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2007年3月 7日 (水)

北極圏から見るバルト海帝国

完徹二日目…そろそろ三日目に突入か?!意外といけるもんです。昨晩から取りかかった研究報告は、「世界遺産が語るバルト海帝国」というテーマで、軍事国家やら、複合国家やら、抽象概念を振りかざして論じられるバルト海帝国(という、これまた抽象的存在)を、世界遺産という今に伝わる歴史の現場を通じて考えてみると、具体的に何が見えてくるのかを論じちゃおうとする、少々野心的な取り組み。書き始めたら、筆が止まらなくなって、今もなお執筆中。締め切りはあと数時間。

いろいろと検討した項目はあるのですが、今回の新機軸は、バルト海帝国の複合性を論ずるために、スウェーデン北端の北極圏に位置するノルボッテン地方を対象の一つに選んでいるところですね。従来、バルト海帝国を複合国家として理解しようとする場合、その研究の対象は、バルト海帝国の版図の中でも、スカンディナヴィア半島南端のスコーネ地方やバルト海東岸のエストニアなど、近世以前はスウェーデン王権に服属することなく独自の政治・社会秩序を有していて、スウェーデンと対立するデンマークやロシアとの境界を接した地域に置かれてきたわけです。

そこを北極圏の世界から論じちゃおうという逆転的発想のきっかけは、たまたまそこにルーレオのガンメルスタード教会集落とサーミ人地域という二つの世界遺産があるからなんですが、ルーレオが南方から植民してきたスウェーデン人の町である(都市自治の特許状が与えられたのは、グスタヴ2世アードルフから1621年のこと)のに対して、サーミはスウェーデン・フィンランドという南方からの入植者によって追いやられた者たち。この対比が、バルト海帝国の時代にとりわけ明確なんですよ。

近世におけるスウェーデン王権は、(まぁ、この当時の税は物納が原則なんですけど)それまでサーミからトナカイのような家畜そのもので税を支払わせていたのに対して、すぐに西欧市場に移送して換金可能な毛皮や乾物(鮭など)といった商品化された物で税を支払わせるようになる。これは大陸での戦争に資金が必要だった王権としては必要な策だったろうけど、自給自足の生活を送っていたサーミからすれば、毛皮や乾物なんてたくさん作ったって自分の生活に必要ない商品作物だから、彼らの生活基盤がそこらへんから崩壊し、変質していくんですよ。

一方で、ノルボッテン地方へのスウェーデン系の入植者は、1673年に徴税・徴兵を免除される特権が認められ、これを機にグッと北方への進出が拡大する。で、1695年には、物納による納税はかわらないのだけれども、サーミへの課税方法が集落ごとの財産に応じて決定されるようになっていくので、サーミは一部だけど定住が求められるようになる。そして、スウェーデン系の入植者と定住化をはじめたサーミは経済関係を軸とするならば融合していくといった感じ。バルト海帝国の経験を通じて、スウェーデンへと同化させられていった事例は、南方のスコーネ地方の「スウェーデン化」論が有名ですが、北極圏の場合にも、こうした同化過程が確認できるんですね。

でもって、現在のサーミ・アイデンティティに根ざした世界遺産としてのサーミ人地域ってのは、逆説的だけれども、言語などを基準としたヨーロッパ・ナショナリズムの論法をサーミ人が後年摂取して作られていったものですね。だって、サーミはもともとは現在のサーミ人地域などより、ずーっと南方の地域までが生活圏だったのですから。

ルーレオという町は、キルナなどで鉄鉱石採掘が本格化する19世紀末以前は、こうしたサーミからの漁業資源をステープルとして南方のストックホルムなどへと輸出する港湾市として重要でした。だからノルボッテン各地から人が集まるようになる。これを宗教面で見た場合、このノルボッテン地方を管轄したルーレオ教区はてても広大な教区だったのだけれども、人口もまばらだったため教区教会は唯一ルーレオのネーデルルーレオ教会にしか置かれなかった。だから、宗教行事が執り行われるとなると遠方から皆ルーレオに集まる必要があって、そうしたことから、ネーデルルーレオ教会を中心にして教区民の宿泊施設がたくさん建設され、これが北方スウェーデンの都市景観を代表するものとして世界遺産に登録されているわけなんです。

ルンドのハラルドも聞いたら思わず目を丸くするだろう北極圏から見た複合国家論ですが、さてさて、これをどうまとめあげようか…そろそろ執筆に戻ります。

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