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2008年3月 2日 (日)

「リンネの帝国」への旅

明日から13日までストックホルムとウップサーラへ史料調査へでかけます。これは、まさに「リンネの帝国」へ向けての旅です。数名の方から「リンネの帝国」とは何かという質問を受けました。これは僕のモノグラフ整理へむけた構想段階の産物ですが、よい機会なのでこの妄想めいた構想をここに整理しておきます。

(1)博物学者・植物学者として知られているリンネは、17世紀後半からウップサーラ大学に保たれた知的風土から生まれたと言えます。これは、バルト海帝国と通称された近世スウェーデンの統合理念として、ウップサーラ大学のルードベック(リンパ系の発見者としても知られています)によって体系化されたゴート主義の知的風土から出発していると言えます。リンネは若き日に、スカンディナヴィア半島南端のスコーネや北極圏のラップランドへ探査旅行を行いますが、これは北の世界における「スウェーデン」の自然風土の特殊性を博物学的視点から解明するためのものでした。(「北」の世界の特殊性を近世に見るという話はこのブログでも発言しましたし、これまでゴート主義ということで調べていたものです。)


(2)リンネの議論は、大北方戦争敗北後のバルト海帝国再編の時代にあって、「祖国」に動員可能な人的・物的資源を把握するという点から、政治経済学の分野に資する客観的な自然・社会の情報集積という役割を担いました。(「帝国」再編の問題は現在科研で取り組んでいるテーマですが、近々公にされる『歴史的ヨーロッパの政治社会』の後半において、政治経済学における帰属概念の展開を整理しました。)このようにリンネの世界観は、バルト海帝国におけるスウェーデンの特異性を正当化し、18世紀における帝国経営上必要とされた情報を収集すべく総合的に集積された結果だったと僕は考えているのです。

(3)それら経験の総合として完成されたリンネの世界観は、一般的には啓蒙ヨーロッパの思潮を代表するものとして知られ、彼の弟子の活動や彼自身の著述のなかにアメリカや日本も含むことで「世界」を包括しています。リンネの世界観はグローバルな啓蒙という観点から概説されますが、しかしリンネの「グローバル」が意味するところ、それは我々が理解するグローバルとは異なる基準、すなわちバルト海帝国における「ローカル」な論理(ゴート主義や政治経済学)に依拠した「グローバル」な世界把握だったというのが大凡の見通しです。

「リンネの帝国」にむけて、ゴート主義や政治経済学などの個別研究は30代半ばまでに行ってきましたが、北米にむかったカルムや日本を訪れたトゥンベリなどの弟子の活動を踏まえたスウェーデン発の世界観の拡張についてが今後の課題です。リンネの研究は科学史上は知られるものですが、その世界観あるいは彼流のeconomyのあり方を近世スウェーデンに独特な政治文化から読み解く研究はこれまでになく、おそらくそれを行うには17世紀から18世紀を一貫するバルト海帝国の存在を背景に置かねばならぬのであり、ここにきてリンネを研究の統合軸にもってくることで、ようやくマイケル・ロバーツなどとは違う、僕なりのバルト海帝国論を整理できそうな気になってきました。

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