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2006年2月 8日 (水)

「軍事革命」論雑感

試験シーズン突入、成績付け…とまたまた忙しくなってきましたが、さらに輪をかけるようにこの年度末は最終年度を迎えた科研の成果報告を3本抱えています。そのうち一つは軍事史関連のもので、先月末にようやく仕上げました。そのテーマはずばり「軍事革命」論。近世スウェーデン史のヨーロッパ史における古典的な意義は、1956年に非スウェーデン系の近世スウェーデン史研究者として名高いM.Robertsが、ベルファストのクイーンズ大学の教授就任講演で「軍事革命」を提唱して以来、一も二もなく軍事と社会の関係から模索されてきたわけです。

古典的な「軍事革命」論は、スペインのテルシオ戦術にネーデルラント独立戦争で対抗したオラニエ公マウリッツによる戦術改革、ならびに三十年戦争におけるスウェーデン王グスタヴ2世アドルフによる三兵戦術など、火器の効果的使用と規律的な隊形展開を組み合わせた戦術上の革新とその普及が主張の焦点とされました。

しかしながらヨーロッパ世界北縁のスウェーデンが近世バルト海世界において「大国」化した背景を考えようとするならば、この戦術上の革新だけに理由は求められず、それを支えた徴兵・徴税などの国制上の改革を通じた社会構造の変革にまでも目を向けねばなりません。(ここまでの内容が僕の学部卒論のテーマ。)

とはいえ実際には近世のスウェーデン軍は、三十年戦争をはじめとして大陸ヨーロッパに転戦したわけで、国内の制度改革を論ずるだけでは近世の大陸ヨーロッパにおける戦争経営の実態を把握はできない。そこで軍資金の流れを追うことで、ネーデルラントからバルト海東岸にまで至るスウェーデン軍と関係をもった財務取扱人のネットワークの存在をかつて論じたことがありました。(ここまでの内容が僕の修士論文のテーマ。)

ルンド大学への留学、大阪外大での生活…と自らをめぐる環境の変化にかまけて、この近世スウェーデンと軍隊をめぐる研究テーマから離れていた時期があったのですが、とある科研の共同研究プロジェクトに参画させていただいた経緯から…そしてその先には某出版社からの軍事史関連の論文集の企画もあるので、密かに「軍事革命」論について勉強を再開してきました。

で、今回はバルト海世界における「軍事革命」の展開を支えた人的ネットワークについてを、かつて論じていたような財政的な視点ではなく、ネーデルラントを起点とした情報ネットワークの存在とそれを支えた人脈の観点から探ってみました。バルト海世界における軍事情報ネットワークの存在については、第一にスウェーデンとブランデンブルク=プロイセンの軍法の内容比較(両者はおどろくほど似通っています。リプシウスの新ストア主義の強い影響下に策定された1621年のスウェーデン軍法は1632年にマインツでドイツ語版が公刊され、ほぼ内容の共通したプロイセン軍法が1656年に公布されました。)、第二に恒常的な軍事組織を維持するために導入された農村を基盤とする兵員徴募システムのスウェーデンとプロイセンの内容比較(前者は1680年代に導入された割当義務制度、後者は1732年に導入されたカントン制度として知られています)、以上の二点からその共通性を指摘することで情報ネットワークの存在が確認されるのではないかと考えています。で、それを裏付けるために、実際にスウェーデンで軍務に就いたブランデンブルク=プロイセンの将校たちの人脈・家系を辿ることも試みています。

修士論文のテーマは完全に軍資金の還流にのみ視点が限定されていたのですが、今回はバルト海世界におけるプロテスタント国家の人的ネットワークを指摘することで、近世における文化的・政治的交流の実態を「軍事」という側面から照らしだそうとした次第。で、その真意は、僕は従来の「軍事革命」論の最大の陥穽は一国史単位での戦術変革にのみ焦点が当てられがちだったことにあると思っているのですが、これを転倒させて考えてみると「軍事革命」という視点からバルト海世界に拡大するプロテスタント・ネットワークの存在を論ずることができるわけで、そこに「軍事革命」論の将来的な可能性を見よう…ということにあります。

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