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2007年8月13日 (月)

レイキャヴィーク雑感

レイキャヴィークに滞在して、アイスランドで消費生活を送るということがどのようなことなのか、はじめてわかった。こちらのアイスランドクローナによる値付けの感覚は、日本円によるそれに近い。けれども、現在、1アイスランドクローナはおよそ2円のレートだから、日本円の感覚で消費生活を送ると、あっという間に実質数千円や数万円を使い果たすことになる。

(一昨日、レイキャヴィークに最近できた巨大なショッピングモールへ行き…まずそこへ向かうバスの運賃がおよそ500円強というのに驚いたが…、さらにそこに入っていたアップル・ストアで MacBookやMacBook Proの値段を見て驚いた。クローナで見ると日本円と変わらない数字が付けられているけれども、それは実質2倍。例えば、MacBookは、およそ30万円弱で売られていることになる。)

日本円で給料をもらっている人間にとって過酷に見えるレイキャヴィークの生活は、それでもとても快適なもの。今回は、レイキャヴィーク中心街のランドマークになっているハットルグリム教会にほど近い街区にフラットを借りた。レイキャヴィークの中心街はとても狭く、一時間もあれば歩き回れてしまうほどで、散歩するにも、買い物するにも、人が生活するにちょうど良いといった大きさだと思う。

学会の開催されたアイスランド大学(…その本部講堂は、ハットルグリム教会や国立劇場と同じく、大陸からアール・ヌーヴォーやアール・デコといった様式を紹介した20世紀アイスランドを代表する建築家Guðjón Samúelssonの手によるもの…)までは、町の中心に位置する公園を抜けながら歩いて通う。中世以来のサガ文学と写本文化の遺産を現代に重視し、ある意味、「人文学」立国を実現しているアイスランドでは、この大学周辺が文教地区で、国立博物館、本部講堂、アルニ・マグヌッソン研究所といった施設が集中している。今回の学会は、そうしたアイスランド大学の人文学系施設を会場にして開催されたが、会場となった教室のいずれにも無線LANと個別のACプラグが用意され、学会のノート取りも資料閲覧もすべてその場にもちこんだラップトップで可能だった。しかるべき技術に裏付けられた「人文学」立国の姿。これに比べると、いずれの点も日本は中途半端に過ぎる。

日本に流布しているアイスランドへの人文学的知見と言えば、ヴァイキングや北欧文学といった事実に集中している。けれども、そうした知見だけではレイキャヴィークを知るには無理があるだろう。例えば、レイキャヴィークを代表する美味は、Pylsaと呼ばれるホットドッグと、デーニッシュ・ペーストリーだ。デンマークの食文化に関心のある人ならば、すぐにこの両者が本来デンマークで有名であることに気がつくだろう。(ただしアイスランドのPylsaは、デンマークのPølseとは若干異なり、パンのなかに刻んだ生タマネギとからっと揚げたタマネギのフレークを敷き詰めた上にソーセージをのせ、さらに若干甘めの味付けのマスタードを塗って食べる。)

国民主義的な見地に立ったアイスランドの概説史を読めば、カルマル連合あるいは宗教改革以降20世紀半ばまで続いたデンマーク統治時代は、自治の失われた「暗黒時代」ということになっている。けれども、現在のレイキャヴィークの礎は、少なくとも17世紀のデンマーク絶対王政下における重商主義政策のなかで推奨された羊毛産業の導入にある。そして、レイキャヴィークの本格的な発展は、やがて17世紀末から18世紀にデンマークによるアイスランド地方行政の拠点がそこに本格的に整備されたことによる。従って、ことレイキャヴィークに限って言うならば、近代デンマークの統治を知らずして、その発展は語れない。

ハードな学会のセッションを終え腹を空かせつつも、アイスランドの物価の高さに頭を抱えながらレイキャヴィークをぶらつく僕は、頬張ったPylsaの美味さのなかに期せずしてレイキャヴィークに残るデンマークを感じ、そこに「救い」を見いだした。

 

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