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2006年2月 6日 (月)

「北欧」は大変なことになっている…

昨日日曜日は天気もよく、何も予定もなかったので部屋の掃除をしました。以前このブログで妻が気を利かせてくれて僕の部屋を掃除してくれた…という窮状を訴えたことがありましたが、それ以来妻はまたまた気を利かせてくれて一切掃除をしなくなったため、仕事の忙しさにかまけて荒れ放題になっていたのです。少しは綺麗になったかな?で、本来ならば、綺麗になったこの部屋で、『世界遺産〜森の墓地』の余韻に浸りながらゆったりとした気分で、科研の某成果報告書にも書いた「軍事革命」論のことでも話題にしようかと思ったのですが、なにやら中東では北欧がらみで大変なことが起きているようなので、ごくごく簡単にコメント。

Jylland-Postenに掲載されたイスラム教風刺画に端を欲するデンマーク、ノルウェー大使館の焼き討ちがダマスカス、そしてベイルートへと拡大しつつあり、一向に沈静化する動きが見られません。第二次世界大戦後、デンマークがこれほど国際的な非難を受けた事態はこれまでなかったのではないでしょうか。北欧メディアの大勢は、表現・出版の自由を盾に(つまりデンマーク政府の態度は正しいとして)、むしろ暴徒化した大衆を統御できないシリア当局への非難が集中しているのですが、この事件を通じて北欧諸国でさえ宗教的攻撃の矛先になりうるのだということが図らずも判明しました。デンマークはEU諸国のなかでももっとも「従順」な英米寄りの姿勢を貫き、昨今のイラク問題についても積極的に派兵していましたから、こうしたことがきっかけに何か起こるだろうことは十分に予測できていました。中東圏からの移民も増え多民族社会化が進行している北欧諸国でさえ、Jylland-Postenのようなメジャー新聞がイスラム教の戯画をさほど意識を払わず掲載してしまうような、利益第一主義で「風刺」とは名ばかりの言論の自由の真意をはき違えた安直な宗教観・異文化観が存在していることのほうが問題のような気がしています。北欧諸国のなかに移民に対する根強い不信感があることは事実だと思いますが、まさかそうしたこの裏返しによる戯画化だったとは思いたくはない。(実際、どういう文脈の記事で問題のカリカチュアが掲載されたのか、知りたいところです。)

EUに属さない(ただしNATO加盟国である)ノルウェー大使館までもが焼き討ちされていますが、こうしてみると中東の人々にとっても、日本人と同様に「北欧」というのがなんだか一つのまとまったイメージでみられているのかなという気がします。となると、事は深刻。一貫して英米寄りのデンマークは別にして、スウェーデンなどはこれまでの中東紛争ではイスラエルへ武器輸出をして儲けてきた国だから(…例えば第三次中東戦争(六日間戦争)でイスラエル軍に使用されたスウェーデン製の地対空ミサイルはばんばん中東陣営のミグ戦闘機を打ち落としていたことなど有名…)、ノルウェーあたりがノーベル平和賞がどうのこうのなど平和活動に躍起でも、「北欧」ひとつを考えてみれば、それは中東の人たちにとって「西欧」諸国と同様に不信感の対象になるでしょう。`今回の騒動が対ヨーロッパといった抗議行動へ発展すればEUレベルでの対応が迫られるでしょうが、対デンマークレベルの抗議行動だと、例えばスウェーデンなどでは言論の自由が優先されるべきといった建前論が繰り返されるだけで動かない。現に福音主義ルター派スウェーデン教会は現時点でこの問題に何もコメントを出す用意はなく、傍観する姿勢を発表しています。下手に深追いすると逆に二律背反的なスウェーデンのあり方が鋭く批判され、中東の抗議行動がこれまで温和しかったスウェーデンの移民層にまで飛び火してしまう可能性がある…だから傍観ていうのが本音でしょう。でもって、スウェーデンはデンマーク大使館が焼かれていても動かないんじゃないかな。

一番危惧するのは、言論の自由といった西洋流の価値観を墨守するあまり、「ほれ見たことか!イスラム教徒なんていう輩は戯画のユーモアのセンスもわからない「野蛮」な連中なのさ。」といったような閉鎖的な雰囲気が、今回の事件を通して北欧社会に形成されてしまうこと。担税者としての移民の存在に積極的な北欧諸国の現実主義的態度からして、そうした雰囲気の拡大は公式には抑制される(隠蔽される)だろうけれども、なにせ良きにつけ、悪しきにつけ民主主義的雰囲気にあふれた北欧諸国だから、世論がどう転ぶかはわからない。とまれかくまれ、今回の焼き討ち事件は、北欧メディアで大々的に取り上げられていることからもわかるのですが、遠く極東で北欧学に接する者としては、現在の北欧諸国における現実主義的外交政策と国内政策の試金石となる事件のような気がしています。

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コメント

はじめまして。
北欧専門家の方の見解、とても参考になりました。フランスでも「言論の自由を守れ」という意見が前面に出されていますがその反面で「いかなる宗教も尊重されるべきであり、言論の自由だからといって言ってよいことと悪いことがある」という見解をキリスト教関係者が早々に出していました。
ところでイスラムの人達、北欧諸国はいっしょくたなんですね。まあヨーロッパでも日本と中国が同じと思っている人も多いのと同じ感覚でしょう。

はじめまして。
北欧専門家の方の見解、とても参考になりました。フランスでも「言論の自由を守れ」という意見が前面に出されていますがその反面で「いかなる宗教も尊重されるべきであり、言論の自由だからといって言ってよいことと悪いことがある」という見解をキリスト教関係者が早々に出していました。
ところでイスラムの人達、北欧諸国はいっしょくたなんですね。まあヨーロッパでも日本と中国が同じと思っている人も多いのと同じ感覚でしょう。

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