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2008年4月19日 (土)

IKEA雑感

今週月曜日に神戸ポートアイランドにオープンした大手家具店IKEAへ家族と一緒に行ってきました。IKEAの日本への出店は船橋・港北と続き、東京近郊が先んじていましたが、関西圏への進出は神戸が最初になります。朝の8時に豊中を出て電車を乗り継ぎ開店30分前の9時30分に着きましたが、すでに行列ができています。ドえらい人気です。並んでいると、子供に尋ねられた父親が「イケアって「池」やねん。」と答えているとか、「イケアへ「行け」や!」とかいうダジャレが聞こえてきました。さすがは関西圏のノリです。そこではじめに言っておきます。IKEAは、日本ではスウェーデン語風にイケアと呼ばれていますが、英語ならアイケアですよね。そうそう、僕のゼミ生がかつて調べてくれた話によれば、IKEAの語源は、創業者のIngvar Kampradさんのイニシャルと、イングヴァルさんの故郷の農場(Elmtaryd)と町(Agunnaryd)の頭文字をとったものですから!


一応、我が国でスウェーデンのことにかかわりながら生きている人間としては、自分の教え子たちが一生懸命働いている(…僕がゼミなどで直接指導した卒業生が大阪外大からも、関西外大からも就職しているし、アルバイトも含めたら、わからない…)このIKEAに関して、価値判断を下すことは、例えブログであっても控えるべきなのではないかと思っています。だから、ここから先の発言はたんなる感想として読んでください。


今回、関西圏で初出店されたIKEAに行ってまず感じたことは、「これはスウェーデンのIKEAそのものだ。」ということ。建物のつくり、とりわけ2階に上がって1階におりてくる経路、そしてその経路に合わせた買い物の仕組み、経路沿いに取り扱われている商品…なにもかも、スウェーデンにあるIKEAそのものがそのまま日本にやってきたという感じ。僕の妻が言うには、僕たちがスウェーデンへ留学して以来、その後何度も訪れているスウェーデンのここ数年の商品そのままだそう。例えば、今回僕は999円くらいで売られていたデスクスタンドを購入したのだけれども、それなど僕がマルメーのIKEAで購入しようとしていたものの、電圧やプラグの問題から購入を断念していたものらしい。(そんなことすっかり忘れていてまた手に取るとは…というか、妻の記憶たるや恐ろしい。)そして、店内に溢れるスウェーデン語。商品名やパッケージ、おそらく今の日本のなかでここまでスウェーデン語が溢れている空間はほかにはないでしょう。(というか、非日本人系の店員さんはみんな日本語が流ちょうでスウェーデン語なんて話す必要など全くありませんでしたが。)


僕は今回家族とIKEAに行って、開店直後真っ先に他の商品など目もくれず、一目さんにレストランへと走りました。そこで売られていた肉団子やビールなどは完璧にスウェーデン・スタイル。例えば、肉団子。ブラウンソースだけならまだしも、苔桃のジャムまで添えられているではないか!日本ではまだ知られていない…というか忌避さえされそうな肉とジャムという食のスタイルを、よくぞ再現してくれました。あのレストランへ行ったら、とりあえず食事は肉団子のプレート、デザートはプリンセストルタ、それにコーヒーを頼めば、それで十分スウェーデンの食事でしょう。それにね、ビール。まさか、スペンドゥルップスのオールドゴールドを日本で飲めるようになるとは思わなかった。(うれしくて、思わず3本も飲んでしまいました。ついこの間のストックホルム滞在の際にしこたま飲んできたばかりではないのか?という突っ込みはなしにしてください。)スウェーデン・ビールの銘柄の豊富さは以前も発言したことがありますが、今回のIKEA出店で例え一銘柄だけであっても、スウェーデンではとてもポピュラーな(そして個人的に上手いと思う)スペンドゥルップスのオールドゴールドをそのまま販売したというのはすごい。そのままと言えるのは、例えばスペンドゥルップスのオールドゴールドの場合、ラベルを見ればちゃんとスウェーデン国内でのビール等級表示である"KLASS III"の表記まであることからわかります。


今回のIKEAがほぼ完璧にスウェーデンスタイルを日本にもちこむことに成功しているのは、今回は「イケア・ジャパン」という法人が直接スウェーデンと日本との間をとりもって経営しているからでしょう。直接だからこそ、ややこしい日本市場独特の慣行から逃れられ、日本市場の旧弊に飽き飽きしていた人たちを惹きつけているといった感じでしょうかね。近年の北欧ブームの背景の一つには、そんなものもあるかもしれませんね。日本の商社や百貨店などをかませて「日本市場」を念頭に置いて失敗した1970〜80年代の「イケア日本」の経験をよく踏まえていると思います。(ちなみに伊丹空港や心斎橋、京都烏丸などにあるアクタスは、かつての「イケア日本」を継承してできあがっていったものです。)


経営のことはよくわかりませんが、僕などはスウェーデンのIKEAそのままを体験できるので、今回のIKEAは興奮もの。より正確に言えば、スウェーデンで売られている家具や雑貨だけでなく、スウェーデンの食料なども含めて、「トータルなスウェーデンライフはこんな感じなのですよ…日本のみなさん、うらやましいでしょう?」的なイケア・ジャパンの戦略に見事はまってしまったという感じ。(弱くなった日本円の結果、さらに「安さ」を感じられる値付けには、多くの日本人がやられてしまうことでしょう。)そうした戦略に対応して日本風にアレンジされている戦術だな…と感じた部分は、例えば会計が終わった後の土産物コーナ。これは、スウェーデンのIKEAにはないところ。でも、スウェーデンの食文化を代表する品々が絶妙にセレクトされて売られているのには、涙しましたね。上述したスペンドゥルップスのビールはもちろん、アルコールではプンシュ(…神戸のIKEAではアクアヴィットはみかけませんでした。日本アクアヴィット協会の設立を目論む者としては拍子抜けしましたが…)、食糧では酢漬けニシンに、チーズに、肉団子など(…夏が来ればシュールストロミングまで揃いそうな勢い…)、菓子ではバレリーナに、ケックスに…それに僕がいつもスウェーデンへ行くと口の中で噛み噛みしているレーケロール(ふふ、もちろんオリジナル味さ!)に、「世界一不味い菓子」の異名をとるサルトラクリスまで。(サルトラクリスなど、レジで会計する際に「こちら、大丈夫ですか?」と念まで押されました。あの不味さからすでにクレームでもあったのでしょうか?大丈夫ですよ、僕の味覚は慣れてますから。)


肝心の品については、上述したように妻の発言によればここ数年のIKEAの商品そのもので、「混じりっけは一切なし。」一度行ったことのある人なら誰でも感じることでしょうが、とにかく安い。けれど「安かろう、悪かろう」ではなく、安くても機能性とデザインセンスは高い。(…かつてのスウェーデンでの生活でよく覚えているのは、IKEAの電球だけは弱かったな…。)IKEAは自社独自にデザイナを雇って商品開発をしたり、独自のロジスティクス網をもっていて、そうしたことが可能なんですね。


自分自身で品を運び、組み立てる労力さえ厭わなければ、誰もが安価に機能的な生活を平等に送れる。ですから、僕がIKEAを訪れて思うのは、IKEAという本来貧しいスウェーデンの一農村から出発した企業は、20世紀初頭に出てきた機能主義の思想のなかでも、本来構想されていた社会思想そのものを具現化させた一大媒介者のように思えるんです。少なくとも、IKEAの歴史はスウェーデンにおける福祉国家発展の歴史と軌を一にしていますから、その企業精神は常に20〜21世紀スウェーデンの裏返しと見ることもできる。貧困の平等な克服、規格化されたライフスタイルの徹底、最近では環境問題への取り組みなど。規格化されたライフスタイルの徹底による生活水準の上昇を考えたとき、それゆえにIKEAでデザインされ販売されている商品の数々は、生活重視の立場から企画化されていることを実感できる。だからこそ、今様スウェーデンの生活の基盤を知りたければ、IKEAにある商品の一つ、一つからまずは感じ取ってもらえるのではないだろうかと思っています。つまり、今様スウェーデンを知る一つの教材としてのIKEAってことですね。


だからこそ、今回の出店にあたってIKEAが下手に日本風にアレンジされてなくて良かった。(ん?店員の丁寧な接客は日本流かな。)これからは、スウェーデン専攻に来る学生には「まぁ、IKEAでも行って、まずはスウェーデンをみつけてこいや。」と言えます。それに、スウェーデンの料理や酒や生活ってものを手軽に紹介しようとするならば、IKEAに連れて行けばそこでスウェーデン直輸入のものを日本で簡単に見つけられるようにもなりましたし。(スウェーデンへ出張しておみやげを買い忘れたら、IKEAへ行けば良いという話もある。)問題は、あのあまりもの混み具合。入店するまで2時間、3時間待ちは当たり前みたい。(朝一番で行っておいて正解でしたが。)安価が日本人を呼ぶのか、デザインセンスが日本人を呼ぶのか…それともスウェーデンということが日本人を呼ぶのか。まぁ、3番目はほとんどないと思うのですけれど、それでもはやく混雑ぶりが緩和されて、誰もがアクセスしやすい状況になってもらいたい。


でもね…スウェーデンで生活していると、どこの家庭でも、家具やテーブルウェアなどがみな同じIKEAのものっていう状況があるんですよ。それすなわち正直に言えば、「これぞIKEA流覇権主義!」といった感じ。今はまだ日本でIKEAが伝えるスウェーデンライフは物珍しいものだから、IKEAで売られている物を揃えることで自分の部屋を個性的にしようと考える人の気持ちをIKEAは成就できるでしょう。けれどもやがてIKEAが定着することになれば、誰もがIKEA製品を使う状況で消費者は自らの個性を満足させられず、ライフスタイルの大部分をIKEAが占有し、それを牛耳ることになります。IKEAを舞台とした平等と個性の対立、あるいは平等による個性の侵害。貧困を克服しようとした際に国民生活を規格化して乗り切った手法が、ある意味、IKEAスタイルの核心だとも言えるわけで、IKEAの徹底した実用主義はその反映でしょう。そんななかでもIKEAは、規格化されているという意識を消費者に与えないように、デザインセンスへの配慮によって「他者と差別化できている」という幻想を大衆に植え付けることによって個人の欲求を満足させる手法をとっている。そんなIKEAの経営モデルは、日本の企業にも参考になるでしょうね。贅沢を知りつつも生活格差が広がって疲れてしまった日本社会に、このIKEAがどこまで定着するのでしょう?意外と普及しそうかな。そんなことを考えていると、肉体的な疲労感は知的な好奇心へと昇華されていきます。


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コメント

丁度ぼくもスウェーデン人の友達とIKEA見に行きましたよ!
ただ13:30に行って2時間待ち、1時間後にも様子を見に行きましたが3時間待ちになってました・・・
足も悪いんで結局諦めてしまいました↓

詳細楽しみにしてます!

僕も先週水曜日に行ってきました。
当然のごとく混みまくっていたので、今回はレストランは断念しましたが、やはりジャムを添えた肉団子を食べられるのですね!次は必ず行きます。

個人的に気になっているのが、夏にオープンするというIKEA大阪。神戸ではIKEAは今後もイケるでしょうが、大阪でははたして・・・?丁と出るか、半と出るか。

いずれにしても、当面IKEAからは目が離せません。

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