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2006年2月13日 (月)

大人買い

最近、子供の頃欲しくても買えなかったものを大人になってから財力にまかせてドカッと買い込むことを「大人買い」と言うそうですが…やっちゃいました、「大人買い」。それは『トインビー著作集』全8巻(月報込み)。まぁ、世界政府とか世界宗教とかの実現めいたことを主張していたり、アジアの宗教活動なんかを持ち上げすぎていたりと、いささか時代錯誤的な主張も見られて最近はまったく顧みられなくなったアーノルドJ.トインビーの著作集。かつてはトインビーはマスコミで「20世紀最大の歴史家」なんてもてはやされていて、この著作集は彼の名声が巷でとても高かった1960年代後半の代物。

いえね、最近うちの子供が本屋さんごっことか言って、本棚の本を無作為に取り出して遊んでいるんですが、週末に現代教養文庫(な、なつかしすぎる!)の『世界と西欧』だとか、『試練に立つ文明』だとかがおもちゃがわりにされていて、そうしたらパラっと落ちてきた高校生の頃自分で作ったしおりに目がとまり、高校生の時代以来だから十数年ぶりにそれを読んでみたら読み物としておもしろくて、歴史を勉強したくてたまらなかった高校生時代を思い出して懐かしくなってしまったんです。とりわけ『世界と西欧』と『試練に立つ文明』に所収されている宗教論なんですが、僕たちは冷戦終結や9.11後の世界に生きているわけで、こんな時代にトインビーが生きていたら、どのように世界を想像したのだろうかと…。

トインビーといえば『歴史の研究』が有名なわけですが、そこで一貫して主張されている世界文明の盛衰という歴史への大局的な把握の態度は高校生の時代にえらく影響を受けたことを、(なんだか馬鹿にされそうで嫌なのですが)告白します。高校世界史の勉強といえばチャート式の世界史なんか全く読まず、山川出版社の『用語集』とこの『歴史の研究』だけだったなぁ…。(って、絶対こんなんでセンター試験の点数は取れるようになるわけではないので、受験生の人たちに決してお奨めできる勉強方法ではありません、念のため。)受験生のときに一度だけ某私立大学の面接試験を受けたことがあるのですが、エントリーシートの愛読書の項に『歴史の研究』を書いちゃって、面接官に梅棹忠夫の『文明の生態史観』との比較を論じてみよって言われたときには、かなりあせった記憶がある。19歳の受験生には酷な質問ですよ…っていうか「知ったかぶり」はいけないという教訓。でも、みなさんならどう答えますか?実証主義的には問題だらけ、解釈につぐ解釈の連続だから「何を根拠にここまで断言できるのか!」と高校生でもわかっていましたが、しかし一介の歴史好きな高校生としてはフツーに彼のパースペクティブあるいは歴史観にも魅了されていたことも事実。その頃は「やっぱ文明論だよな、文明論…」と根拠もなく息巻いていたけど、実際にはお金もなく、現代教養文庫から出ている文庫本を手に入れるのが精一杯。経済往来社から出ていた全24巻の『歴史の研究』も学校の図書室で読むしかなかった。

で、今になりふとトインビーを思い出し、なんだかムショーに欲しくなって一気に大人買いへと至った次第。しかしなんですなぁ…今やトインビーの翻訳書はほとんど廃刊なんですね。かなり驚きましたが、トインビーが考えていたようには世界は発展せず、それとは真逆な方向へと進んでいるんだから、そりゃ当然といえば当然か…。ってことで、個人的には『世界と西欧』の訳者である吉田健一の慧眼と訳文に感服する次第。トインビーは今じゃすっかり忘れ去られたというか、完全に過去の人になっちゃっているわけですが、一時期の我が国におけるブームの先駆けには吉田健一が1959年に翻訳した『世界と西欧』がありました。(おそらくそれがトインビーの翻訳ものの最初です。)吉田といえばかの吉田茂の長男として知られていますが、中村光夫だとか河上徹太郎だとか小林秀雄だとかとならぶヨーロッパ文学評論の大家。

うーん、我が国にも文明論を構想できる評論家たちの時代があったのですよね。やっぱりちっさいころからヨーロッパ文明に浸って育ってきた人の嗅覚ってやつは、ぽっとでの田舎もんから見るともうどうしようもなくかなわない部分というか…知的にノックアウトされちゃう部分がある。ぐーの音も出ないっていうか…。吉田健一は確か戦前のケンブリッジのキングス・カレッジで勉強してたんですもんね。2年前の夏にケンブリッジに逗留しましたが、学問への霊感漂う場所でぞくぞくしましたよ。ビール片手に二重らせんとか思いつきそうな(笑)。吉田がトインビーにはまることはなかったけれども、それも彼の慧眼というべきで、なんともそんな彼の颯爽とした知性は格好がよろしい。そんな颯爽感は、悔しいけど、どう逆立ちしたって田舎もんが醸し出すことはできない…ないものねだりで、あこがれる部分。結局最後はトインビーから離れて吉田健一を賛美する文章になってしまいましたが、というわけで次の大人買いは集英社から出ていた『吉田健一著作集』にターゲットを絞ろうかと考えています。

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