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2006年9月18日 (月)

スウェーデンはもはや「国民の家」を必要としない

今朝は花まるマーケットなんかで、吉川晃司サマの“おもしろおじさま”トークなんて見てる場合ではなかった…おー、もにか。昨日は9月の第三日曜日…スウェーデンの総選挙の日。今朝は、穏健党を盟主とする中道右派連合(中央党・国民自由党・キリスト教民主党)が勝利したってニュースが飛び込んできました。穏健党の党首ラインフェルトさんって、1965年生まれですから、41歳の首相誕生ってことになります。いやはや、ちょっと寝耳に水的ニュースでした。だって、だって…そこのオジョーサン(みのもんた風)…穏健党ですよ、穏健党。穏健党ったら、あーた、かつては万年野党の代名詞だとか、政権担当能力がないとかされていた政党。(1990年代前半に一時期ビルト政権がありましたけどね。)てっきり、スウェーデンの政治文化では「穏健」だとか、「保守」だとかいう概念は、戦わずして自らをマイナーあるいは敗北者であると規定してしまう自己証明だと思いこんでいました(笑)。

今回のニュースが意外だったのは、スウェーデン経済は今わりと好調だったのに、これまでの政権与党パーション率いる社会民主労働党が敗北したというところ。僕は社民党がそのままいくのだろうと予想していました。景気が好調ならば、高負担を前提としたセーフティーネット社会の維持も可能と考えられるからです。しかしながら、スウェーデン国民の判断は「高負担」という点にNej!を突きつけたということになりましょう。総選挙の結果は、昨年のドイツにおける政権交代劇と似通っていて、たいそう僅差だったのですが。(王国議会の議席数で言えば、中道右派連合が158議席に対して、社民党・左翼党・環境党連合が151議席。スウェーデンの総選挙は国政選挙と同時にコミューンなどの自治体選挙も行われるのですが、結果が逆転しているところも出てくるんじゃないかな。)

穏健党もラインフェルトさんが党首になってからは、変わろうとしていたのは事実。ただ単に有産者の利益を代弁するそれまでの保守政党ではなく、高負担を是正したセーフティーネット社会の構築を公約としてうたいあげるようになっていました。イギリスのブレア政権も、ドイツのメルケル政権も、そしてお隣のデンマークも、年金制度やヘルスケア制度といった高負担制度の縮小にむけた改革にむけてスウェーデンより一足先に歩んでいたことを思えば、今回の結果はすでにEU内で起きていた従来型福祉体制の是正にむけた流れの一環として見るべきで、見る人によっては当然の結果とも映るのでしょう。

ただし、この点は押さえておきたい。そもそも、これまで社民党が60余年にわたって作り上げてきた社会体制は、貧困に喘いでいたスウェーデン社会の生活水準を向上させるために、「国民の家」という発想のもとに社会全体による資源分配を目指したもので、この全体的目標のためには高負担・高福祉という原則は絶対だった。これに対して、今回の総選挙の結果は、昨今のスウェーデンでは好景気に後押しされる形で可処分所得に余裕の出てきたプチ富裕層が、リバタリアニスムよろしく自らの財産保護(この点で保守化したということか)を大事に思うようになった一つの現れととるべきなのでしょう。スウェーデンに生きる人のなかには、過度な税負担によって自らの財産の一角が切り崩され、無産者へ流れることを嫌う人がいるのは事実。そういう人にとっては、もはやスウェーデンは貧困社会ではなく、「国民の家」として貧困の克服とその責任を社会全体で負うべきではないってところが、正直なところかな。つまり、今回の結果で特筆すべき点は、政府主導型の高負担なセーフティネット社会を是正していく道が選択されたということよりも、スウェーデンはもはや20世紀に社民党が国是のごとく唱えてきた「国民の家」を必要としない(あるいはスウェーデンはもはや「国民の家」ではない)ということをスウェーデン人自身が選択したということ。(余談としては、いよいよスウェーデンもNATOに加盟するのかなってところも気になる。穏健党の主張するところ、EUやNATOといった諸国間同盟と積極的に関与するってことですから。とりあえずユーロ導入は当面はないみたい。)

この転換は、スウェーデンの歴史を考える上では大きいですね。しばらく僕は、スウェーデン・アイデンティティの歴史的展開ということを研究テーマとして選んでいるのだけれども、ここに来てリバタリアニスムの系譜ということも考慮に入れざるを得なくなってきたことは実に厄介。ま、常に変革を求めようと世論が動いている点では、この結果でも一環しているんですがね。

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コメント

 どうも、毎回面白く拝見しています。特に北欧の各国の違いはとても勉強になります。今回は先年のノルウェーの総選挙とのあまりに「対照的」なのに「似た」結果に驚いています。まあ、日本人には単純にうらやましいのですが。

 ちょっと気になったことなのですが、スウェーデンではノルウェーの進歩党のような「極右政党」は(一定以上の規模で)存在しないのでしょうか?、それとも中道右派にある程度そのような傾向が強いのでしょうか。このことと社会労働党の「国民の家」や両国の社会保障制度の現実などはかかわっている気がするのですが…。

>リバタリアニスム
 合衆国で強い支持を得ている固有の「リバタリアニズム」(反国連主義など)と政治思想としての「リバタリアニズム」のかかわりがねじれているので厄介でして。では失礼しました。

コメントありがとうございます。1990年代ほどではありませんが、極右の政治グループの存在はスウェーデンでも知られています。また穏健党は極右とまではいかなくても、例えば移民排斥などを唱える傾向があることも知られています。

スウェーデンの総選挙は全国レベルとともに地方自治体の選挙も同時に行われるのですが、今回の選挙の結果、地方によってはそうした傾向をもった穏健党の躍進があり、一部危惧されていることも伝えられています。

ここで僕が言うリバタリアニズムは、そこから派生していったアメリカ的発想とは別に、ジョン・ロック以来のの原義として、個人の自由を支える基礎的原理には私的財産権が必要不可欠であるといった意味で使っています。

 ご返事ありがとうございます。やはり、ここでもノルウェーと共通する要素があったのですね。「穏健党」は「進歩党」より穏健で懐が深かったので政権に就けたようですね。

>地方によっては
 政党内でも地方ごとの差異がかなり大きいのですね、この辺りは地方自治の進展とも絡むのでしょうか。

>リバタリアニズム
 どうもえらそうにすいません、むしろ古典的リベラリズムということですね、穏健党には自由党からも相当の票が移ったのでしょうが、移民排斥の傾向との関係は興味深いです。いろいろ、ありがとうございました。

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と言いつつ、結構前の記事なんですが。 スウェーデンの選挙結果評。http://gustav.air-nifty.com/furuya/2006/09/post_983c.html 辞書『ロベール』の「植民地」の記述。http://blog.drecom.jp/shimozawa/archive/185 小熊英二、憲法9条。http://www.magazine9.jp/interv/ind... [続きを読む]

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