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2009年5月 8日 (金)

モードの切り換え

(先の発言が長くなったので、別項を立てました。)Erasmus Mundusの授業を乗り切った僕は、灰色の脳細胞のモードを教育から研究へと完全に切り換えている。こちらでの研究活動は、かつてこのブログでぶちあげた「リンネの帝国」にむけた作業に集中している。とりわけ先月来、大北方戦争以降の啓蒙期における帝国再編の理念的過程を追う目的で、ウップサーラを中心に活躍した知識人の歴史叙述と地理叙述に着目し、この時期における一般的「スウェーデン」理解と人的・物的資源を準備するスカンディナヴィア理解がどう結びついているのかを、あれこれと考えている。

(資源供給の母体はスカンディナヴィアの自然環境だが、その把握方法は現在の我々のものとは著しく異なり、大北方戦争の敗北以降、「スウェーデン」再建という目的に意識的・無意識的に結びつけられながら、「語られている」…ように僕は思っている。近世における伝統的な「スウェーデン」理解の代表例が、ウップサーラの場合にはゴート主義だけれども、「ゴートの末裔に神が与えた楽園」を根拠づける目的でスカンディナヴィア叙述が用意されている…ように僕は思っている。理念的には、「スウェーデン」民族の特殊性を主張するための叙述戦略として意図的なスカンディナヴィア叙述が用意されている現実的な背景には、大北方戦争以降の国家再建の過程で経済資源の基盤を理解するという目的があった…ように僕は思っている…。)

そのようなことを考えるなかで、2年前から僕は同僚と「近世ヨーロッパ周縁世界における「帝国」再編」というテーマで科研を進めていて、スペイン継承戦争・大北方戦争以降のスペインとスウェーデンの再編過程を比較してもいる。ここのところ、その科研の知見を踏まえるならば、「リンネの帝国」では、スウェーデンの地平からスウェーデンを語るだけではなく、他者の視線からスウェーデンがいかに語られていることも触れるべきじゃないか…という思いを募らせるようになった。というのも、ウップサーラで手にする資料のなかには、宗教的枠組みを超えた啓蒙期におけるスペインとスウェーデンとの間の交流を裏付けるものがあり、対他知のなかに浮かび上がる「スウェーデン」像を明らかにできるのではいかと思っているからだ。例えば、昨日授業を終えて読み耽っていた資料も、そうしたものだった。

例えば、リネーの弟子を通じてスペイン(…無論、アメリカ植民地も含む…)もまたリネー学派の世界叙述のなかに含まれている。イベリア半島へはP. ルーフリングという弟子が渡った。彼はラテン・アメリカへの探検事業を企て、27歳の若さでヴェネズエラで死んだ。公的にリネーのウップサーラ大学における地位を引き継いでいくのは(小リネーを介して)テューンベリになるのだけれど、ルーフリングはリネーの最もお気に入りの弟子とされ、リネーは"Iter Hispanicum(スペイン旅行記)"として最愛の弟子の記録を自ら編纂、出版したほどだ。また、スウェーデンに蓄えられた知見は、スペインで言えばカルロス3世の啓蒙専制期における改革事業にも活かされている。改革事業を主導したカンポマーネスらは、国内産業の振興を図る目的で、各地に"Real Sociedad ○○ de Amigos del País(…○○祖国の友経済協会…Paísの訳は祖国で良いのかな?…○○地方経済同友会かな?…)"という団体の創設を後援したが、近代以降、鉄鋼生産で知られることになるバスク地方に創設された祖国の友経済協会では、(…富国強兵・殖産興業ではないけれども…)軍事力再建をも目的に、鉄を活かしたスウェーデンにおける軍需産業の知見を導入して産業振興が図られた…らしい。

こうした啓蒙期スペインにおけるスウェーデン受容のあり方を見るならば、スウェーデンが単なる北方のプロテスタントの小国としてとらえられていたのではなく、少なくとも博物学と軍事技術の面で一目置かれていた姿をあぶり出せる…と思わない?ただしスペインとスウェーデンとの関係においては、ゴート主義が媒介する近親関係を無視するわけにはいかないだろう。そもそも、P. ルーフリングの件も、バスク祖国の友経済協会の件も、僕が近世ヨーロッパにおけるゴート主義の展開を追うなかで知り得た事例なのだから。先月のSystembolagetについての発言でも書いたことだが、ここウップサーラでの物思いは不思議と「世界」をめぐるものとなる。(…自由な時間があるから、妄想癖がぶりかえしたのだろう…と突っ込まないよ〜に。)

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