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2005年6月19日 (日)

福井と早稲田をつなぐもの

中澤達哉さん絡みで、福井と早稲田大学のことについて発言を続けます。

中澤さんは福井大学で教鞭を執られていますが、昨日の懇親会で福井のことに話題が及びました。越前・若狭を含む現在の福井といえば、我が国の歴史と文化を語る上でそれこそ継体天皇の時代以来常に僕たちは顧みる必要のある場所ですが(…継体天皇絡みでは高槻・枚方のことへと話題をふくらませることができるのですが長くなるので今回はやめます…)、そんな福井の歴史を支えた背景には、九頭竜水系と日本海の豊かな資源に支えられた土地柄という事実があるでしょう。豊かな米、水…とくれば当然酒もうまいし(越前大野の「黒龍」など、今では全国区で有名になりましたね)、かの開高健もしばしばふれていたように越前ガニに代表される海産物もうまい。(生前の開高健はオスの越前ガニよりは、メスでこぶりなセイコガニを好んでいたようですが。)

そんな「美味しくに」福井で僕がとりわけ美味しいと断言できるものは、ヨーロッパ軒という福井では老舗の洋食屋さんでつくられているソースカツ丼です。さすがにその高名は福井大学へ着任早々の中澤さんもご存じだったようで、お互いにその美味さを確認しました。誕生日が同じだから…ということではなく、ここのソースカツ丼は本当に美味しいのです。

一般的にカツ丼といえば卵とじのものがイメージされますが、ここのソースカツ丼は卵とじではなく、かといってただカツレツにソースをかけたものではありません。ドイツ語文化圏では一般的なカツレツにシュニッツェルがありますが、ここのソースカツ丼は、まさにあのシュニッツェル風のカツレツ、つまり細かなパン粉を衣として揚げたカツレツをウスターソースをベースにした甘辛いタレに浸して出されるカツ丼で、これに比肩できるソースカツ丼は管見の限り東京や大阪にはないと思います。(越前勝山にも有名な店があるとは聞いています。)つまり、この店のカツ丼の特徴はオリジナルなパン粉とソースにあり、こればかりはどうにもこうにもほかの店がまねできないところでしょう。

一説によるとこのソースカツ丼は我が国におけるカツ丼の元祖とされているものでもありますが、その来歴を辿るとシュニッツェル風のカツ丼が作られていった理由がわかります。このソースカツ丼は明治末期にドイツへ料理留学をしたヨーロッパ軒の創業者である高畠増太郎氏が大正2年にはじめて披露したことになっています。かたやシュニッツェルの歴史を辿るとそれはすでに16世紀頃からドイツ語文化圏に普及しはじめていたことになっていますから、(一説では1857年に『ラデツキー行進曲』で有名なヨーゼフ・ラデツキーがナポリからの帰途オーストリアに持ち込んだという説もあります。)いずれにせよこの高畠氏が留学していた20世紀初頭にはシュニッツェルはドイツ語文化圏において一般的な料理であり、彼がドイツでそれを食し、その技法を勉強していたことは想像できます。

で、この高畠氏は福井にヨーロッパ軒を出店する前に、東京は早稲田鶴巻町にて店を構え、大正デモクラシー華やかなりし頃、その店では早稲田の学生たちがよく食べに通っていたと言いますから、日本におけるカツ丼文化の原点には福井と早稲田があるというわけです。そう考えると、かつて早稲田大学で研鑽を積まれた中澤さんはカツ丼文化の起源をとり結ぶ位置づけにいらっしゃるというわけですね。西洋史学系の大学院生はどこのみなさんもみな熱心に勉学に励まれていますが、しかしそのなかでも最近とりわけ「威勢が良いなぁ」と個人的に感じ、その若いエネルギーを羨ましく思うのは早稲田大学で勉強されている院生のみなさんたちです。ときに神出鬼没の「軍団」と称されている早稲田のみなさんですが、例えば福井に行く機会があるならば、是非早稲田の杜との縁を思いつつ、ヨーロッパ軒のソースカツ丼を食して頂きたく思います。まさにこのヨーロッパ軒のソースカツ丼は、早稲田の皆さんにこそ「噛みしめる」に相応しい歴史的一品です。(東京で食べられないならば、早稲田大学の生協食堂で企画ものとしてヨーロッパ軒とタイアップするなんていうのも悪くないんじゃないでしょうか?)

インターネットが普及する前には「幻」の一品だった福井ヨーロッパ軒のソースカツ丼ですが、最近はホームページ上でソースとパン粉は通販で買えるようになりました。ただ、それを得たとしても、なかなかオリジナルなヨーロッパ軒のソースカツ丼の味を再現することは難しいでしょう。となれば、やはり最終的には福井へ赴いて、実際にヨーロッパ軒を詣でねば、真のソースカツ丼を体験できないということになります。いざ参ろうぞ、福井へ!

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