えば"Svea rike"といった用例が一般的であり、その際のrikeとは、近世スウェーデンに生きた住民が自らの政治的行動の規範と根拠を中世スウェーデンの国法に求めたことからも、ラテン語で言うところのregnumに近似するものだろう。(面白いのは、中世以来のregnumに即しながらも集約的な資源動員システムとしてのstatを構築しようとしたグスタヴ1世ヴァーサが行政語としてスウェーデン語を導入しようとした際に、regnumに政治表明の根拠を求めていくスウェーデンの住民たちがスウェーデン語を拒否してラテン語を持ち上げたりしているといった事例が見受けられることだ。福音主義ルター派教会におけるスウェーデン語の導入に対しては、16世紀前半にあってラテン語の賛美歌を歌うなどしてスウェーデン住民は自己表明していたらしい。)そのように考えるとrikeの範囲として考えられていた部分は、例えば全国身分制議会への議員選出が認められていた範囲(スウェーデン・フィンランド・スコーネ)であったことからもわかるように、自らの立ち位置を保障する根拠になったスウェーデン国法の適用された範囲だということになる。ドイツ語におけるReichは今ではかつてのように「帝国」と邦訳されることは少なくなったと思うのだが(…どうだろう?…)、スウェーデン語におけるrikeは、この場合「王が統治する国」という意味ではなく、「王が統治する」という慣習も包括するスウェーデン国法の伝統が適用されている法域としての「王国」と理解したい。このように考えるならば、近世スウェーデン王権のもとに服することになった地域でも、国法が適用される地域とそうでない地域では国家(秩序)を示す概念が異なってくると容易に想像してもらえるだろう。ヨーロッパでは特定権力の保護下に包括された広域秩序圏についてimperiumというラテン語の概念があり、そのスウェーデン語訳はrikeないしväldeとされるが、以上のようなregnumとrikeの近似性を考えるならば、rikeとväldeは厳密にわけて考えなければならない。例えば、1587年にポーランドからシギスムントをスウェーデン王に招く約定がカルマルで取り交わされたとき、「二つのrike(regna)が一人の王のimperiumに服する。」と言われた。そこにみられたimperiumが王の統治権といった意味で用いられていたことから敷衍するならば、近世スウェーデンが築いたバルト海世界の広域支配圏は、スウェーデン王のimperiumの下にあった政体の複合ということになり、それこそがスウェーデン語でいうväldeという概念になる。それゆえ、スウェーデン国法が適用されていたrikeと、それが適用されない独自の政体も含まれることになったväldeが示す範囲が異なることは明らかだろう。スウェーデン王のimperiumの根拠がどういったところに置かれたかは今後の検討が必要だが(…16〜17世紀にかけて、スウェーデン王の統治下にはいったそれぞれの地域の事情によってその根拠は様々に定義づけられていただろう…)、近世スウェーデンの地平から見る複合国家(konglomeratstat)とは、そうしたväldeを対象とした方法概念だとここでは定義づけたい。というわけで、僕は腰を落ち着けてそうしたことをじっくりと勉強したい…ので時間をくれ!くれ!くれ〜!

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