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2008年5月22日 (木)

近世スウェーデンの"politik"概念について(ゼミ補遺)

ゼミなんですけれどもね、スウェーデン史も、デンマーク史も、近世女性史関連の論文、議論白熱しています。僕が一人で興奮しているだけでしょうか?いえいえ、学生のみんなもしっかりと議論に食らいついてきてくれています。例えば、豊田さん、コメントをありがとう!「警察のpoliceとの関係は?」とは、とても良い点に気がつきましたね。先生、とっても嬉しくて、座布団を10枚くらいあげたい気分です。スウェーデン史ゼミのCharlottaさんの論文ですが、さすがに気鋭の若手研究者ということもあって、女性の「位置づけ」などを前面に出すのではなく、近世ヨーロッパに独特な政治文化のあり方を論ずる雰囲気に溢れています。昨日は概念史的手法を踏まえて、スウェーデン語で"politik"とあらわされる概念についてゼミで熱く議論していました。

"politik"を現代スウェーデン語・英語辞書の意味の筆頭にある「政治」と単に訳してしまうのでは、近世スウェーデン(あるいは近世ヨーロッパ)で共有されていたその概念イメージからかけ離れてしまうでしょう。従来の女性史研究は、「国家・政府が提供した政治的枠組みから外れ、そうした枠組みに参画する正統的権利をいかに獲得してきたのか」という、いわば「上からの視点」を先験的に内在した問題関心にたって進められてきた経緯があります。もし"politik"を単に「政治」と訳し、しかも「政治」という言葉を近代的な意味でとらえてその意味を近代とは異なる近世に適用してしまったならば、この"politik"に女性が制度的に参画する余地は近世という時代にはほとんどなかったということになってしまうでしょう。

近世における"politik"概念は、フランス語に言う"politique"を考えてもらえばわかりやすいと思うのですが、ある「関心」を共有する者が「深慮」して「知謀」をめぐらし、その実現にむけた「方法」を議論するなかで生みだす「紐帯」といったイメージで語られていたものです。「関心」、「知謀」、「方法(→いみじくも近代ヨーロッパ哲学の父と言われたデカルトが『方法叙説』のなかで近代的思惟の4つの規則的方法を論じましたが、デカルトの言う"méthode"もある意味、近世における"politique"概念を踏まえたものだったかもしれませんね)」、「紐帯(→公的なものに限らず私的なものも含めた政治形態という意味まで含みます)」といった意味が、"politik"には含まれます。「関心」に対して「知謀」をめぐらし「方法」を論ずることは男性だけでなく、女性も普通に行うわけですし、そうした「関心」に対する「方法」を論ずる「紐帯」としてはサロンをあげるまでもなく、女性も参画するものがあったわけで、このようなイメージで"politik"をとらえればこそ、近世という時代における"politik"への女性の参画も十分に理解できるわけです。

ところで、豊田さんからあげられた”police"との関係は、ブログで論じるには問題が深すぎます!本来ならば、「警察」と現在訳されている言葉に入り込んできているドイツ語に言う"Polizei"概念の歴史的展開を論じなければならないからです。これはこれで重大な概念史・国制史・法制史上の問題で、それこそ数多くの研究者が取り組んできたテーマです。(来週のゼミでそうした研究史上の話は補足しましょう。)僕は門外漢なのでそうした点を理解してもらって読んでもらいたいのですが、今この場で簡単に"Polizei"概念のイメージを説明するならば、「公共体の善き秩序を維持すること」というくらいのものになるでしょうか。この概念はよく近世のドイツで発展したものとして知られていて、この概念を基としながら「公共の秩序維持」を目的に、警察だけではなく、風俗や衛生、教育、経済など、多方面にわたって社会生活を律する法令が出されました。僕たちの時代には「警察」というイメージだけが強くなっていますが、それも「公安の維持」という"Polizei"概念の一部から派生したものと言えるでしょう。"Polizei"概念では「公共の維持」が前提になっていますが、「公共の維持」という「関心」を持った者が「知謀」をめぐらした「方法」という意味では、近世という時代にあって"politik"や"politique"概念と思想的な水脈を一にしていたと言えるかも知れませんね。

ね。こんな感じで、僕らの学部ゼミ、なかなか面白そうでしょう?

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