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2007年2月15日 (木)

第26回北欧歴史家会議…僕はレイキャヴィークへ行きたい!

今年2007年は、三年に一度北欧の歴史学研究者が一同に会する北欧歴史家会議が開催される年です。第26回大会となる今回の開催地は、レイキャヴィークのアイスランド大学。8月8日〜12日です。僕は前々回のオーフス(デンマーク)、前回のストックホルム(スウェーデン)と出席してきたので、今回も是非出席したい。懐かしい面々と再会できる機会ということもあるけれど、この期間中に数多く開催されるちっさなセッションで披露される若手・中堅の研究者による最新の研究プロジェクトのプレゼンが刺激的で、僕はこの三年に一度の北欧歴史家会議で受ける刺激を、次の三年間の自分の研究の方向性を見極める一つのステップとして考えています。

例えば、今回の場合、ルンド大学歴史学部で飲み仲間だった「ゴットランドは俺の島だ」でお馴染みの(…って歴史学部でしか通用しないネタだな…)Jens Lerbromが、近世デンマーク・スウェーデンの帰属意識について報告したりする…ゴットランド・ネタでしょうな、おそらく。Jensは2003年にルンド大学に提出された博論を、Mellan två riken - integration, politisk kultur och förnationella identiteter på Gotland 1500-1700(二つの国家の狭間ーゴットランドにおける統合、政治文化、国民意識の原像)ってタイトルでパブリッシュしたんだけど、僕が「大阪外大に入れてあげるから、日本でも二冊は売れることになる。」って話しただけですごく喜んでいたから、「君の北欧歴史家会議での晴れ姿を見に、地球のプレート活動の裏側から飛んできた。」なんて言ったら、それだけでビールを何杯酌み交わすことになるのやら。目に浮かぶよ…その光景。

(あれれ…!よーく見てみたら、なぜか最近日本で知名度の上がっている(…笑)、というか古谷家が家族ぐるみで世話になっているHarald Gustafsson先生も、中世から19世紀までの国家形成に関する半日セッションに名前を連ねているなぁ…昨春会ったときは体調良くないからレイキャヴィークは行けないと言ってたのに、大丈夫かな。そうなると彼は、オーフス、ストックホルムに続いての出陣となりますが、現在の北欧歴史学界を語る際に彼抜きでは始まらないということですね。それに講演のほうを見ていたら、ルンドでやはり一緒だったKalle Bergmanが、軍港都市カールスクローナを事例に近世スウェーデンの政治文化と市民的公共性を語る予定になっている。僕が留学したころ博論を書いてい たJensも、Kalleも、みんなしかるべき実績を残して、次代の歴史研究を担う者として活躍しているんですね。あ〜ん、それに比べて、僕は何をしているのやら。でも、こうして考えると、短期間だったけどル ンドで築けた人間関係は、今の僕にとって宝物です。そうそう、大阪外大にもいらしたことのあるアイスランド歴史学界の大御所Guðmundur Hálfdanarson先生は、今回大活躍のご様子。デンマークの原像としてのアイスランド、アイスランドの原像としてのデンマークってテーマでセッションされますね。彼はHaraldの友人でHarald経由で僕のことを聞いていたらしいのですが、大阪外大まで来訪してくれたことがあるのですから、今度は僕が表敬して訪問する番でしょう。それに近世デンマーク史研究の大家「二人のJespersen」の一人Leon先生が、セッション 終わった12日にひっそりと講演をすることにもなっている。こりゃ、阪大との統合協議を個人的に中断しても、ますます行かねば。ちなみに今回2007年の大会は、一応100周年を祝う大会になります。)

06092000_2 普段、このブログでは写真を掲載しませんが、懐かしくなったのでルンド大学留学時代によく飲んでいた仲間の写真を載せます。たまたまJensとKalleが一緒に写っている写真があったので。共にEva Österberg先生の門下。上で紹介したJensは一番右の腕組みしている男。Kalleは一番左のにこやかなおじさんで、彼の博論は、Makt Möten Gränser, Skånska kommissionen 1669-70(国家と境界の邂逅、スコーネ委員会)ってタイトル。ちなみに立っている女性が、近世・近代スウェーデンにおけるサガの位置づけを研究しているAnna Wallette。博論は、Sagans svenskar. Synen på vikingatiden och de isländska sagorna under 300 år(サガのスウェーデン人、3世紀に渡るヴァイキング時代とアイスランド・サガの意味) というタイトルで2004年に出版されています。この写真は、記念すべき第1回北欧歴史家会議の舞台にもなったルンドのグランドホテル前の、なぜか名前がJohn Bull Pubってところで撮ったものです。よく行ったなぁ〜。

この北欧歴史家会議は、北欧の歴史学研究の最前線を知るという学術的な意味だけではなく、北欧の歴史のなかで振り返ってみると、北欧における地域間協力の醸成に大きく貢献した歴史的な意義の大きい存在です。北欧歴史家会議は、ノルウェー・スウェーデンの同君連合が解体した1905年に第一回の大会がスウェーデンのルンド大学で開催されています。我が国の北欧研究では、北欧協力の歴史については19世紀におけるスカンディナヴィア主義の展開と、冷戦期以降の北欧会議などの事例がよく紹介される一方、1864年のシュレスヴィッヒ・ホルシュタイン戦争でスカンディナヴィア主義が挫折して以降、1953年に北欧会議が成立するまでの間に、北欧協力の進展がどのようであったのかについては、あまり知られていません。いわばミッシングリンクになっています。

概念としての「北欧」が歴史上はじめて明確に謳われたスカンディナヴィア主義が挫折したからといって「北欧」が消えたわけではなく、またなんの前提もなくいきなり東西冷戦の緩衝地帯として「北欧」が北欧会議によって実現されたというわけではありません。スカンディナヴィア主義の挫折以降、概念としての「北欧」を形式として具体化させようとする試みは、19世紀末から20世紀前半にかけて行われていました。それぞれの北欧諸国の政府は国民統合と福祉国家の形成に関心が集中していましたから(…そして、それに呼応するように、日本の北欧研究者の目も、この時期のことになると国内の政策にばかり目がいってしまう傾向があります…)、実際にこの時期に「北欧」の連帯実現を試みたのは草の根の民間の活動でした。例えば、北欧議員間連合だとか、北欧歴史家会議だとか。ナショナリズムの流行に従って生み出された「北欧」という理念は、そうした活動に継承されるなかで次第に形式を得、それが冷戦期の北欧会議などへつながっていったわけですね。こうした意味から、北欧歴史家会議の存在は、「北欧」の成立を考えるうえでとても大きいのです。(史学史という観点から地域概念の成立を問うこのテーマは、いずれ僕が勉強しようと思っているテーマですので、パクらないよーに!)

前口上が長くなったのですが、今回の第26回大会の最大の特徴は…全日セッションのテーマでも、半日セッションのHaraldでも、研究プレゼンのJensでもなく、10〜11日に予定されているエクスカージョンの多さ!ブルーラグーンとか、そこかしこのギャオを巡るとか、そんなのはアイスランド的でわかるんだけれど、やれホエールウォッチングだとか、やれスーパージープサファリツアーだとか、乗馬ツアーだとか…なんだか、「そりゃ単なる観光ツアーでしょ」的なものが多い。(スーパージープサファリツアーってのは、つっこみどころ多いよな。スーパーが、ジープにかかるのか、サファリにかかるのか、はたまたツアーにかかるのか…というか、アイスランドでサファリってのは何?羊の群れに突撃か!?)日本人としては円安が急激に進行していて、アイスランドの物価がますます高く見える今日この頃ですが、アイスランドなんてなかなか行けるものでもないし、観光気分が強いのは北欧の学者たちも一緒なんでしょうね。

というか、北欧歴史家会議はアットホームな雰囲気でホスト側が歓待してくれて、期間中は連日飲み会が続き、なんか…こうホームパーティーの延長線上のような感じで公私にわたって楽しい学会なんですよ。僕が好きな、こじんまりとした暖かさのある「北欧」の知が、そこにあるって感じなのです。僕から言わせれば、「北欧」なんて概念は、同じ志を持つ者同士の関係、こうした暖かい雰囲気の中で酒杯を傾けたり、遠足いってみたりしてできあがった人間関係のなかにこそ実現しているんだと思う。だから、エクスカージョンも重要。地域概念なんて、それを共通に考えている人間関係以外の何ものでもない…とまた妄想チックな発言で申し訳ないけれども、僕にとっての「北欧」はそこにあります。だから、この夏はレイキャヴィークへ行きたい。

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